マガ9レビュー
『暴力をめぐる対話』(2020年フランス/ ダヴィッド・デュフレーヌ監督)
マガジン9編集部 -
フランス共和国保安機動隊がデモ参加者に容赦なく警棒を振り下ろす、その場に居合わせた無抵抗の人間にも馬乗りになってねじ伏せる、自動車のガラス窓を割ってドアを開け、なかにいる人間を強引に引きずり出す、ゴム弾の銃口を至近距離で躊躇なく…
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『アムステルダム』(2022年米国/デヴィッド・O・ラッセル監督)
マガジン9編集部 -
主人公はユダヤ系のモグリの医者バート、出自のわからぬ自由奔放なヴァレリー、そして黒人の弁護士ハロルド。3人の出会いは第一次世界大戦の前線だった。ユダヤ系として疎外感を味わっていたバートと、戦場でも味方から黒人差別を受けるハロルド…
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『KLEO/クレオ』(2022年ドイツ・NETFLIX/監督 ヴィヴィアヌ・アンデレゲン、ヤノ・ベン・チャーバーネ)
マガジン9編集部 -
「あいつら、尋問する前にシャワーを浴びせるんだよ、どうしてかわかるかい?」。1989年冬。ベルリンの壁が崩壊して間もないころ、東ベルリンのカフェで知り合った男性から聞かれた。彼はかつて民主化運動に携わったかどでシュタージ(東ドイツ国…
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『興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産』(姜尚中・玄武岩著/講談社学術文庫)
マガジン9編集部 -
シリーズ「興亡の世界史」の第5巻として本書が刊行されたのは2010年5月(文庫化は2016年6月)。いまあらためて読み返すと、本書のもつアクチュアリティはより高まっていることを実感する。大日本帝国が中国東北の地につくった満州国の中枢で経…
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『失われた時の中で』(2022年日本/坂田雅子監督)
マガジン9編集部 -
愛らしい双子の男の子。一人は好奇心一杯に目を輝かせて笑っているが、もう一人の表情はうつろ。そして二人の下半身はひとつにつながっている。ベトナムの結合双生児ベトちゃんドクちゃんの姿を新聞、テレビで目にしたときの衝撃は今でも忘れら…
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『フィンランド 幸せのメソッド』(堀内都喜子著/集英社新書)
マガジン9編集部 -
のっけから、2019年12月に第46代フィンランド首相に世界最年少で選出された女性のサンナ・マリンのプロフィールに唸ってしまう。首都ヘルシンキ生まれ。幼いころに両親が離婚後、サンナをひきとった母親はやがて同性パートナーと一緒になり、地...
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『PLAN75』(2022年日本・フランス・フィリピン・カタール/早川千絵監督)
マガジン9編集部 -
近未来の姥捨てを描いた衝撃作『PLAN75』の公開2日目、映画館に入って驚いた。ほぼ満席、観客の8割は私と同年代の中高年女性。そういえば数年前に見た吉永小百合と二宮和也主演の映画『母と暮せば』の客層もこんなふうだった。あのときは、吉…
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『オフィサー・アンド・スパイ』(2019年フランス・イタリア/ロマン・ポランスキー監督)
マガジン9編集部 -
舞台は19世紀末のパリ。冒頭、フランス陸軍大学校の校庭に、ユダヤ人のアルフレッド・ドレフュス大尉は両脇を兵士に挟まれて引き出される。罪状は敵対するドイツへの機密情報の漏洩。すなわちスパイ行為だ。その場で軍籍を剝奪されたドレフュスは…
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『メルケル 世界一の宰相』(カティ・マートン著/倉田幸信・森嶋マリ訳/文藝春秋)
マガジン9編集部 -
アンゲラ・メルケルは1990年3月、政治家を志し、東ドイツにおける最初で最後の自由選挙に臨んだ。そして勝利。それまで国内の民主化運動とは距離を置き、政治に影響を受けないという理由から理系を専攻していた彼女の「機を見るに敏」な転身だっ…
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『なぜ戦争はよくないか』(アリス・ウォーカー 文/ステファーノ・ヴィタール 絵/長田弘 訳/偕成社)
マガジン9編集部 -
アメリカで黒人女性として初のピューリッツァー賞を受賞した著者が、米国が同時多発テロの報復としてアフガニスタン、そしてイラクに対して行ったすさまじい攻撃に対する衝撃から紡ぎ出したメッセージを、画家が豊かな想像力をもって具象化した。…