第43回:ババァは反逆児(木内みどり)

 右翼の街宣車。まぁ、なんて汚い声でなんて酷い言葉を使うこと。

 「そこのババァ、何立ってんだよぉ~。」「ババァは黙ってろ!」

 国会前での「アベ政治を許さない」スタンディング。毎月3日午後1時きっかりに国会前に「立つ」。

 2015年8月3日、作家・澤地久枝さんの提唱によって始まったこの抗議にわたしは可能な限り参加してきました。

 9月3日は暑くなく寒くなく湿度なく快適な快晴、でした。

 午後1時、時報のカウントと同時に「アベ政治を許さなあぁぁぁい!」と声を上げていきます。初めからはっきりしていた澤地さんのコンセプト、マイクを使わない、大声を出さない、「有名人」のスピーチなどナシ。みんなに知ってほしいから話したいという人は誰でも話してよい。

 午後1時に始めて1時半で終わり。

 参加者は年配の方が殆どで、60代、70代、80代。70%が女性、30%が男性。お世辞にも上手とは言えないコールや手作り抗議グッズ、例えば「アベ政治を許さない」と書いた布を被せた透明ビニール傘、白い団扇に「アベ政治を許さない」の文字とアベ氏の顔イラストなども、お世辞にも素敵とは言えない素人の手作りもの。わたしはこういうところが好きなんです。

 無理せず自分の出来る範囲で権力者に抗議する意思があることを表明する。

 心では同じことを考えていますとか、同じ考えですと言ってるだけじゃなく、それを外に表すことが大切。

 それは自分の頭で考え、自分の言葉で話し、自分の足で立つということ。これができていない人が多くいる、と思う。

 「アベ政治を許さな~~ぁい!」声を上げ始めてすぐに、右翼の街宣車が現れました。先頭の1台に続いて8台くらい、国会前の信号を無視して交差点内に停車し汚い声で私たちを罵り始めました。それぞれの車がマイクを通して言いたい放題。

 麹町署の警備の方が街宣車の人と言葉を交わしていましたが、彼らはまったく動じません。

 「そんなとこで突っ立てたって、何にも変わりゃしね~~んだよ、このボケ!」
 「ババァは家帰って孫の世話でもしてろっ」

 時々、手下の若者が「そーだ、そーだ」と合いの手を入れるのが間抜けで笑ってしまいます。

 「ババァ」「ババァ」と繰り返します。こちらには「ジジイ」もいるんですけど「ババァ」の連呼。よっぽどお母さんとの関係が良くなかったのかしら、自分のお母さんへの恨みつらみをこちらへ投げつけているようでふと、可哀想にも思いました。

 こちらの「ババァ」の反撃呟き。

 「そうだよ、ババァだからできるんだよ。ヒマだからできんの。できること、やってんの」
 「そこから降りてきなさいよ。ひとりでこっち来てもの言いなさい。それもできないクセに」

 もちろん相手に聞こえない範囲で呟いているのが、おかしくておかしくて。

 最近のtwitterでは「ライブ」という機能が付いているので、その機能を使って中継してみました。観てください。

 9月3日は澤地久枝さんのお誕生日。87歳!
 アナーキーでカッコいい澤地さんの言葉も聴いてみてください。

 そして、このおふたりを紹介したい。

 反逆児。作家・渡辺一枝さんとお名前を知らないけれどこの5、6年、反戦・反原発・反政府・反安倍などの抗議の場でいつもお見かけする女性。

 反骨の人。気骨ある女性。いつもいつも、ひとりで行動されている。

 「ババァ」だけれどね、右翼のお兄ちゃんやおっさん、この方たちはあんた達なんかよりよっぽど肝が据わってる「反逆児」なんざんすよ、っつう~の。

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木内みどり
木内みどり(きうち みどり):女優。’65年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(’67/NTV)、「安ベエの海」(’69/TBS)、「いちばん星」(’77/NHK)、「看護婦日記」(’83/TBS)など多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(’71/森谷司郎)、『死の棘』(’90/小栗康平)、『大病人』(’93/伊丹十三)、『陽だまりの彼女』(’14/三木孝浩)、『0.5ミリ』(’14/安藤桃子)など話題作に出演。コミカルなキャラクターから重厚感あふれる役柄まで幅広く演じている。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動。twitterでも発信中→水野木内みどり@kiuchi_midori