3月25日の自民党党大会において、同党の憲法改正推進本部は「改憲4項目」の方向性を報告しました。一時は自民党内での9条改定案の議論がまとまらず、一本化はとうてい無理だろうと見られていましたが、細田博之衆院議員を本部長とする執行部は、最後は石破茂衆院議員らの「9条2項を維持したまま自衛隊を明記するのは矛盾する」との反対意見を押しきる形でとりまとめた模様です。朝日新聞(3月27日付)の記事によると、この改憲ポイントは以下になります。
〈9条の1項、2項を維持したまま、両項の規定は国民の安全を保つため、「必要な自衛の措置をとることを妨げない」として、そのための実力組織として自衛隊を保持〉
こういうなら9条はそのままだし、自衛軍という言葉もないし、今、実際に存在している自衛隊を憲法に書き入れるだけならいいんじゃないの…? と一見とても「マイルド」で現実的な改憲案になっているように読み取れるかもしれません。しかしこの「自衛隊の存在を憲法で認める」ことは、自衛隊が「憲法上の機関」になることであり、それが何を意味するか、ということについてはほとんど議論がされていないでしょう。自民党からも丁寧な説明がないどころか「1ミリも変わらない」という嘘を平気で公言するところに、不信感がつのります。この点については、「この人に聞きたい」青井美帆学習院大学大学院教授のインタビューの、(その2)で詳しく聞いていますので、ぜひ、そちらをお読みください。
正直、森友文書書き換え問題で、国会が紛糾中にもかかわらず、「憲法改正案」を予定通り出してきたことには驚きがありました。昨年の5月の憲法記念日に安倍首相が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」とのメッセージを発してからもうすぐ1年。「ありえない」改憲スケジュールへのアクセルを、どんなことがあっても緩めようとしない安倍首相の執念と本気度を感じます。
ここで私自身の考えを付け加えるならば、安倍政権だから改憲がダメということだけではなく、そもそも9条2項の肝は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする軍事力放棄の宣言です。どの政権であろうとも、この条文を1ミリでも動かすと、非武装・非軍事で日本は独自の国家をつくりあげていく、という「理念」が変質します。
政治主導の改憲ムードに押される形で、9条の議論は以前より多様化しているかのようにも見られます。非戦・非武装を掲げる日本国憲法は、私たち弱者の存在である国民からの「強力なブレーキ」として必要だとの思いが、ますます強くなっています。マガジン9を14年続けてきた今、1周回ってその思いにまたたどり着いたということでしょうか。
憲法9条について、意見の違う人との対話や議論もいいですが、力や声の大きな人に押し切られる場合もあると感じています。時にはじっくり自分自身で熟考してみることもおすすめします。理念というものは、一人ひとりの心の中に宿すものでもあると思うからです。
(水島さつき)