第102回:「NO LIMIT ソウル自治区」9月に出現! またやばいイベントが始まる!!(松本哉)

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 去年(2016年)の9月に行われた「NO LIMIT 東京自治区」というイベントがある。これは、主に東アジア圏を中心に、オルタナティブな生活圏を築いてる人たちが一堂に集まって、全力で遊ぶイベントだ。つまり、自分たちでカフェやギャラリー、ライブハウスなどのスペースを作ってる人たち、芸術や音楽、社会運動など自分たちの活動を作っている人たちが集結する祭典みたいなもの。去年のNO LIMIT に関しては、以前にもこの連載で紹介したことがある。

「NO LIMIT」後のメチャクチャな世界!

 このNO LIMITが終わった後、各所での影響は絶大で、アジア圏の交流の中でものすごい変化が現れた!! 一つは、いろんな国の人たちが連日一緒に飲んだりしていたので、やたら仲良くなった。このおかげで、今まではあまり接点のなかった国(のオルタナティブ文化)同士の人々の交流がすごい活発化して、人の移動が突如として半端なく多くなった。そして、もう一つは、いろんな人たちが一堂に会したため、それぞれのジャンルを超えて交流が始まった。今まではアーティストはアーティスト同士、バンドマンはバンドマン同士、研究者は研究者同士、飲んだくれは飲んだくれ同士、っていうような感じだったのが、NO LIMITでそれぞれ垣根を超えていろんな人たちと知り合ったので、それ以降は各地で謎の異種格闘技戦のような交流が発生しまくりだ。そんなことで、どこの国の奴らも、去年のイベントに参加したっていうだけで、今やアジア圏の主要都市に行ったら、どこにでも自分の知り合いのスペースがあったり、遊び相手や飲み相手がいたりするようになってしまった。各地の人たちが何をやってるかとか、各地のリアルな社会状況なんかの情報もどんどん入ってくるようになった。ま、「どこの誰が浮気して彼女に振られたらしい」みたいなどうでもいい話まで世界中に情報が筒抜けになり、それはそれでマヌケなこともあるが、いずれにせよ国境を超えた世界が去年の9月を境に一挙に近くなった。

恐怖! 今年も謎の自治区が始まる!

 さて、では今年! 当然、今年はどうしようという話に。当然、最初は「せっかく東京で大成功を収めたんだから、そのまま毎年やっていきたいね〜」という話は当然出た。しかし、いざ東京で第2回目をやるとなると、それはそれで難しい。というのも、限られた宿泊場所もそうだし、ライブハウスでの音楽イベント、それぞれの小さいスペースでの各種イベント、一堂に会しての飲み会などなど、だいたい似たような感じになってしまう。去年来られなくて超悔しがってる人たちも世界中に大量にいるから、規模こそは大きくなるかもしれないけど、こちらの受け入れのキャパシティを余裕で超えてしまいそうだし、なんとかこなせたとしても、ひたすら大規模イベントにすれば成功というわけでもない。さらに一番問題なのは、仮に2年連続で同じような形式でやってしまったら型ができてしまい、3年目以降はどうしてもその流れを意識してしまうようになる。ルーチンワークほどつまらないものはないので、それを避けるためにも、なんか違う形にしたい。もし東京でやるにしても、会場や泊まる場所、イベント内容などもガラッと違う感じでやる方がいい。
 で、東京でそんな感じの議論が進んでいる最中、海外説も続々と浮上してきていた。まず、台湾や香港、中国など、それぞれもし自分のところでやるならこんな計画ができる、などととんでもない案が続出(これはどれも奇想天外の作戦なので、実現するまではまだ秘密)! ただ、どれもいざ実現できるかというと、それはそれでなかなか躊躇するところ。そんな中、去年のNO LIMITに参加しそびれて「ずるい! 楽しそう! じゃ、うちらもやる!」と、いち早く名乗りを上げていたのが韓国のソウルのやつら! おお、すごい!!! そして、そのまま東京案とソウル案が軽く存在する感じで数ヶ月が過ぎ、いよいよ春前ごろに、「今年どうしよう!」となり、東京の人たちが集まった時に「可能ならみんなで力を合わせてソウルでやってみようか」という提案をソウルの人たちにしてみた。もともとソウルには友達もたくさんいるので、いろんな人たちに「今年ソウルで開催したらどう思う?」って聞いてみたところ、案の定「面白そう!」「手伝うよ!」などと好反応。自ら主催したいという人たちも「やろうやろう!」と、ノリ気だ。う〜ん、これはやるしかない! しかし、細かいことを言うと、この意思決定がまた難しい。去年は東京から呼びかけたものの、各国の人たちみんなで協力して開催しただけに、いよいよ次回どうするかなんて、誰も勝手に決められない。ええい、しゃらくせえ、そうなったらやりたいと思う人が自由にやるしかねえ! ってことで、まんまとソウルに決定!!!

事前にソウルへも訪れ、要人と会談!

東アジア圏地下文化研究の辛教授(左)と、台湾からやって来た謎のカフェの店長、楊子瑄(右)。中央奥は、今回の主催者の一人、サンヒョン。

ソウル大混乱! 新たな謎の交流が始まる!

 結果的に思うことだけど、ソウルっていうのは結構いい案だと思う。まず、言語の問題。東アジア圏となるとどうしても中華系が多くなる。香港や台湾、中国本土もそうだし、マレーシアだって中華系の人はすごい多い。なんだかんだ言って、言葉の問題というのも少しはあり、みんな仲良くなったとはいえ、去年は韓国の人たちは若干アウェイ感はあったと思う。韓国にも超面白い人たちは大量にいるからもっと紹介したいし、韓国のとんでもなく最高な奴らに中華圏のアンダーグラウンド情報もどんどん紹介したい! そうなった時に、次は韓国で開催っていうのは、これまた予想外の交流が始まりそうで、絶対に面白くなる予感!
 そしてもうひとつ。韓国で言えば、釜山もオルタナティブカルチャーの規模は大きい。いろんなスペースがたくさんあり、それがうまく連携して一大ネットワークが形成されていて、釜山のその界隈のカルチャーに触れるだけで、芋づる式に最高にヤバいやつらと友達になれる。これは、去年のNO LIMITに参加した人ならわかるはずだ。もう絶対うまく行きそうな予感しかない。いつか開催したら楽しそうな候補地のひとつだ。
 …しかし、今年はソウル。ソウルがまた、釜山とはちょっと違う意味で面白い。ソウルは巨大都市ということもあり、そんなオルタナティブ文化、インディーズ文化などの規模がすごい大きい。東京はじめ、他の大都市もそうかもしれないが、規模が大きいといろんなものが乱立して、意外とお互い知らなかったりする。それどころか、ソリが合わなくて関係が悪かったりする場合もあるし、色の違う人たちがうまく住み分けて活動してたりする。そんな中で、ジャンルが違うわけのわからない一大祭典をやったらどんなことになるか。今までなぜか出会わなかったりした人々が、突如遭遇したり、新発見があったりする。ややもすると、いざこざが起こったりと、常に波乱含みではあるが、いろんな意味での垣根を超えて行くことのプラスというのは計り知れないので、絶対面白いことになるに違いない! 去年の東京もそうで、海外との接点ができただけではなく、同じ都内にいても普段はそうそう出会わなそうな人同士が知り合えた、すごくいいきっかけにもなった。ましてや、そこに謎の外国人が大量に押し寄せているので、そうなったらいよいよ、好き嫌い、向き不向きなど一瞬で吹き飛んでしまい、全ての気持ちをオープンにするしかない。そう、東京人同士にとってもすごいいい経験だった。
 いや〜、ソウルも面白いことになりそう!!!!!!!!

当日、使わせてくれそうな場所をたくさん回る。うーん、楽しそう!

再開発で追い出された人々が自力で商売を営むDIY村。ここでもイベントできるかも!

 去年の東京自治区に参加したことのある人や、後から詳細を見聞きしたことのある人ならわかると思うけど、このNO LIMITというイベント、ちょっと参加するだけで世界各地の膨大な面白い人や活動などを知ることができて、世界が一挙に身近になる。ネットやSNSで海外情報を仕入れて、いろいろ知った気になってた自分が本当にバカバカしくなってしまうぐらい。
 人間死んだらおしまい。一生コツコツと地道に生きるのもいいけど、少しぐらいは世界のとんでもない見聞を広げてみるのもいいはずだ。損をするのはほんのわずかな交通費ぐらい。得るものはとてつもなく面白い人脈と情報。でも、もし仮にそんな文化圏が肌に合わなければ、また自分の生活を地道に生きてもいいし、独自の活動に戻ってもいい。その経験も決して無駄ではないはず。
 そう、「迷ったら行く」。これしかない!!!!!

 近々ソウル現地でウェブサイトが立ち上がると思うので、そちらをチェックしてみよう! 立ち上がれば「NO LIMIT東京自治区」のサイトでもお知らせしまーす! では、みなさん、ソウルで!

7月3日(月)

「No Limit ソウル自治区」プレイベント
NO LIMIT SEOUL BAR

ソウル現地のNO LIMIT関係者とSkypeで繋ぎ、近況報告をしてもらいます。
※この日の収益で、準備段階から東京から派遣する現地NO LIMIT駐在員の交通費にあてます。

19:00〜
高円寺「なんとかBAR」
東京都杉並区高円寺北3−4−12


7月8日(土)

「No Limit ソウル自治区」プレイベント
終わらないパーティーのために・・・ 『パーティ ー51』×『HIDDEN AGENDA The Movie』 上映+トークショー

Asagaya LOFT/A
OPEN 10:30 / START 11:00
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68185


7月12〜13日
韓国ソウルにて

『世界マヌケ反乱の手引書』韓国版出版記念イベント


7月15〜16日

台湾「愁城鬧事」

台北に、中国、沖縄、東京、香港などからミュージシャンが集まる一大音楽祭

去年のNO LIMITに参加した台湾のやつらが主催。今回の見所は大量の中国のバンドが出演するところ! 
https://trappedcitizen2017.wixsite.com/trappedcitizen/blank

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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。