第154回:芸術家じゃないのに芸術祭・横浜トリエンナーレに出ることになった!(松本哉)

 いや〜、大変なことになった。横浜トリエンナーレという芸術祭があり、それに出ることになってしまった。第8回目の今回の会期は3/15から6/9までの3ヶ月近くに渡り、すでに開幕している。ただ、みなさんご存知の通り、自分はアーティストでもなんでもなく、ただの高円寺の商売人だ。しかも、もともと芸術にはあまり縁がなく、それどころか無駄に「アート」とか言い出すやつの中には胡散臭い奴らも多いこともあって、基本的に芸術界に対しては警戒しながら恐る恐る遠巻きに様子をうかがう感じで接してきた。とは言っても、芸術界隈には面白い変人たちもたくさんいて、友達も多いのも事実。
 ところが今回、まんまと様々な罠にハマり横浜トリエンナーレに出ることに。しまったー、どうすりゃいいんだ〜! 何すりゃいいんだ〜!!!!

中国からの使者、劉さん&盧さん現る!

 で、なんでこんなことになったかというと、ことの発端は中国。近年行っている東アジア圏を中心とした地下文化交流の流れで、とある中国の芸術家が、中国現地でもヤミで出回っている自著『世界マヌケ反乱の手引書(中国翻訳版)』などを読んでくれていて、そこで「オマエ、なんかやらないか?」と声がかかった次第。その人が、今回のアーティスティック・ディレクター(どういう意味だ! 芸術的監督?)を務める、劉鼎(リュウ・ディン)と盧迎華(ルー・インホア)の2人! 世界マヌケ交流の流れって話ならとりあえず受けない手はないので、何も考えずに「やりましょー」と返事。
 実のところ、『世界マヌケ反乱の手引書』という本、日本の他、韓国や台湾、中国で翻訳出版されてるんだけど、中でも中国版が大変なことになっている。一時、とある中国の出版社が出そうとしたところ、内容が国家を信用していない節があるとのことで現地当局より待ったがかかる。出版中止となり、今度は別の出版社が名乗りをあげ、今度は検閲をうまくパスするように修正を入れたり部分的に書き直ししたりと現地と連絡をとりながら作戦を練る。ただ、こっちも一方的に魂を売って書き直しをするのは癪だ。譲れる修正と譲れない修正があるので、難航に難航を重ね、1〜2年の歳月をかけて中国改訂版の原稿がついに完成。で、いざ出版かとなって出版契約まで済んだ後にまたストップがかかる。タイミング的に米中関係が悪化するなか、ついでに日中関係も冷え切っており、日本の本の翻訳出版にはかなり慎重になってる様子(俺、それ関係ねーじゃねえか〜!)。
 で、そんな中、さすがは中国で、速攻で海賊版が出回りはじめ、これの売れ行きがとんでもないことになっていた。発禁の決定が続いてることも拍車をかけ、現地のネットオークションなどでは一冊5万円ぐらいで売られたりという、謎の騒ぎに! しかも、地下出版なので派手に数千部とか大量印刷するわけにはいかないので、当局の目を掻い潜って地方都市で数百部単位で刷って、また次は別の都市で…、といった手法で刷るという。なるほど〜、でもそれなんかワクワクして楽しそうだなー。そんなこともあって、中国では普通に書店に並んでる本ではなく、“秘密裏に入手して読む幻の本”という扱いになっている(笑)。
 ま、そんなわけで、「オマエの本読んだよ!」と中国から遊びに来る人が後を絶たないんだが、他の国で読んだ人と明らかにテンションが違う。う〜ん、やはり同じ内容でも入手の仕方によって変わるもんだなー。そう、なので中国からのオファーにはこっちもそれ相応のテンションで応じたくなるってのが人の道だ。よっしゃー、ともあれこの謎の芸術祭の話、乗った!

芸術監督の盧さん(中央)と劉さん(右)

芸術展!? 何をやるの!?

 さて、じゃあ一体何をやるのか? そもそも自分はアーティストではないし、縁もゆかりもないし、そもそも芸術って言われてもほとんどチンプンカンプンの状態。当然、展覧会や展示などに何かを出したこともないし、見に行ったことも数えるほどだ。やばい、終わった! 万事休す。これはお手上げだ!!!
 と、思ったらその芸術監督の劉さん盧さんが言うには「本とか4コママンガとかこれまでやってきたものなんかを提供してくれればいいよ。あとはこっちで上手く展示するから簡単だよ〜」とのこと。おお、なるほど、そういうことか。それなら簡単だ! 油絵描いたり仏像彫ったりしないといけないのかと思った。よっしゃ、それなら楽勝だ!!
 今回の横浜トリエンナーレのテーマは魯迅の「野草」とのこと。どうやら、このニッチもサッチも行かない世の中で、野草のごとくいつでもどこでも好き勝手にやってく感じが、これからはなんかの助けになっていくんじゃねえか、ってところの話のようだ。なるほど、そりゃいいね! そこで、自分が店をやってきたり、ふざけた乱を起こしてみたり、海外のアンダーグラウンドの奴らとむやみに繋がってみたり、さらにはそんな話を本にしてばら撒きまくったりしてることに着目してくれたとのことで、そんな活動を今回の企画に出すことが重要だと力説する劉さん盧さん。ともかく、やってることをそのまま展示しちゃえばいいとのこと。なるほど!
 で、ある日、劉さん盧さんに加え横浜トリエンナーレ事務局の人たちが高円寺まで来てくれて、相談しながら昔のビラやチラシから、デモやイベントの時の横断幕やら店の商品やらステッカー、CD、本など、およそいろんな活動に関するものを「これもいいね」「これも使おう」なんて言って選んでいき、全部箱に詰めて横浜まで発送した。

 これでほとんど任務終了かと思われたが、世の中そう甘くはなかった。
 一度、会場を下見しに来ないかというので、今年の2月ごろ、ふらっと横浜まで遊びに行ってみた。会場に着いてみると、すごく古い銀行跡地の広い場所で、着々といろんな展示の準備が進められている。すげー、これが美術展か〜、と感心していると、まんまと待ち構えていた劉さんが現れ、「あっちが松本の場所だよ!」と教えてくれる。自分の提供したものがどんな風に展示されているのか楽しみに行ってみると、見たら幅10メートルぐらいある巨大なただの板がある。なんだこりゃ。さらに「いや、裏もあるよ」とのこと。10メートル近い板の両面で、どっちもまだ白紙の状態。どうも雲行きが怪しいと思い始めた矢先、劉さんが「で、どうするの? これ」と、聞いてくる。えっと、なんのこと? いや、俺知らないよ、芸術家じゃないし。いやな予感しかないので、試しに「で、どうするの? これ」と同じことを劉さんに聞き返してみると、「いや、知らない」と劉さん。でたー! なんだそりゃ〜!! 挙げ句に「ここ松本の場所だから、自由にやっていいんだよ」だって。だから俺アーティストじゃねえって! しまった〜、はめられた〜!!
 劉さん盧さん、高円寺に遊びに来た時は、中国から来たマヌケな友達って感じだったので完全に油断してたけど、さすが自分の現場に来ると大物感出してきて、完全に昭和の大御所ディレクターと化している。しまった、話が違う! 雰囲気としては「おおっ、いいね〜」「ここはちょっとパンチ弱いな〜、もうちょっとズバっと行っちゃっていいんじゃないの?」なんて言って檄を飛ばして回って、焼売かなんか差し入れて「じゃ、期待してるよ〜、キミたちには」ってすぐ次の現場に向かっちゃうあの感じ。まあ確かに、今から考えたら90組以上のアーティストが参加するこの巨大イベントの芸術監督なんだから、そりゃそうか。
 こ、これは大変なことになった〜。この巨大なスペースを全部自分で作らないといけないってことか! しまった! 最初の打ち合わせでは物だけ出してくれ的な感じだったので、「自分のアイデンティティは商人だから店は出したい」だの「街頭でのゲリラ的なイベントも重要だから、いつも使ってる屋台持って行ったら面白そう」とか、油断して口をすべらせまくってたのだが、結果的にはこれ全部自分でやらなきゃいけなくなったってことか〜!!! 余計なこと言うんじゃなかった〜!!
 そうとなったら、ここからはもう触らぬ神に祟りなし。会場を見て回り、なんだかイメージを膨らませてる監督が余計なことを思いつかないようにするしかない。ここはもう、日本古来から伝わる、事を荒立てずに済ます必殺技を出すしかない。完全に三下の空気感を出して、揉み手と愛想笑いで「へい、旦那さま、あとは任せておいてください」と当たり障りなく接する。監督が巨大なスペースを眺めながら「う〜ん」とか言い出したらすかさず、「ま、ま、あとはあっしに全てお任せを。ここまできたら大成功は間違いなし。劉の旦那は大船に乗ったつもりで横浜中華街の見物でも…。お〜い、旦那さまのお帰りだよ〜」と、うまいこと話題を逸らし、なんとかその場をしのごうと画策。しめしめ、日本の恐ろしさを思い知ったか〜。ところが劉さん、人の話をなにも聞いておらず「やっぱり漫画は手描きの方がいい気がしてきたな〜。そう思わないか、松本」→「へい、その通りで。さすがは劉の旦那、やっぱ手描きでしょう、ここは」と思わず合いの手。だめだ、失敗だ! 日本弱い! しかも仕事がものすごい増えた! プリントして貼る予定だったのが、この10メートルの巨大な板に全部手書きで描くのか〜。で、劉さん「じゃあ!」と次の場所へ行ってしまう。コラー、焼売置いてけ〜!

 こりゃ大変なことになった。そもそも展示なんて生まれてこの方一度もやったことない。ええい、こうなったもうヤケクソだー。ということで、3月初旬(開幕目前!)に店を1週間ほど休んで横浜に滞在しながらどうにかすることに。
 まず主力が4コマ漫画。そもそも漫画を描くハメになったのも、このマガ9で毎回漫画を書いてたから、それが劉さん盧さん一党にまんまとバレて「あのマンガだ!」ってことになった。まああのひどい漫画なら描くのは苦ではないんだけど、あの巨大看板に描くとなったら3つ4つじゃどうにもカッコつかない。20〜30作は描かないとまずい。これだけで3日はかかる。
 そして、昔からたまに出している『週刊素人の乱』という新聞を壁に貼りまくる。これは昔よく大学や路上の壁にビラを貼る時の手法で、洗濯糊と木工用ボンドを調合するやり方で貼りまくる。そして、本などの著作物を並べて読めるようにしておき、さらには高円寺での活動のドキュメンタリー映像を2本、モニターで流しておくことに。で、うっかり口を滑らせて持ってくることになった高円寺の最終兵器=街を混乱させるための移動式屋台「のんべえ号」も展示。いやー、これだけ準備するのでも相当大変。
 さらにまだある。自分の重要なアイデンティティのひとつ、リサイクルショップだ。野草のごとき各地での勝手な営みって、自分にとってはまさに店。もちろん商売であり、メシを食っていくためにやってることでもあるけど、リサイクルショップというのは自分にとっての表現でもある。この頭打ちになって間違った方向に行こうとしている資本主義社会が、ひたすら無駄な消費社会を作っている。さらにはひたすら安い新品を買ってすぐ捨ててしまう文化の浸透によって、自力や人と協力して物を修理したり融通し合う人の繋がりをも壊してしまっている。ものを大事にして再生するってことは、そんな世の中へのささやかな抵抗の意思表示でもある。どんなものを取り扱うかとか、その商品をどう再評価(値付けや意味付け)するかというのは、自分なりの社会へのメッセージでもある。ってことで、店の商品を大量に並べて値札をつけて展示することにした。いやー、こりゃ大変だ〜〜〜。

トリエンナーレ会場外の拠点探しの旅

 ちなみに、自分のブースがあるエリアには主にアジア圏の地下文化シーンの人たちがいろいろ出店している。日本では気が狂ったファッションブランド「途中でやめる」をやってる山下陽光が出ていたり、台湾のデモのバナーなどを展示する人たちや、韓国の音楽芸人YamagataTweakster、中国の功夫秘密結社、マレーシアの芸術&社会活動チーム、香港の布で乱を起こそうとしてるチームなどなど、気骨のある奴らが目白押し。準備段階でいろいろ作業していると、隣近所で、そんな不穏な人たちが次々に現れて同じく準備をしているので、その時点ですでに面白い。

中国広州からやってきた、闇を蠢く功夫集団の一党

 で、これは案の定なんだけど、みんな口々に「この辺り街がきれいすぎる」「ゴミが一つも落ちてない。どうなってんだ」などと横浜みなとみらいエリアの文句を言ってる。いやー、確かにそうだ。よくよく考えてみたら、このアジア圏からきてる人たち、大部分は街の再開発でローカルな文化がなくなっていくことに抵抗する意味合いの活動をやってる人たちばかり。そんな各地で抱えている再開発とジェントリフィケーション(街のこぎれい化・高級化)が完成したような雰囲気の漂うみなとみらいエリアなので、みんな「この辺り、世界で一番きれいで整然としてるんじゃないか? 街ってこんなんでいいのか?」などとブーブー言ってる。中には日本に初めて来たなんて人もいて、これはやばい、よしこうなったらゴチャゴチャしたところに連れていくしかない!
 ということで、「よし、飲みに行こう!」と、徒歩圏内で行ける野毛の飲み屋街へ。野毛のあたりまでくると、みなとみらいとは景色は一変して、年季の入った居酒屋やバーが並び、適度な街の薄汚れた感じもあり、いろんなものが不揃いなので、長きにわたる人間の営みによって街が作られてきた空気が醸し出てる。みんな口々に「いやー、こういうところもあったんだ。ホッとした〜」と安心してる。よかったよかった。
 確かに自分自身、横浜に滞在中は、昼ごはんを食べにいくだけできれいすぎて不安になるぐらい。どこかもっと近いところに安心できるところはないかと街をむやみにウロついたりしていたが、…発見しました、展示会場の旧第一銀行から歩いて5〜6分のところにある桜木町駅前にある昭和のデパートみたいなビル「ぴおシティ」地下二階にある飲食街。飲食街といっても90%は立飲み屋で、残りは町中華とかレトロな喫茶店。平日の昼間に行ったにもかかわらず、のんべえでごった返してる。しかも常連のおじさんたちの溜まり場のような場末感は一切なく、年齢も男女も関係なくすごい賑わい。どうなってんだここ、最高すぎる。その時も通路で若い女の子が吐いてひっくり返っていて、仲間の女性たちが介抱してる。で、通りがかりのこれまた百戦錬磨ののんべえみたいな年配の老人が「ったく、どんな飲み方してんだよ、酒がもったいねえだろ。大丈夫かよ」と、自身もすでに出来上がって真っ赤な顔して説教してる。とてもじゃないけど平日昼間とは思えない様子。でも、治安の悪そうな感じは一切なく、なんだか酒を愛する老若男女たちが集ってるすごく平和そうな雰囲気。いやー、ここ最高だ。というわけで、出展の作業中も隙を見ては度々ここへ来ることに。
 そういえば、この「ぴおシティ」は、今回の横浜トリエンナーレの会場であるみなとみらいの横浜美術館と、馬車道駅前の旧第一銀行&BankART KAIKOの間の近くにあるので、立地は最高だ。おすすめコースとしては、まず横浜に着いたら桜木町で降りて、ぴおシティ地下で駆けつけ一杯いって、どちらかの会場へ行って展示を見て、もう片方へ向かう途中にまたぴおシティ地下で見た作品に思いを馳せながら二杯目、そして全部見終わってからまたぴおシティで最後の三杯目と共に余韻に浸り、ほろ酔いで桜木町から電車で帰るのが、のんべえ諸君にとってのベストコース。

のんべえのホームタウンこと、ぴおシティ地下街。台湾や中国チームも大喜び

横浜トリエンナーレ、全体がとんでもなかった!

 どうして芸術展の話をしてたらオススメ飲み屋話になったのかわからなくなってきたが、まあいいや。“芸術展”なんていうと、アートに普段接していない人(自分もそうだけど)からしたら、面白くもなんともない謎の抽象的な物体やら平面体が無駄にスポットライト浴びて置いてあって、それを神妙に現れた通ぶった変人風の人が分かりもしないのに何度も頷いちゃったりして、挙げ句の果てに本人もわからないような抽象的な感想言って、シーンとしてる感じだと思ってるかもしれない。
 ところが横浜トリエンナーレ、そうは問屋が卸さなかった。もちろん抽象的な作品や、一見するとなんだかわからないものもあるけど、そうじゃなかった。最初は、我々の主にアジア地下文化圏の展示エリアだけ気が狂ったアートでもなんでもない無法地帯ゾーンで、他は違うのかと思ってたけど、横浜美術館など他のエリアを見てみたら、そっちも同様に全開で飛ばしてた。さすがに横浜美術館の方がよりアートっぽい作品が多めにはなってたけど、いきなり全共闘の写真が並んでたり、欧州のアナーキストとネオナチ、警察などの殴り合いの映像なんかも山ほどあったり、戦前戦後の版画を通した日中地下文化交流の記録があったり、台湾の移民労働者の蜂起に関する作品の展示、気候変動や環境問題に関する作品、ふと振り向いたら火炎瓶が展示されてるなどなど、とんでもないことになってた。全体で飛ばしてたのか〜!! 海外では“美術”と“社会”って密接に繋がってるものとして扱われるけど、日本では謎に切り離されてることが多いので、まあ世界基準で考えたら普通か。いや、それにしてもすごい。というか、かなりの展示がすごく面白い。

アジア地下文化ゾーン。とても美術展とは思えない様相に!

 そういえば先日、今回の横浜トリエンナーレの大ボスにして横浜美術館の蔵屋美香館長が高円寺に遊びにきてくれたんだけど、初対面からいきなり「本読んでますよ、マヌケ最高ですね〜」といきなりノリがよく、さらには「中国地下文化シーンの裏ワザの数々、面白いすぎる、やべー!」とテンション上がりまくりで、すごく面白い人だった。いろいろ話させてもらったけど、なんかやたら肝が据わっててすごくカッコいい人だった。なるほど〜、そりゃ横浜トリエンナーレ面白いことになるわけだ〜。で、おかげで芸術監督の劉さん盧さんも全開で実力を発揮できてとんでもないチョイスをしまくって大変なことになったのか〜。
 もうちょっと言うと、現場もすごい。我々のアジア地下文化エリアの調整担当が江上賢一郎という役立たずの権化のような様子の男なんだけど、要所要所で実力を発揮して各地の地下文化を繋いだりと大きな功績をあげたりして首の皮が繋がってる偉人。さらに、我々のエリア担当の横浜美術館の学芸員のヒビノさん。やたらと仕事ができる人なんだけどマヌケ感全開で出してくるめちゃくちゃ面白い人で、自分が鬼軍曹・劉さんにうまく丸め込まれて膨大な漫画を書かされることになった時も「あはは、大変ですねー」と他人事みたいに笑ってるし、「こんなことやって大丈夫ですかねー」と相談しても「いや〜、いいですね。大丈夫でしょ」と、異常に許容範囲が広い。ありがてえ〜。ということで、好き勝手にやらせてもらうことができた。とりあえず、全員が懐が広いのがやばい。
 最後にもうひとつ。せっかくなので横浜の友達にも会いに行ったりして飲み歩いてたんだけど、この横浜界隈の有象無象たちも面白い変人たちがたくさんいるので、せっかくなのでこれを機に横浜に通いつつ、横浜トリエンナーレ内外で何かしら目論んだら面白そうだ。ま、それは後々。

謎の服飾人間「途中でやめる」山下陽光(中央)と、水面下で暗躍する芸術手配師の江上賢一郎(右)

 さて、そんな紆余曲折があって、アーティストでもなんでもないのに、なぜか出展することになった横浜トリエンナーレ。これ、変に“芸術”として構えるんじゃなくて、雑誌やテレビ番組の特集とかで「古今東西 ザ・アンダーグラウンドの抵抗文化に迫る!」みたいなものを見る感覚でフラッと行くのがオススメ。それと、ちゃんと見たらとても1日じゃ見られないような作品量と情報量なので、ぴおシティ行く時間も考えて数日はかけていくのもいいと思う。
 さあ、みなさん! 今年の春は横浜へ駆けつけるしかない!!

横浜トリエンナーレのオープニングセレモニーの後「やっぱり外が居心地いい」と、川べりの路上で飲み始める安定の台湾チーム

おまけ

横浜トリエンナーレ出展! この連載の漫画でもおなじみ、あのイラストがLINEスタンプになった!

松本哉のLINEスタンプ・絵文字一覧│ LINE STORE
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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。