第151回:雲隠れ議員は一日も早く、政倫審への出席・説明を(南部義典)

顔見せだけで、説明なし

 前回のコラム「雲隠れ議員が3名もいる異常さ」が掲載されたのは先月15日のことでしたが、ちょうどその日の夜、河井案里参院議員、夫の克行衆院議員がそれぞれの議員宿舎で、メディア向けのぶら下がり会見を開きました。年末年始も行方知らずだった雲隠れ夫婦の突然の会見(顔出し)に、私も思わずビックリしました。当日の午前、広島地検が地元事務所に捜索に入り、5日後には通常国会の召集を控える中、ついにこれ以上の逃げ隠れを許さない状況に至り、「年貢の納め時」が近づいたかな、とも感じました。

 会見に臨んだ記者の方にうかがったところ、会見案内のファクスが自民党内の記者クラブに送られてきたのは21時30分頃で、克行議員が22時00分から、案里議員が22時30分からとそれぞれ記されており、各社の対応は大変だったようです(某NHKは21時台のニュースで扱えなかったとのこと)。案内自体に時間的余裕がほとんどない上、時間帯が時間帯なだけに、明らかに常識外れであり、抗議の意思を直接ぶつける記者さんもいたと聞きました。しかも、ぶら下がり方式で短時間に済ませてしまうというやり方自体、メディア軽視であり、その裏側にいるすべての国民を馬鹿にしていると批判されても仕方ありません。前回も書きましたが、あの豊田真由子元議員でさえ、約1か月間の雲隠れの後、地元選挙区内のホテル宴会場を借りて(形を一応整えて)、謝罪会見を開いています。
 会見の様子は、ニュースでご覧になったと思います。単なる顔見せにすぎず、事実をまったく語らないものでした。「刑事訴追のおそれがあるので、話せない」「捜査には全面協力する」の一点張りで、「どうか、私をそっとしておいて下さい」という空気だけを漂わせていました。

 河井夫妻とほぼ時期を同じくして雲隠れを続けていた菅原一秀衆院議員も、通常国会の召集日当日、開会式の直前に院内でぶら下がり会見を開いただけで、具体的な説明は避け、のうのうと現場復帰を果たしています。何とも、追いつめられるギリギリまで粘った挙句、ぶら下がり会見で政治的立場をリセットするというのも「河井ルール」と呼ぶべきなのでしょうか。
 最近では新型コロナウィルスのニュースに隠れてしまって、3名の様子が余計に分からなくなっていますが、自民党会派に所属したまま、相変わらず国民への説明から逃げています。

自らの申し出で、政倫審の出席を

 この3名は一日も早く、衆参の政治倫理審査会(政倫審)に出席し、審査を受けるべきです。
 ところで政倫審とは、どんな組織か。衆院側の説明になりますが、〈政治倫理の確立のため、議員が「行為規範」その他の法令の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認めるかどうかについて審査し、適当な勧告を行う機関です。〉とあります。ここでいう審査とは、「疑惑などに関して与野党議員の質疑を受けること」と、簡単に理解していただいて構いません。
 また、政倫審の特長ともいえる点ですが、審査会の議決(過半数の賛成)によって招致される場合だけでなく、(疑惑を持たれている)議員が自ら申し出ることによって、審査を始めることができます。過去、政倫審で審査が行われた議員(すべて衆院。参院は例なし)はすべて、自らの申し出によるものです(表)。良い意味でも悪い意味でも、錚々たる顔ぶれが審査を受けています。いずれも倫理的な問題にとどまらず、犯罪、法令違反に該当する事実が問題となっています。

(表)衆院政倫審で行われた審査

年月日 議員氏名 案件
1 1996.09.25 加藤 紘一 前事務所代表の巨額脱税事件
2 1998.06.05 山崎  拓 泉井純一・石油卸商からの巨額献金疑惑
3 2001.02.26  額賀福志郎 KSDからの1,500万円ヤミ献金疑惑
4 2002.07.24 田中真紀子 公設秘書給与の政治活動費流用疑惑
5 2003.05.21 松浪健四郎 暴力団関係会社からの資金援助、指名手配中の組員の捜査状況に関する大阪府警への照会
6 2004.05.31 原田 義昭 ボストン・タフツ大学政治外交大学院卒業との学歴詐称疑惑
7 2004.11.30 橋本龍太郎 日歯連からの1億円ヤミ献金受領事件
8 2006.02.23 伊藤 公介 耐震偽装問題に関する口利き疑惑

〔出典:筆者作成〕

いまだに「疑惑の駆け込み寺」か?

 政倫審はかつて、「与党議員が疑惑追及から逃れるための駆け込み寺」と呼ばれたことがあります。疑惑を受けた議員が取りあえず政倫審に足を運んで、弁明することで「一応の禊を済ませたことにする」(追及逃れの口実にする)ための場にすぎない、と批判的な見方をされていたのです。確かに、過去例はすべて自民党(与党)議員で、そのような「駆け込み寺」的思惑をもって審査が行われた面も否定できません。審査会における発言に虚偽の内容があっても偽証罪の責を負うことはないので(この点、議院証言法に基づく証人喚問と違います)、出席それ自体のハードルは高くないのです。
 しかし、私が名指しする3名は、何の弁明も行っていません。どこかに駆け込むことさえ考えていないのです。私は特に、「あの3名だって政倫審に出席しなかったのだから、私だって出ていく必要はない」と、悪しき先例となり、今後に影響することを恐れます。参院政倫審は実績ゼロのまま、衆院政倫審はこの14年間、一度も開かれていない状況にありますが、あの3名が出席しなければ、なおさら誰も出ていかないでしょう(何もしなくとも、政倫審を開くハードルを上げてしまいます)。そうなれば、政倫審の存在意義が本当に無くなってしまいます。
 開催実績が乏しいために、メディアも最近、政倫審のことを言わなくなっているようですが、まさに、あの3名のための組織といっても過言ではありません。何のため、誰のための政倫審か。当事者はもちろん、党派を超えて対応を考えるべきではないでしょうか。

“疑惑のIR”起訴された秋元司衆院議員

 東京地検は3日、秋元司衆院議員を収賄罪で追起訴しました。このまま被告人勾留が続くので、政倫審の出席どころか、議員活動そのものが行えません。「議員辞職」を本人自身が判断するか、自民党が判断して本人に促すか、現時点では分かりませんが、早期の政治的ケジメが必要です。判断に迷って時間だけが過ぎるようであれば、野党側から辞職勧告決議案を突き付けるべきだと思います。
 政治とカネの問題は、綿々と続いています。とにかく、同時期にこれだけの問題議員がいることに驚くばかりです。事案は個々に異なり、それらに対処するだけで、相当な政治的労力を使います。放っておけば、議会制民主主義が綻んでいきます。本当に困った状況であり、怒りが再び込み上げてきます。

南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。主な著書に『図解 超早わかり18歳成人と法律』、『図解 超早わかり国民投票法入門』(以上、C&R研究所)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社)、『9条改正論でいま考えておくべきこと(別冊法学セミナー No.255)』(共著、日本評論社)、『広告が憲法を殺す日』(共著、集英社新書)、『18歳成人社会ハンドブック』(共著、明石書店)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会)、などがある。(2019年1月現在)