2024年10月22日
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マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024年米国/アレックス・ガーランド監督)

タイトルのとおり、アメリカの内戦を描いた映画である。それがなぜ勃発したのかの説明はない。アメリカ合衆国に反旗を翻したカリフォルニア州とテキサス州によるWF(Western Forces=西部同盟)が、ワシントンD.C.に向って進撃している状況が…

『ガザからの報告』(2024年日本/土井敏邦監督)

「メディアでは毎日、『ガザ地区で〇〇〇人が亡くなった。すでに戦闘開始からの死者は〇万人に上る』という報じられ方がされています。それは単なるマスの数字であって、そこから人の顔は見えません。ガザに暮らす人々はどんな暮らしをしている…

『パンとサーカス』(島田雅彦著/講談社)

昨年12月、沖縄駐留米空軍の兵長が16歳未満の少女を自宅に連れ込み性的暴行を行って、今年3月に起訴された。わが国の外務省は同月に把握していたにもかかわらず、起訴後3カ月間公表しなかった。今月18日夜、神奈川県横須賀市で米海軍横須賀基地…

『ガザの美容室』(2015年パレスチナ・フランス・カタール/タルザン&アラブ・ナサール監督)

パレスチナ自治区ガザにある美容室。クリスティンが結婚式を前にしたサルマのヘアセットをしている。その隣ではエスカティールが、自らの離婚調整を依頼している弁護士に携帯で逢瀬の話をしつつ、クリスティンのアシスタントであるウィダドにワ…

『マミー』(2024年日本/二村真弘監督)

「和歌山毒物カレー事件」は、冤罪かもしれない。そんな話を初めて聞いたのは、故・鈴木邦男さんからだったような気がする。1998年の夏、夏祭りで提供されたカレーに混入していた猛毒のヒ素で、67人がヒ素中毒を発症、4人が命を落とした「和歌山…

『医学生 ガザへ行く』(2021年スペイン/チアラ・アヴェザニ、マッテオ・デルボ監督)

原題は「Erasmus in Gaza」。エラスムスって人名じゃなかったっけと思って調べると、EUの交換留学制度「エラスムス・プログラム」のことだった。EU域内の留学制度として長い歴史をもち、映画の中の会話でも「エラスムス」がそのまま「留学」の意味...

『オリバー・ストーン オン プーチン』(2017年米国/オリバー・ストーン監督)

2015年7月から2017年2月までの間、複数回にわたって行った映画監督・オリバー・ストーンによるロシア大統領ウラジーミル・プーチンへのロングインタビューである。ストーンはベトナム戦争における前線の米軍兵士たちの間の格差、人種差別などに…

『正義の行方』(2024年日本/木寺一孝監督)

1992年2月、福岡県飯塚市で2人の小学生が行方不明になり、翌日に遺体で発見されるという痛ましい事件が起こった。「犯人」として逮捕されたのは、近所に住む50代の男性。彼は潔白を主張し続けるが、2006年に最高裁で死刑が確定、わずか2年後…

『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』(岡真理著/大和書房)

昨年10月7日、イスラム組織ハマスによる越境攻撃に端を発したイスラエルによるガザへの報復攻撃が始まって半年。ガザの死者は3万3千人を超え、破壊された住宅数は7万棟以上、地区面積の62%に達した。保育器が使えず息絶えようとしている新生児…

『ロシアン・スナイパー』(2015年ロシア・ウクライナ/セルゲイ・モクリツキー監督)

2022年の第19回本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬著/早川書房)を読んだ時の驚きはいまも覚えている。40代の日本人作家が若いロシア人女性の狙撃手の行動と内面、そしてその背景にある戦争やソ連社会まで描く筆致に舌を…