山本譲司さんに聞いた:「罪を犯した障害者」を、社会はどう受け入れるか

障害や病気があるがゆえに差別され、生活に困って万引きなどの軽微な罪を繰り返す人たち……。日本の刑務所には、そうした受刑者が大勢、服役しています。社会にいても支援が受けられず、刑務所しか居場所がないのです。
作家の山本譲司さんは、自著や講演を通じて、この問題を世に訴え続けてきました。2018年7月に開催した第45回マガ9学校「刑務所から考える、ソーシャル・インクルージョン」では、江川紹子さん(ジャーナリスト)と鈴木邦男さん(評論家)とともに、刑務所の現状や、司法や福祉、地域社会の問題点について語り合いました。来場者には福祉の現場などで活動する人も多く、熱心に耳を傾けていただきました。非常に多くの質問や意見が寄せられ、当日の質疑応答コーナーでは答えきれなかったため、後日改めて山本さんに伺いました。当日のお話の内容とあわせてご紹介します。

家も仕事もなく、刑務所に行き着く障害者

──「マガ9学校」でのお話から

 昨年7月の「マガ9学校」では、山本さんが「障害者と犯罪」の問題に関心を寄せるようになった経緯からお話しいただきました。
 山本さんは衆議院議員時代に秘書給与流用事件で逮捕・起訴され、2001年の一審判決に従って懲役1年6カ月の刑に服しています。刑務所で出会ったのは、認知症の高齢者、重い知的障害があり自分がどこにいるのかさえ理解できない人、食事や排泄、入浴などを自分でできない人たち。彼らの多くは身寄りがなく、仕事も家もないなか、万引きや無銭飲食などを犯して服役していました。刑務所といえば、凶悪犯の吹きだまりのようなイメージがあるかもしれませんが、実際には福祉施設のような光景が広がっていたのです。
 「社会の現実が見えていなかったことに、大きなショックを受けました。同時に、反省もしました。今も私は、月のうち1週間くらいは刑務所内で過ごしているんです。高齢あるいは、障害のある受刑者の刑務所内処遇や、社会復帰支援のお手伝いをしています」(山本さん、以下同)

 山本さんは2002年の出所後、『獄窓記』『累犯障害者』などの著書で刑務所の実態を世に伝えました。その頃は、高齢あるいは障害のある受刑者を支える仕組みが、ないに等しい状況でした。しかし、ここ10年ほどでさまざまな支援制度ができました。
 「私にとっては隔世の感があります。刑務所の中にソーシャルワーカーが常駐するようになり、仮釈放時の引受先となる更生保護施設へも福祉の専門職が配置されるようになりました。そして2009年以降、厚生労働省の予算によって、刑務所の中の高齢者や障害者を福祉につなぐコーディネート機関『地域生活定着支援センター』が各都道府県にできたのです」
 司法や福祉の整備は、確実に前に進んでいます。でも、決して安心はできないそうです。
 「13年前、府中刑務所(東京)には2700人くらいの日本人(日本で生まれ育った人)受刑者がいて、そのうち知的や精神に障害がある人が全体の15%で、身体に障害のある人が28%でした。3年前に再び府中刑務所を訪れると、日本人受刑者が1800人ほどに減るなか、そのうち知的や精神に障害のある人が39%、身体に障害のある人が34%となっていました。つまりこれは、“この10年間、受刑者全体の数が減り続ける一方で、障害のある受刑者に関しては、その数が一向に減っていない”ということを示しているのではないでしょうか。彼ら障害のある受刑者が刑務所を終の棲家にせざるを得ない状況は変わっていないのです」

昨年7月28日に実施された「マガ9学校」にて

 障害のある受刑者が抱えている事情については、まだまだ一般に知られていません。ネット上では「刑務所にお金をかけるなんて税金の無駄遣いだ!」という声が溢れています。しかし、山本さんによると、この問題を放置することは、逆に税金の非効率な使われ方につながるそうです。
 「かつて受刑者全体の数が7万2000人くらいだった時、年間の矯正医療費(受刑者に使う医療費)は30億円程度でした。それが2017年、受刑者は約4万5000人に激減しているのに、医療費は63億円に跳ね上がっています。きちんと福祉的な処遇をすれば刑務作業もこなせるのに、障害のある受刑者の中には“薬漬け”といった状態にされている人もいます。受刑者の薬代や治療費は、100%国費での支出です。受刑者1人を収容するには年間300万円ほどかかると言われますが、高齢者や障害者は、医療費なども含め、もっと費用がかかるんです。この問題を“臭い物にふた”として、野放図に税金を投入し続けるのか、それとも、刑務所内外での必要な支援体制を整え、矯正行政にかかるコストを削減するのか。冷静に考えれば答えは出てきます。障害のある受刑者とはいえ、彼らの多くは、社会の中で働くこともできますし、納税者にもなりうるのですから」

 以下、「マガ9学校」当日に参加者から寄せられた質問について、後日山本さんにお話を伺いました。

Q1 刑務所を出所後、「地域生活定着支援センター」から漏れた人はどうすべきですか?

――「マガ9学校」当日も、出所者を支援する「地域生活定着支援センター」についてお話しいただきました。高齢や障害のため福祉的な支援が必要な出所者を福祉サービスなどにつなげるコーディネート機関とのことですが、対象者はどのように決まるのでしょうか?

山本 刑務所の職員が「支援が必要」と思った受刑者に声をかけて、本人が同意すれば、地域生活定着支援センターを利用できます。必要な福祉につないでもらったり、出所後も、仕事や生活などの相談に乗ってもらえたりします。ところが、実際には十中八九、本人が同意しません。ほとんどの人が、地域生活定着支援センターを利用した福祉的支援からは「漏れている」のです。

――それはなぜでしょうか? 

山本 多くの地域生活定着支援センターは、福祉事業者が都道府県から事業を受託して運営しているのですが、福祉施設に入ると生活上の自由が制限されることがあります。職員のいうことをきかないと「厄介な人」と決めつけられて、つらく当たられることもある。刑務所と違って、いつ出られるかわかりませんから、「福祉に行ったら無期懲役だ」と言う受刑者もいます。

 それに、全てとは言いませんが、利用対象者をえり好みしている福祉事業者もいます。高齢なだけならあまり手がかからないので、割と受け入れられます。しかし、障害によってはなかなか厳しい。支援の難しいタイプの発達障害がある人たちは、特に避けられる傾向にあります。刑務所側に「もっと素直で物わかりのいい障害者だけにしてくれ」と言ってきた事業者もいる。

 本来であれば、「利用者から選ばれる福祉」でなければならないと思います。高齢者福祉はすでにそうなっていて、各介護事業者が営業努力をしていますよね。でも、知的障害者福祉は昔から「事業者が選ぶ福祉」の風潮が漂っていて、地域生活定着支援センターにも少なからずそうした面があります。

――地域生活定着支援センターができても、問題解決は難しいのですね。

山本 でも、私はそう悲観はしていません。地域生活定着支援センターは2009年に始まって10年がたちます。正式な制度ではなく、モデル事業の延長を重ねて現在に至るのですが、丁寧な検証をして、何が足りないか、これからどうしたらいいかを検討してほしいと思います。

 地域生活定着支援センターは都道府県によって、福祉事業者以外に、ホームレス支援団体や医療機関が事業を受託しているところがありますし、社会福祉協議会や社会福祉士会が運営している県もある。さまざまな機関がかかわっているので、多様な発見があるのではないでしょうか。そうした検証をもとに、受刑者側がより利用しやすい仕組みにつくり変えていけばいい、と考えています。

Q2 兵庫県明石市の取り組みについて教えてください。

――こうした質問が出るということは、明石市では、罪を犯した障害者の問題について、特に先進的な取り組みをしているのでしょうか?

山本 そうですね。明石市の泉房穂(いずみ・ふさほ)市長は弁護士と社会福祉士の資格を持っていて、以前はNHKのディレクターや衆議院議員も務めていました。泉さんが所属する日本社会福祉士会は2008年に、私もメンバーの一人となり「リーガル・ソーシャルワーク研究委員会」を発足させました。その委員会において、罪を犯した障害者に対し福祉側がどう支援をしていくのか、多岐にわたる調査や研究を行なったのです。その後、泉さんには、私がかかわっている播磨社会復帰促進センター(半官半民の刑務所)の篤志面接委員に就任していただき、弁護士として、受刑者からの相談を受けてもらうようにもなりました。

 2011年に泉さんが市長になってから、明石市は市役所の福祉局に「更生支援担当」を置くようになります。そこには福祉と司法の専門職が在籍していて、刑務所を出所してくる人を「市民」として受け入れる支援をしています。例えば、生活保護や障害年金の申請に同行したり、療育手帳の取得をサポートしたり、福祉事業所や介護事業所を紹介したりしているのです。

 こうした刑務所を出てからの支援を“出口支援”と言いますが、明石市では“入口支援”、つまり刑務所に入る前の支援にも力を入れています。「明石市更生支援ネットワーク連絡会議」というものがあり、警察や検察、裁判所を含めた各機関同士の連携や情報共有がはかられています。罪を犯した人が高齢だったり障害がありそうだったりすると、すぐ市に連絡が入り、更生支援担当の職員が面会に行く。知的障害や精神障害があるかどうかをアセスメントをします。その上で、どういうトリートメント(処置、かかわり方)が必要かを考えます。本人の状態と犯行内容を考慮して、刑事司法にのせたほうがいいのか、福祉につないだほうがいいのか、市を挙げてかかわるのです。2019年4月には、全国の自治体に先駆けて、「更生支援及び再犯防止に関する条例」が施行される予定です。

Q3 福祉にかかわる人間として、アウトリーチ(訪問型支援)の重要性を感じます。

――アウトリーチとは、生活上に課題を抱えていながら、自分で周囲に支援を求められない人に対し、福祉や行政のほうから訪問して支援することですが、出所者に対しても行われているのでしょうか?

山本 例えば、横浜市の「障害者自立生活アシスタント事業」は、福祉の専門知識のある「自立生活アシスタント」(市から委託を受けた福祉事業者の職員)が、地域で暮らしている障害者のもとに赴いて支援をします。罪を犯した障害者も例外ではありません。障害者が事件を起こして裁判になったケースでは、自立生活アシスタントが出廷して、今後の支援について証言をした例もあります。非常にいい取り組みだと思います。アウトリーチは「障害者の地域移行」を進める上で重要な柱ですからね。

――障害者の地域移行とは、障害のある人が施設に入るのではなく、地域社会でみんなと一緒に暮らせるようにすることですね。

山本 ええ。アメリカではずいぶん前から障害者の地域移行が行われていて、アウトリーチが盛んです。「パーソナルアシスタント」という仕組みがあって、医療・福祉・司法のチームが地域で暮らす障害者のもとを定期的に訪問し、相談に乗ったり、見守ったり、その人に必要な支援をしています。ここに障害福祉予算の大部分を割いていますが、福祉施設に障害者を隔離するより、ずっと安く済みます。

 日本では、障害者の地域移行というと、「大規模施設からグループホームに移ればいい」という発想がありますが、アメリカではそれを地域移行と言いません。

――今回のマガ9学校で、障害のある出所者を社会で受け入れるためのアイデアを募りましたが、そこでも複数名から「グループホームに入れる」という意見が寄せられました。

山本 罪を犯した障害者が、どのような生活をしてきたかを想像することが大事だと思います。多くの場合、子どもの頃は特別支援学校に行かされ、卒業したら人里離れた施設に隔離されてきました。やっと地域移行の時代になったというのに、今度はグループホームというのでは何も変わりません。グループホームの暮らしが、私たちにとっての「普通」ではないように、彼らにとっても普通ではないのです。 

Q4  IT化、ロボット化で知的障害者がしやすい仕事が減っているように思います。これからの時代に、累犯障害者の役割(仕事)はどういうものがあると思いますか?

――罪を犯した障害者が社会復帰するためには、居場所(住居)と並んで、役割(仕事、生活上の出番)があることが重要だと言われます。実際には、どんな役割を担っている人がいるのでしょうか?

山本 服役経験のある男性で、大企業の郵便物の仕分けをしている人がいます。彼には発達障害があり、その特性としてたぐいまれな記憶力を持っています。社内の人の名前を全て暗記し、実にテキパキと仕事をしています。こうして障害特性に合った仕事が見つかると、生活も次第に落ち着いてきます。でも、もっとささやかな役割でもいいんです。ある男性は、出所後に入った自立準備ホーム(身寄りのない出所者が一時的に滞在できる場所)で、植物に水をあげる役割をみつけました。ほかに、自立準備ホームの前の道路でゴミ拾いをすることを日課にした障害者もいます。こうした小さな役割も自己肯定感を生み、社会の一員としての自覚につながるのです。

――今後の産業構造の変化には、どう対応していったらいいのでしょうか?

山本 確かに難しい面はあると思います。ただ、いつの時代もなくならない仕事もありますよね。罪を犯した障害者を熱心に支援しているある福祉施設は、彼らに農作業をしてもらっています。自然に触れることで気持ちが落ち着くのか、みんなとても生き生きとした表情で花や野菜を育てています。

 ほかに、高齢者介護の仕事を提供しているNPOもあります。ある女性は10代の頃から女子少年院にいて、20歳を過ぎてからNPOの自立準備ホームに入りました。最初は支援される側でしたが、今ではそのNPOが運営する高齢者施設のスタッフとして活躍しています。介護は、“利用者さん”から「ありがとう」と言ってもらえる仕事です。それが成功体験になって、もっと仕事を頑張ろうという意欲につながります。

――それは障害のある人もない人も同じですね。

山本 そうなんです。障害そのものが、直接、仕事に差し障ることはそうそうありません。時に、彼らは突拍子もない行動をとりますが、それは障害がダイレクトに引き起こしているわけではない。必要な支援が受けられなくて、自分でもどうにもできない時に、周囲が戸惑うような行動に出るのです。だから、就労にあたっては適切なマネジメントが必要です。その人にはどんな役割が合っているか一緒に考えて、必要な支援をするのです。視力が弱ければメガネをかける、脚が不自由ならば松葉杖をつく。同じように、“人”という手助けがちょっとあれば、知的障害のある人も普通に生きていけるのです。

昨年7月28日に実施された「マガ9学校」にて

Q5 罪を犯した障害者は何を望んでいるのでしょうか?

山本 あなたは何を望んでいますか? 彼ら彼女らが望んでいることも、それと一緒です。罪を犯した障害者も、みんなと同じように恋愛はしたいし、子どもも欲しい。それに当然のことながら、褒められれば嬉しくなる。

 よく、「障害者にどう接したらいいかわからない」という声も聞きますが、普通に、ほかの人に接する時と同じように対応すればいいと思います。腫れ物に触るようにするのではなく、必要だったらきちんと反論したっていい。同じ目線でつき合えばいいんですよ。

――「障害者には優しくしましょう」という教育を受けてきた気がしますが、それが求められているわけではないのですね。

山本 そもそも障害者の定義とは、どういうものなんでしょう。障害か健常かというのは、境界線が極めてあいまいで、そう簡単に線引きができるものではありません。発達障害は医学的な診断が難しいですし、誰もがいつ障害を負うかだってわからない。いったい何をもって健常者というのでしょうか? 彼らと自分を区別しないで考えることから、相手が望んでいることがわかってきます。

Q6 小学生の頃、仲間はずれにされている同級生がいました。あとから、彼に発達障害があると知りました。障害のある人は、そのことを公にしたほうがいいと思いますか?

山本 これは何が正解とはなかなか言えない問題で、ケースバイケースですね。ひとつ言えるのは、「障害を公にできる社会にしたほうがいい」ということ。残念ながら現状では、自らの障害を進んで公にしようと思えるほど日本社会は成熟していません。適切に診断してもらえる医療環境や福祉的支援の体制が整い、なおかつ国を挙げての障害者をインクルージョン(包摂)する取り組みが始まることが何より重要です。

――障害があり、受刑歴もある人は、なおさら公にしにくいですね。

山本 障害のある出所者の就労支援をしている事業者のなかには「受刑歴を隠さなくていいよ」と言う人もいますが、いざ仕事に就くと、まわりからの差別や偏見に苦しむケースがよくあります。人間関係がぎくしゃくして、結局、辞めざるを得なくなる人もいます。まだまだ社会の理解が行き届いていないと言わざるを得ません。

 障害があり、なおかつ前科のある人は、社会の中で一番エクスクルージョン(排除)されやすい対象なのかもしれません。しかし、そうした人たちでも決してエクスクルージョンしない社会というのは、どんな人もがインクルージョンされる社会の実現につながるのではないでしょうか。

Q7 再犯防止のためには、新たな刑事手続の導入が必要ではないでしょうか。

――現在の刑事司法には、どんな問題点があるのですか?

山本 まず、現在の刑事司法には、自由刑(自由を奪う刑。懲役刑や禁固刑など)、財産刑(罰金など)、生命刑(死刑)がありますが、法務省は自由刑を抜本的に改革しようと動いています。欧米では当たり前の考え方ですが、刑務所内に閉じ込めて朝から晩まで単純作業を繰り返すだけの懲役刑では、結果的に社会性を失わせてしまい、かえって再犯者を増やしてしまうことになるからです。

 何度も万引きをして捕まった人を刑務所に入れても、服役中は物理的に万引きができないだけで、出所すればまた同じことになります。薬物事件で服役している人もそう。絶対に薬物が手に入らない刑務所の中ではなく、一般社会で薬を使わない期間を長くすることが、彼らの自信にもなりますし、“生き直し”のための重要なトレーニングとなります。

――自由刑は、具体的にどう変わっていくのでしょうか?

山本 「社会内処遇」を拡大させる方向に行くでしょう。刑務所ではなく、社会の中にいながら刑を受けるのです。

 その一つが、2016年から始まった「一部執行猶予制度」です。その名称通り、刑の一部の執行を猶予する制度で、判決では「懲役1年6カ月、その刑の一部である懲役6カ月の執行を2年猶予する」などとなります。1年の懲役刑に服したあとは社会に戻り、2年間、保護観察が付されたなかで過ごします。その間に事件を起こさなければ、猶予されていた懲役6カ月は執行されません。

 私は、ほかにももっと刑のバリエーションを増やすといいと思います。例えば、職業上のスキルを身につける“職業訓練刑”、必要な教育を受ける“教育刑”、あるいは依存症の回復プログラムを受ける“治療刑”もあっていいかもしれません。

 一時期、法務省は「社会奉仕命令刑」といって、無償ボランティアをさせる刑を打ち出しました。マスコミの批判や、ボランティア団体からの「私たちと罪人を一緒にしないで」という抗議の声もあり見送られましたが、欧米諸国ではすでに一般的な刑です。

 イギリスの人気バンド「カルチャー・クラブ」のボーイ・ジョージさんは以前、ニューヨーク滞在中に薬物所持で逮捕され、裁判所から社会奉仕活動を命じられました。薬物依存のリハビリを受けることを約束した上で、マンハッタン地域の清掃活動に5日間従事したのです。

――社会内処遇が拡大されると、地域の人も罪を犯した障害者と交わる機会が増えそうですね。

山本 いろんな人が交わらざるを得なくなります。そこから、罪を犯した障害者に対する理解が、少しずつ広がっていくのではないでしょうか。彼らが社会に戻って暮らしていくには、孤立させないことが非常に大切です。

 私は、罪を犯した障害者の支援をしていますが、ある受刑者は何度も罪を犯して刑務所に戻ってしまう理由をこう話しました。「社会に出るといじめられるから怖い。コンビニでゴミをあさっていたら、知らない人から『キモい』と言われたり、からかい半分で服を脱がされたりした。ライターでお尻をあぶられたこともある」と――。

 この10年で、福祉や司法の制度は確かに進歩しました。けれども、社会の意識が変わらない限り、彼らは差別され続け、安心して地域の中で暮らしていけないのです。この問題は、人間社会のあり方そのものについて問いかけています。だれにとっても無関係ではないのです。

取材・構成/越膳綾子 写真/マガジン9編集部

山本譲司(やまもと・じょうじ) 1962年生まれ、元衆議院議員。2001年に秘書給与流用事件で服役。出所後、障害者福祉施設で働くかたわら、罪に問われた障害者の問題を社会に提起。獄中体験を描いた『獄窓記』(ポプラ社)で新潮ドキュメント賞受賞。その後、『累犯障害者』(新潮社)や『続 獄窓記』(ポプラ社)を出版。現在もライフワークとして、障害や病気のある受刑者、高齢受刑者の社会復帰支援に取り組む。最新刊は『刑務所しか居場所がない人たち』(大月書店)。また、2012年に『覚醒』(光文社)で小説家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)がある。