2024年3月19日
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マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

『国葬の日』(2023年日本/大島新監督)

本作の劇場公開からタイムラグを経て、権力の中枢にいる者たちが裏金づくりと脱税という国民の財産をネコババしていた(彼ら、彼女らの常とう句「国民の命と財産を守る」が質の悪い冗談に聞こえる)事実が明らかになった現在に見ると、その茶番性…

『1%の風景』(2023年日本/吉田夕日監督)

いま日本では、お産の99%が病院の産婦人科など医療施設で行われているという。本作は、それ以外の「1%」──小さな助産所や自宅での出産の様子にカメラを向けたドキュメンタリーだ。これが初の映画作品となる監督自身も、2人目の子どもを助産…

『月』(2023年日本/石井裕也監督)

現在公開中の映画『月』を見た。原作は、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件を題材にした辺見庸の小説。「どうだった?」と聞かれてなんと答えたらいいのだろう。う〜んとうなって「怖かった。でも覚悟を持ってみてほしい」というほかない(…

『ジェンダー目線の広告観察』(小林美香著/現代書館)

昨今、首都圏の電車に乗ると乗客のほぼ全員がスマホを見ている。かつてはあらゆる空間を埋め尽くしていた車内広告など誰も見ていない。それでもしつこく語りかけてくるのは転職サイト、婚活サイト、進学塾など人生の岐路に迷う人々へのささやき。…

『スポーツの価値』(山口香著/集英社新書)

中学の野球部に入って野球が嫌いになった。部員は全員五分刈り以下の坊主頭で、上下関係は絶対。学 校内外を問わず、先輩を目にすれば遠くからでも大声で挨拶し(先輩は返さない)、練習でたるんでいるとみなされると、ロッカーで「ケツバット」(…

『バービー』(2023年米国/グレタ・ガーウィグ監督)

いきなりの『2001年宇宙の旅』パロディに笑いつつ、これから何が始まるのか身構えていると、マーゴット・ロビー扮するバービー人形が登場。「スレオタイプなバービー」を自任する彼女はピンクのバービーランドで、他のバービーたちとともに男性…

『ドンバス』(2018年ドイツ・ウクライナ・フランス・オランダ・ルーマニア・ポーランド/セルゲイ・ロズニツァ監督)

いきなりフェイクニュースである。老若男女の役者たちがトレーラーハウスのなかで、それなりのメークを施しながら、一般の通行人やテレビ局取材班などに扮して待機し、制作者の合図とともに戦火の街へ飛び出す。やがて爆音。自作自演によるバス車…

『怪物』(2023年日本/是枝裕和監督)

カンヌ国際映画祭脚本賞、クィア・パルム賞を受賞するなど、公開前から話題を呼んだ是枝裕和監督の映画『怪物』を観た。舞台は大きな湖のある郊外の町。小学校5年生のクラスで起きた、いじめを思わせる子どもどうしのけんかとそれを巡る大人たち...

『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』(2013年日本/中村真夕監督)

2011年の福島第一原発事故の後、全域が避難指示区域に指定された福島県・富岡町。誰もいなくなった町の一角で一人、取り残された動物たちの世話をしながら暮らす男性──「ナオト」の姿を、13年からの8年間にわたって追い続けたドキュメンタリー…

『ただいま、つなかん』(2023年日本/風間研一監督)

笑いの力には3つがある(以下は安積中著『人生を切り開く 笑いのチカラ』幻冬舎による)。笑う力、笑われる力、笑わせる力だ。笑いには免疫作用があって、それがクスクス笑いでも、NK(ナチュラルキラー)細胞を活発化させ、身体のなかで常に生じ…