第145回:気がかりな、野党の会派統一構想(南部義典)

急に持ち上がった、会派統一構想

 第125回で「『野党ねじれ』が深刻化する前に」と題する文章を寄せました(2017年11月8日更新)。第48回衆院総選挙(同年10月22日)の結果、衆院では野党第一会派が「立憲」、第二会派が「希望」、参院の野党第一会派が「民進」と、衆参で野党第一会派が異なる状態が生じてしまったわけですが、議院の運営では与野党ともに第一会派の権限が大きいので、野党の連携が上手くいかないと終始、与党ペースで牛耳られてしまうことをそこでは警告したつもりです。

 あれから2年近くが経ちました。これまでの経緯は、皆さんもご存知のとおりです。多元的分散状態に陥った旧民進系議員が立場を超えて知恵を出し合うどころか、参院における野党第一会派のポジションをめぐって、敵対心を剥き出しに、熾烈な争いが繰り広げられてきました(面子を賭けた、我の張り合いでした)。とくに2019年に入っての争いは、自由党、社民党のみならず、引退間近のアントニオ猪木議員なども巻き込みながら、第一会派が立憲と国民の間でコロコロと入れ替わる「シーソーゲーム」の様を呈していました。そして、第25回参院通常選挙(7月21日)では、立憲と国民の候補者が激しく相争い、疑心暗鬼を生み、大きなしこりを残した地域があり、「野党共闘は、幻想ではないか?」と素朴な疑問を抱いたのは、私だけではないと思います。

 そんな中、立ち上がったのが、立憲、国民を核とする衆参会派統一構想です。8月5日(第199回臨時国会の閉会日)の枝野提案に端を発しますが、当初の反応の鈍さからして、早晩棚上げになるだろうと、私は見込んでいました。ところが、15日の枝野・玉木会談で急転直下の歩み寄りに至り、20日に最終合意が整い、本稿執筆時点ではすでに両党の了承が得られている段階にあります。

会派運営協議会とは? 何が問題となるのか?

 衆参での会派統一構想は既定路線になっており、もはや反論を挟みようがありませんが(この動きは、改めて総括します)、私が気がかりなのはもっと国会運営の実務的なところです。20日の合意文書では、「今後の政府提出法案への対応、会派の意思決定手続き、運営方法等は、各党派の代表者からなる会派運営協議会を速やかに設置し、検討を始める。」とあります。この会派運営協議会とは一体何だろうか、ということです。

 第一に、会派運営協議会の構成についてです。衆参それぞれに設置されることは分かりますが、その人数、各党の割当て数が不明です。さらに、協議会で様々な決定を行うさい、多数決によるのか、メンバー全員一致の方式によるのか、も分かりません。メンバー構成次第ということに尽きますが、単純な多数決に拠ってしまうと、立憲の意向がそのまま反映されるだけになってしまいます。ここでの意見対立は「一つの会派内」と際立ってしまうので、他党会派に攻撃ないし批判の材料を与えてしまいます。

 第二に、運営の情報公開についてです。協議会では内閣提出法案の賛否、議員提出法案のタイミングなど重要な事項を決定していくことになりますが、協議会メンバーであればその状況がリアルに把握できるものの、メンバー以外の(ほとんどの)会派所属議員は適時の情報公開がなければ、単なる「採決要員」と化してしまいます。やり方を誤ると、方々で不満の声を膨らませてしまいます。また、協議会には二つ以上の異なる政党が参加するわけですが、その意思決定のプロセスが不透明だと、責任の所在を一層あいまいにします。これは旧民主党政権期の問題点でもあったわけですが、過ちを繰り返すと、再び信用を失墜させることになります。

 第三に、各委員会の筆頭理事の配置についてです。各委員会には与党第一会派(自民)、野党第一会派(立憲)から筆頭理事が一名置かれ、その役回りは委員会の議事、運営を交渉し、合意を図っていくことですが、統一会派に改まることになると、国民民主その他の政党の議員も筆頭理事に選任される可能性が出てきます(あくまで可能性です。立憲で独占するのは難しいのではないか、という問題意識です)。立憲所属議員以外の筆頭理事が生まれると、その委員会の運営に多少なりとも影響が生じるはずです。

 第四は、現職議員の受け止めについてです。会派統一の件は目下、枝野・玉木両代表をはじめとする一部の幹部が主導しています。それはそれとして良いのですが、所属議員の側から、会派統一の件について「私はこう思う」「私ならこうしたい」というビジョンがほとんどと言っていいほど発信されていません。沈黙は金とも言われますが、余計な一言を挟んで、全体に迷惑を掛けてはいけないという配慮があることは分かります。しかし、政党は任侠組織ではなく、そもそも民主的基盤を有する組織でなければなりません。市民に対する意見発信がないことが、議員(ないし政党)としての頼りなさに繋がっているということに、そろそろ気付いてはどうかと思います。

「相席」のような割り切りも必要

 以上のように書いていると、会派の統一にはあくまで緻密なルールと運営が不可欠と述べているようにも聞こえるかもしれません。しかし、政治上の思想、政策を同じくするのであれば、政党として統合する方が合理的です。今回は政党どうしの合併案件ではありません。別個の政党として活動を続けることが前提であり、それなりの柔軟さも持ち合わせる必要があります。

 会派は国会法、議院規則(衆参)に定義規定はなく、慣例上の制度です。「議院で活動するさいの2名以上の議員グループ」と考えていただいて構いません。政党が別であれば会派も別になるのが通例ですが(自民・公明は統一会派ではありません)、今回のような例もあります。

 国会と自治体議会とでニュアンスの違いはありますが、今回のような場合の会派は、飲食店等の「相席」のイメージに近いと考えてもいいと思います。「食事」という目的のためには他の客と相席になったほうが、そのぶん早く着席してサービスを受けることができます。相対している客とは、テーブル上のソース、箸、ウォーターボトルなどを共用する関係に立つ以外は合わせる必要はありません。あえて配慮するとすれば、目の前で喫煙してよいかどうかの事前了解を得ることです。何より気を付けなければならないのは、相席関係にある他の客の所作、態度に不用意に口を挟むと、喧嘩の端緒になってしまうということです。これが政治家どうしだと、なおさらです。

 不明な点が多いので、現時点ではこの程度の指摘しかできません。前回、「改憲勢力」のテーマでも使った表現ですが、会派の統一も決して、単純な「足し算の和」にはなりません。その減殺効果をいかに小さくするか、相当な慎重さが求められます。

南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。主な著書に『図解 超早わかり18歳成人と法律』、『図解 超早わかり国民投票法入門』(以上、C&R研究所)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社)、『9条改正論でいま考えておくべきこと(別冊法学セミナー No.255)』(共著、日本評論社)、『広告が憲法を殺す日』(共著、集英社新書)、『18歳成人社会ハンドブック』(共著、明石書店)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会)、などがある。(2019年1月現在)