新型コロナウイルスへの感染を調べるPCR検査を巡っては、テレビのニュース、ワイドショーなどでも、日々、様々な見解が示されている。専門家の間でも「どんどん検査をするべきだ」という意見と「やみくもに検査をしても、現場が混乱し非効率なだけである。ピンポイントに絞るべきだ」という意見とに大きく二分されているようだ。
国や東京都の方針は、これまでは「ピンポイント」だったのが、徐々には検査数を増やしてきている。それでも世界の他の国々と比べると、検査数は圧倒的に少ない。この少ない検査数を不安視する意見も多く、これでは実態がわからないのではないか、とする専門家の意見などもよく耳にするようになった。
そんなところに「誰でも いつでも 何度でも」PCR検査を受けられる仕組み、「世田谷モデル」を自治体独自で作ろうとする世田谷区の取り組みが、今大きなニュースになっている。はたして、一体どういうものなのか。
この取り組みについて、マガ9でもおなじみの鈴木耕氏が、インターネットTV「デモクラシータイムス」の番組でいち早く保坂展人世田谷区長に聞いている。約40分にわたるインタビューの要旨と印象に残ったことは、概ね次のようなことである。
- 現在、区で1日300件程度行っているPCR検査数をひと桁上げる。来月には3000件くらいに増やすくらいのスピード感を目指す。
- 一度に大量の検査を自動でできる機器を導入する。また、一人を1検体として調べるのではなく、たとえば5人まとめて1検体として調べる「プーリング方式」で、検査効率を高める。
- 「社会的検査」の必要性がある。医療従事者、介護関係者、学校関係者など「人との接触が避けられない重要な仕事」は、定期的に無料で受けられるようにする。
- 検査を徹底的にやり、陽性者は隔離、治療をする。そしてまた検査をやる。そこへ人員、予算をかけること、これこそが住民の安心感にもつながる最大の経済対策だ。
- 財源については、国や都にも働きかける。ふるさと納税制度の一部や区民からの寄付も当てる。
- 国や東京都が手を差し伸べてくれるのを、じっと待っているだけでははじまらない。住民の命を守るのが、自治体の責務である。ただ世田谷区だけがやって、収束する問題というわけではないので、周辺自治体、もちろん東京から日本全体に広がっていかなければならない。
- こうしたことに取り組んだ背景には、このところ陽性者数が増加していること、区民からの心配の声などがある。またニューヨークで、検査拡大によって、無症状の陽性者をすくい上げ、早めに隔離することで、感染者数を激少させて来た実例をみて、やらなければと考えた。
- まず問題提起をすることで、世論を喚起し、東京都や国をも動かしていこうという姿勢を見せることが大事である。
世田谷モデルについてのニュースの反響は、私のまわりでも大きく、ぜひうちの自治体でもやってほしいという声も多く聞く。
ちなみに私の住む地域で最近聞いた話だと、「木曜日夜に発熱した場合、金曜日に医師会経由で病院を紹介してもらい、月曜日にPCR検査、結果が出るのは中二日だけど、病院が休診日だったりすると本人への連絡は翌日になるので、発熱してから検査結果を受け取れるまで1週間を要することもある」とのこと。陰性だったら病院からの連絡は来ないこともあるそう。その間、家族はハラハラしながら、家庭内で隔離を行って過ごしているというし、さらに症状が悪くなっていく場合もないとは言えない。やはりあまりにも時間がかかりすぎではないか……。
その一方で、ある夫婦からは、「検査数を増やす必要性はあまり感じていない」という話も聞いた。年代によっても考え方に差があるようだ。ともあれ今の状況が感染拡大の第二波なのか、気温が下がる秋から冬にかけて、さらに大きな波がくるのか。それもはっきりしない中、今の行き当たりばったり的なコロナ対応では、やはり不安が大きい。
保坂区長のインタビューを聞いていて「困っていれば、国がいつかは手をさしのべてくれるだろうと、その手をじっと待っているだけでは、どうにもなりませんよ。市民一人ひとりが、連携して声をあげていかないと」と言っているようにも聞こえた。世田谷の独自検査方針が、国や都の方針を変えることになるのか。自治体の長から国への働きかけについて、注目したい。
(水島さつき)
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●インターネットTV「デモクラシータイムス」
「緊急インタビュー:政治が動く時だ PCR検査『世田谷モデル』 世田谷区長保坂展人さんにきく20200802」