2021年7月25日
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マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

『不安ウーマン~医療的ケア児のシングルマザー 明日を生きていくために~』(福満美穂子著/ぶどう社)

寝たきりでてんかん発作や重度の知的障がいがある娘を、著者はピョンちゃんと呼ぶ。かつての人気漫画『ど根性ガエル』の主人公ひろしのTシャツに張り付いたカエルのピョン吉になぞらえた。2人は一心同体という思いを込めた呼び名で、前著『重症...

『へんしんっ!』(2020年日本/石田智哉監督)

見ていて、いろんなもの──常識とか、自分のものの見方とか──を揺さぶられる映画だ。  監督の石田智哉さんは大学で映像制作を学び、現在は大学院生。映画の前半では、電動車椅子ユーザーである石田さんが、全盲の俳優、ろう者のパフォーマーな...

『海辺の彼女たち』(2020年日本=ベトナム/藤元明緒監督)

もう十数年前の話だが、仕事で南アジアの小さな村に滞在したことがある。小学生くらいの男の子が、「親戚のおじさんが日本で働いたことがあるよ。僕も大きくなったら日本に働きに行くつもりなんだ」と人懐こく話しかけてきた。笑顔の彼と話してい…

『すばらしき世界』(2021年日本/西川美和監督)

西川美和監督の作品は、普段は眠っている、あるいは蓋をしている感情を静かに呼び覚ます。私たちは心を揺さぶられ、困惑する。それらはときに自分では見たくないものだったりするからだ。本作品の主人公は殺人の罪を犯し、刑務所を満期釈放となっ…

『相撲道ーサムライを継ぐ者たちー』(2019年日本/坂田栄治監督)

オリンピックへの興味が失せ始めたのは1996年のアトランタ大会からだ。1896年の第1回アテネ大会から100周年に当たる記念大会は当然、ギリシャの首都で開催されると思っていた。アトランタ・オリンピック最大のスポンサーであるコカ・コーラ社が…

『はじめてのおもてなし』(2016年ドイツ/ サイモン・バーホーベン監督)

ナイジェリアの内戦を逃れて、ドイツの難民収容施設に入った青年ディアロを、ミュンヘンに邸宅を構えるハートマン家が受け入れる。それを決めたのは元教師で、生きがいをなくしつつあったアンゲリカだ。ある日の夕食の場で、彼女は困っている人を...

『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著/集英社新書)

「あなたたちが科学に耳を傾けないのは、これまでの暮らし方を続けられる解決策しか興味がないからです。そんな答えはもうありません。あなたたち大人が、まだ間に合うときに行動しなかったからです」本書では、たったひとりで気候変動問題に対…

『友達やめた。』(今村彩子監督/2020年日本)

人と人は、どうやったら分かり合えるのか。そもそも「分かり合う」ことなんてできるのか。友達になる、友達でいるってどういうことなのか──。そんな、答えの出そうにない難問に正面から取り組ん…

『おかえり ただいま』(2020年日本/齊藤潤一監督)

2007年8月。名古屋市内で、深夜に帰宅途中の女性が何者かに拉致・殺害され、遺体が山中に遺棄されるという事件が起こった。まもなく逮捕された加害者は、「闇サイト」(違法行為の勧誘を目的とす…

『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』(金森修著/ちくまプリマー新書)

今から100年あまり前のアメリカで、“チフスのメアリー”と称されたひとりの女性の人生を追った本書は、初版2006年、10代の若者向けに書かれた地味な新書だった。それが急遽注目を浴びるようにな…