第71回:地方議会から光が(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

ぼくらの仲間が当選したぞ!

 よかったよかった、と胸をなでおろした。
 先日のこのコラムで書いたように、我が「マガジン9」の仲間である塚田ひさこさんが、東京・豊島区議選で初当選したのだ。それも、所属した地域政党「生活者ネットワーク」がこれまでに豊島区で獲得した票数を大幅に上回る得票数での当選だった。何かが変わりつつあるのか?
 支援者たちが泣いて喜んだという。何度も塚田さんと一緒に街を歩いてくださった女優の木内みどりさんも、大喜びのツイートを投稿して、感激を表明しておられた!
 たくさんの仲間や著名人が応援に駆け付けたのは、塚田さんの人柄の故だろう。ぼくも嬉しい。
 塚田さんの優秀さは、「マガジン9」の中で存分に発揮されてきたが、今度はその素晴らしさを豊島区議会という地方政治の場で示していくことになる。むろん、地方議会のベテラン区議たちからは、そうとう浮き上がった存在になるだろうが、そんなのにメゲるようなチャコ(愛称)じゃないはず。
 「マガジン9」には、素晴らしい人材が集まっている。そのみんなが応援するつもりでいるのだ。彼らからさまざまな政策構想を引きだせばいい。
 「チャコの政治物語」が始まる!

屋良さんの当選、保坂区長の三選も

 そのほかにも、ぼくがそれなりに応援してきた人たちが、かなり当選している。筆頭は、沖縄3区衆院補選の屋良朝博さん。
 屋良さんの当選は、ほんとうに嬉しい。沖縄の「屈せざる魂」が、今回もはっきりと示されたわけだ。
 屋良さんには、ぼくも協力している市民TV「デモクラシータイムス」で毎月1回オンエアしている「新沖縄通信」にも出演していただいたことがある。
 明快な論旨と深い知識に裏付けられたお話は、聞く者を十分に納得させるものだった。今度はそれを、国会の場で示していく。野党は大きな戦力を手に入れたのだ。
 東京・世田谷区長の保坂展人さんも、危なげなく三選を果たした。ぼくとは雑誌編集者とフリーライターという関係での、数十年にわたる交友があり、その人柄や政策遂行能力は底の底まで知っているけれど、また4年間、それを発揮できる。
 保坂さんの最新著書『NO!で政治は変えられない―せたがやYES!で区政を変えた8年の軌跡―』(ロッキング・オン/1200円+税)は、すべてを肯定的にとらえて前へ進むという自身の政治姿勢を明らかにした本だ。この姿勢こそ、圧倒的な支持の源なのだろう。
 彼のような区長を持つ世田谷区民は幸せだと言っていい(明るい笑い)。

さまざまな経験を政治の場へ

 東京・三鷹市で市議に当選した紫野明日香(しのあすか)さんも、ぼくが陰ながら応援していたおひとりだ。
 明日香さんは、あの「3・11」以降、友人の土肥二朗さんたちと一緒に、毎週金曜日に、休むことなく国会前に出かけ「希望のエリア」を立ち上げて「原発反対」を訴え続けてきた中心人物だ(現在は、毎月第3金曜日だけ開催している)。
 明日香さんもまた、実際の議会の中で、その主張を実現させようと、共産党から立候補した。そして見事当選。むろん、原発問題だけではなく、貧困や弱者、子どもたちへ向ける目の優しさは、仲間たちみんなが知っている。
 同じようなケースは、各地に見られる。
 例えば、長野県駒ケ根市で市議に当選した池田幸代(さちよ)さんもそのおひとり。池田さんは、社民党世田谷総支部福祉対策部長や社民党長野県連合女性政策部長などを務め、とくに、児童福祉、児童虐待、貧困、女性問題などに取り組んできた人だ。
 ぼくが、この3人の新地方議員にひそかにエールを送っていたのは、彼女たちの経歴がそれぞれに違い、それぞれにとても面白かったからだし、もしこんな人たちが国会に進出して、互いに連携して政策実現に奔走したならば、いまや疲弊にあえいでいるこの国を、根本から建て直すことができるかもしれないという希望を見出すからだ。

 塚田ひさこさんは、大企業に勤務した後、フリーライターに転身。そして、最初に書いたように「マガジン9」に参加、編集にインタビューに事務処理にと、それこそ八面六臂の活躍を見せた。
 紫野明日香さんは、実は劇団「前進座」所属の女優さんという顔を持つ。演劇活動を主にしながら、社会問題にも強い関心を持ち、そこから「反原発」のデモなどに参加。そして、自らが「希望のエリア」を主宰して、安倍内閣への抗議を繰り広げてきた。
 紫野明日香さんや土肥二朗さんらの「希望のエリア」は、参加者たちからは「夜の学校」と呼ばれていたそうだ。事実、ここからたくさんの人たちが自分の地元の活動へとつなげていったという。まさに本当の意味での人生の「学校」だったのだ。明日香さんは、その学校の優しい校長さんだったのである。
 そういう紫野さんが市議会でどんな活躍を見せてくれるか、ぼくの期待は膨らんでいる。
 また、池田幸代さんは、大学で社会福祉を学んだのち、福祉新聞社の記者となり、そこから思いを共有する国会議員の秘書になった。2007年からは、福島みずほ議員の公設秘書として活躍した。
 つまり、池田さんは政治の裏表をかなりよく知っている人だと言っていい。そんな人が、地方市議会の議員になる。人脈を徹底的に使いこなせれば、駒ケ根市に、これまでにない新しい風を吹き込むだろう。

地方から中央を撃つ

 ぼくが知る範囲での地方自治の期待の星たちだ。そういう人たちは、男女を問わず、他にもたくさんいるだろう。どうにかして、所属政党の枠を超えて連帯し、ほんとうの意味での「草の根からの民主主義」を実現していってほしいと、ぼくは強く思う。
 何はともあれ、中央政府が無残な有り様に陥っている現状では、地方からの訴えや呼びかけが大きな力を持つだろう。
 例えば、東京の小金井市議会や小平市議会などが「沖縄の米軍基地問題に関する意見書」を可決したように、多くの地方議会が中央政府へ物言うことになれば、いかにかたくなな安倍政権だろうと、少しは立ち止まって考えるきっかけになるかもしれない。
 地方から、歪んだ中央を撃つ!
 そうなればいいなあ…というぼくの希望でもあるのだけれど…。

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。