第155回:天変地異や悪政による人災から身を守る野外イベント、防災訓練やりまーす(松本哉)

 地震は起こるわ、毎年巨大な台風もやってくるわ、思い出したように山まで噴火するわで、どうにもこうにも日本っていうのは災害が多いところ。特に最近では40℃ぐらいになる日も続出するし、とんでもない豪雨なども多発して洪水や土砂崩れなんかもよく耳にするようになって、てんやわんやの日々だ。危なっかしくて、おちおち昼寝もしてられない。
 さらには、世界各国で戦争やら侵略行為なんかも昔にまして無秩序に起こり始めるようになってきてて、天災だけじゃなく人災もいつ起こるかわからない始末。戦争だけじゃなく、物価が死ぬほど上がりまくってるのに税金も上がりまくって生活が苦しくなる一方の我らが日本社会だって、いま世の中を牛耳ってる政治家連中なんかによる人災以外の何物でもない。天災と人災がランダムに発生しまくるこの世の中。いや〜、こりゃ大変だ!!
 そして、日本を筆頭に、世界の各国政府は腐りまくってる場合が多々あり、天災人災問わずいざ大パニックの事態の際にまともに助けてくれるとは到底思えない。それどころか、混乱のドサクサで政財界の中枢部がこっそりケツをまくって逃げ出すのは古今東西往々にしてある。そんな時に、そいつらを追いかけて首相や大統領や銀行の頭取をとっ捕まえて袋叩きにしたところで、別にその災いが消えるわけじゃない。取り残された我々庶民たちがサバイバル力ゼロではもうおしまいだ。
 ということで、「なにがどうなってもこっちはビクともしないよ」っていう自力でサバイバルする防災力をもうちょっと身につけておくことが重要だ。ただ、防災っていうとすぐ地震とか火事などの天変地異対策みたいに考えられがちだけど、世の中予想以上に世知辛いので、ここはひとつ人災対策も含めた防災の概念を持つことが大事。備えあれば憂いなしだ。さて、そうなったら思い立ったが吉日。さっそく「防災訓練」をやることにした。よっしゃー、矢でも鉄砲でもかかってこーい!

防災訓練計画ついにスタート!

 じゃ、防災って言ってなにを準備すればいいのか。もちろん寝る場所作ったりトイレ確保したり、食料や水にありつけたりケガの手当てできたりっていうサバイバルの基本もあるんだけど、それだけじゃ“死なない”だけで、生きた心地はしない。やはり人間、遊びや楽しみも含めての人生なので、生き残るサバイバルと同時に遊びや祭りもセットでの防災の準備をしておくことが重要だ。特に人災による暗黒の社会になったときは全開の遊びで対抗するっていうのはすごく重要な手段。株価や円相場も乱高下して大パニックになったりと日本経済も急降下中にもかかわらず自民党は権力にしがみついて離さない昨今、暗黒の社会が到来してもケロッとマヌケな顔しながら、どうあっても遊びを手放さない練習。世の中が混乱した瞬間に祭りが始まる感じ。

 さて、改めて考えてみると、祭にしろ野外イベントにしろ、よほどの商業イベントでない限りは、基本的には自分たちで色々準備して開催する。事前に宣伝したり、フードやドリンクのブースを準備したり、トイレも確保するし、不測の事態の際の対応なんかも一応考える。参加者への情報提供などもやる。ある程度の人数が集まる以上は、自分たちのことは自分たちで面倒を見るようにするのが基本。要するに、イベントを開催するってことは自治力・自活力が自然と養われてしまうので、野外フェスでもいいし、地域の祭りでもいいし、こういう遊びのネットワークって、いざって時にすごい力を発揮してしまう。もちろん人命救助とか消火活動とかの技術も大事だけど、それだけだったら宝の持ち腐れで、実力を発揮できずに終わったらもったいない。普段から大掛かりな遊びをしまくっておけば、防災力は相当レベルが上がるはずだ。それどころか、普段から飲んでばっかりでひたすら近所の飲み屋をハシゴし続けてる呑兵衛たちだって、普段では役立たずと思われがちだけど、いざって時には彼らが持つ膨大な情報網が活かされ「あそこのおばちゃん家、ボロいからやべえ。助けに行ったほうがいい」とか「あの飲み屋の裏には井戸がある」とか相当役に立つに違いない。しかも、酒だけでつながってるので、すごい業界人や偉大な先生方、有力者から、なけなしの日銭で飲んでるやつまでノンジャンルで人脈があり、人をつなぐ時にも真価を発揮してしまう。
 つまるところ、遊びまくっている人のつながりは緊急時のサバイバルにつながるので、それを強化する練習とも言える。

ついに発生! 政府軍の追手との戦いや山岳ゲリラとの接触!!!

 ま、正直言っちゃうと、たまには野外イベントやろうってだけの話なんだけど、ただ遊ぶだけじゃつまらないから、将来来たるべき暗黒の時代でも遊ぶって想定でやろうという話。なんだ、結局遊びたいだけじゃねーか。すいません、その通りです。
 そして、今回のイベント(防災訓練)の会場は、長野の安茂里(あもり)というところにある山で、これは実は十数年前に「なんとかフェス」という名で3年連続で野外フェスをやった場所。ここはこの地でリサイクルショップをやっているジローさんという地方豪族みたいな人が支配下に置いている山で、今回も使わせてもらうことになった。ありがたい!
 長野の山岳地帯での野外フェスってことは、さては天災か人災で都市部がヤバいことになってて、押し寄せる炎や地割れ、こわい憲兵隊みたいなのからかろうじて逃げ延びてきた大バカたちが、まだ懲りずに遊び始めるイメージか。おお、そうなってくると、「コラー、オマエらなに遊んでんだ〜!」と、通りかかった村役場のおじちゃん(政府軍)に、「いやー、一応避難所の練習なんですよね、これ」などと言い訳したり、「おや、楽しそうだねえ。オレも混ぜろ」と山菜とりか川に洗濯に来た村のばあちゃん(山岳ゲリラ)と合流するかもしれない。いや〜、いいね。楽しそうだ。

早速、現地下見へ!

 山の領主、ジローさんいわく「なんとかフェス」から十数年が経ち、現地の様子もだいぶ変わってるとのこと。この間にも長野界隈の人がイベントやったりキャンプしたりといろいろ遊んでたようで、いろんな配置が変わってたり、そもそも地震や豪雨で山の形や川の流れも変わってるとのこと。
 そんなわけで、すでに二度にかけて現地下見を決行。地形の確認や、草刈り、近隣住民へのあいさつなどをしたり、実際に一部の機材を持ち込んでサウンドチェックなどもやりに行った。適当な勢いで開始した企画とはいえ、動き出すといろいろ早いもんで、早くも長野の人たちもノリ気で長野界隈のDJとかに声かけまくり始めたり、隣の松本市からは「出たい!」というバンドが名乗り出てくれたりと、長野勢の動きもやたら早い。そして現地の会場整備も着々と進むが、東京組は意外と生まれも育ちも23区内でずっとそこに住んでるなんて人も多く(自分もそう)、よく出没するという猪、熊、アブ、シカ、マムシ、ブヨ、蜂、犬、猫などの見たことも聞いたこともない未知の世界の謎の生物群に震えながら作業を進めるが、一方の長野現地組は心強く、何事にも動じないかと思われたが、意外にも「いや〜、ブヨ怖い!」と恐れまくってて、逃げ回ってた。同じじゃねーか!

9月は防災訓練、安茂里ジローズビッグマウンテンへ!

 そして、日程は9月。本当は防災ってことで関東大震災の日でもある9月1日にしたかったんだけど、いろいろな都合もあり、ちょっと先に延びて9月21日(土)、22日(日)の2日間。前日の9月20日の夜は前夜祭。そんな日程で開催することに!! すでにDJやバンドなどの出演者も20~30組は決まってきてて、早くも騒動の予感。もちろんただの音楽イベントではないので、トークイベントや上映、または防災訓練っぽくみんなでトイレを掘ったり、風呂(サウナ)をつくったりもする予定。ま、その辺はこれから追い追い決まり次第報告していくつもり。ともあれ、「世の中ひっくり返ってるのに、こいつらまだ遊んでるぞ〜!!!」って言われたいがための予行演習。いや〜、またも盛り上がってまいりました。
 とりあえず、長野の安茂里の謎の山へ駆けつけるしかない!

なんとかフェス改め防災訓練(仮)

9/20(金)設営+前夜祭
9/21(土)第一日目
9/22(日)第二日目
9/23(月)撤収作業

会場:安茂里ジローズビッグマウンテン
入場:1日1000円目安(もしくはそれ以上)のカンパ
出店:1ブース1000円

これが伝説の安茂里ジローズビッグマウンテン。十数年前にステージだった場所はすでに森になっていた

安茂里の山岳地帯を支配する豪族、ジローさん。元々はリサイクルショップの同業ってことで知り合ったが、よくよく付き合ってみるととんでもない人だった

ジロー氏がどこからかもらってきたバスをはじめ、謎のガラクタや作業小屋などが並ぶ

下見と言っても、半分は遊びに行ってるようなもので、キャンプをする事前準備隊。奥はサウンドチェック班。ちなみにサウンドチームは、高円寺の某ライブハウスや某スタジオなどから有志が集結したプロ集団なのでやたらいい音響が期待できそう!!

不慣れな山道で下見隊の車が故障するも、通りがかりの安茂里の走り屋の兄貴が急遽助けてくれた。優しいな〜

こちらは2010年に同じ場所で行われた第二回なんとかフェスの様子

*記事を読んで「いいな」と思ったら、ぜひカンパをお願いします!

       

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。