『友達やめた。』(今村彩子監督/2020年日本)

 人と人は、どうやったら分かり合えるのか。そもそも「分かり合う」ことなんてできるのか。友達になる、友達でいるってどういうことなのか──。そんな、答えの出そうにない難問に正面から取り組んだドキュメンタリーである。

 本作の監督である「あやちゃん」こと今村彩子さんは、生まれながらに耳が聞こえない。そんな彼女が数年前、知り合った年上の友人が「まあちゃん」。発達障害の一つであるアスペルガー症候群を抱え、人とうまく付き合うことができない。聴覚過敏のため、声を出して話すよりも、大学で学んだ手話で会話するほうが楽だという。
 「マイノリティ」という共通項もあって、すぐに仲良くなった2人。けれど距離が近づくにつれて、あやちゃんはまあちゃんの言動に違和感を覚え始める。人の飲み物やお菓子に勝手に手を付ける、食事の前に「いただきます」を言わない、ちょっとしたことで叩いてくる……。
 まあちゃんにはささいなこと、けれどあやちゃんには気になってしょうがないこと。この「ずれ」は、「アスペルガーだから」なのか、「まあちゃんだから」なのか。それとも、自分の感じ方の問題なのか。普段はろうという「マイノリティ」である自分が、まあちゃんの前では「マジョリティ」の立場になってしまう不思議さ。悩むあやちゃんは、葛藤する自分自身、そしてまあちゃんにカメラを向けることを決める……。
 仲良くごはんを食べる日もあれば、相手の言動が気になってもやもや考え込む日もある。意外な相手の思いに触れてびっくりしたり、疲れ果てて距離を置きたくなったり。日記の交換やLINEもまじえたやりとりが積み重なるたび、二人の距離は近づいたり遠ざかったり、ゆらゆら揺れる。ときにはぶつかり、傷つけ合いながらも、相手との関係をあきらめようとしない二人の姿は、痛々しいくらいにまっすぐで愛おしい。
 前作『Start Line』もそうだったけれど、今村監督は自分の「キレイ」ではない部分──迷いも嘘も弱さも、すべてを取り繕うことなくカメラの前にさらけ出す。見ているこちらもドキドキしながら、目が離せなくなって見入ってしまうのは、だからなのだろう。電話が苦手なまあちゃんに代わり、あやちゃんが(電話リレーサービスというサポートを利用して)旅行の手配をする場面には、自分ががちがちに常識(聞こえない人=サポートされる側、という)に囚われていることに、改めて気づかされたりもした。
 「自分と違う」人と関わることのめんどくささ、楽しさ、面白さ、ややこしさ。そのすべてが、この映画にはたっぷりと詰まっている。終盤、二人がうまくやっていくために考え抜いた「ルール」(もちろん、それがゴールでは全然ないのだけれど)がなんだか微笑ましくて、温かい気持ちになった。

(西村リユ)

『友達やめた。』(今村彩子監督/2020年日本)

新宿K’sシネマなどで劇場公開中、ほか全国順次
10月31日(土)までネット配信実施中 
※公式サイトhttp://studioaya-movie.com/tomoyame/index.html