米国、欧州、アジアから、海外在住ライターが各国のコロナ事情を発信(中村)

 昨日、東京、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が出されました。期間は一カ月後の5月6日までとされています。

 7都府県の知事がとれる措置は「要請・指示」であって罰則はありませんが、どのように生活が変わっていくのか不安を感じている人は多いと思います。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要があることに異論はありませんが、生活保障の問題、ネットカフェなどが閉店になることで路上に出ざるを得ない人が出て来るのではないかなど、さまざまな問題が懸念されます。政府にしっかりした説明と迅速な支援を求める声は切実なのにもかかわらず、市民の実感と政府の姿勢は、まったくと言っていいほどかみ合っていません。

 それにしても何もかもが初めてのことばかり。緊急事態宣言は、罰則を伴うような海外の「ロックダウン」とは異なるものですが、そもそも最近よく聞くようになったロックダウン自体も、具体的にはどんな状況なのかイメージ出来ていない人がほとんどではないでしょうか。いま厳しい外出制限が行われている国々では、どのように人々は生活しているのでしょうか? SNSで海外の映像や海外在住者のブログなどがよくシェアされている状況にも、「世界の状況を知って日本の参考にしたい」という思いを感じます。

 そこで、今回紹介したいのは、さまざまな国で活躍する海外在住ライターが有志で運営するウェブ言論メディア「SpeakUp Overseas」です。このサイトでは、政治経済、難民やエネルギー問題などをテーマに情報発信をしています。この3月からは連載シリーズとして「世界コロナ日誌」が始まりました。

 これまで、アメリカ、英国、ドイツ、フランス、デンマークなどで暮らすライター、ジャーナリスト、アーティストなどさまざまな人達が、新型コロナウイルスに関連した暮らしへの影響、政府の対応などについてコラムを書いています。今後も、欧州の国々、中国、韓国、ニュージーランド、オーストラリアなどからのコラムが掲載されていく予定だそう。ぜひチェックしてみてほしいと思います。

 SpeakUp Overseasの代表幹事・佐々木田鶴さんが、サイトの紹介と「世界コロナ日誌」を始めた想いを寄せてくださいました。広告主や流行に左右されずに伝えるべきことを発信していきたい――その思いは、私たちマガジン9とも共通するものです。

(中村)

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SpeakUp Overseasは、
在外ライターの自由な発信プラットフォーム

 日本の外に住む私達在外ライターは、原則として、今、外出もままならない不自由なロックダウン下での日々を過ごしている。いつか経験したあの感覚――そう、欧州同時多発テロの凍り付くような不安の日々。あの時、何かを伝えたい、発信しなければとの強い思いからスタートしたのが、同人サイトSpeakUp Overseasだ。

 PVのヒット数や広告主に気を使わなくても、目当ての既存媒体が買ってくれやすい流行りのテーマでなくても、発信したいことがある。誰も書かせてくれないなら、自ら発信プラットフォームを作ってしまうしかないと。

 人生のいつかの時点で、海外に生きることを選んだ私達在外ライターは、言葉や文化の軋轢にもまれながら、生まれ育った国とは異なる社会のあり方を常に見つめながら生きている。こうした視点を持って、リーマン・ショックの時も、3・11の時も、私達は立ち止まり、考え、そして、発信し続けて来た。今、新型コロナ危機の渦中でも、各地に散らばるライターが、それぞれの素肌感覚で発信しようと、「世界コロナ日誌」を始動した。

 日本の大手メディアが世界を扱う時、「専門家」と呼ばれる日本の学者さんや駐在員の特派員さんに頼ることが少なくない。現地の声が拾われる時は、アメリカ(ニューヨークやカリフォルニア)、英国、フランス、ドイツと大国に偏りがちで、データ比較や記者会見情報に基づいたレポートが多い。「世界」は大国や大都市だけではないし、数年住んだだけでは現地社会の本音は捉えがたい。現地社会に根差した人脈や分析眼を備えた、私達が発することには意義があるはずだ。

 今、社会が一斉に瞑想に入ったかのような不思議な静寂の中で、コロナ後の世界に思いを馳せる。何を是として生きるかの価値観が大きく変貌するのか、それとも、あっという間に、グローバルな経済至上主義の損得社会に戻ってしまうだけなのか。読んでいただいた方に、思考と洞察の糸口を少しでも提供できたりすれば、ライター冥利に尽きる。

 在外ライターの多くは、通訳やイベント企画などにもかかわる人が多い。執筆機会も減っていて、それでもなんとか食いつながねばならないから、ライターにとっても死活問題になってもいる。そんな中でも、発信し続けることに意味があると信じる仲間が、世界中から素肌感覚の原稿を寄せている。こうした知や情報は、劣化せず普遍の価値を持つと信じたい。

プロフィール)
代表幹事:佐々木田鶴(ささき・たづ)
上智大学卒。米国およびベルギーにてMBA取得。EU(欧州連合)主要機関が集まるベルギー・ブリュッセルをベースに、欧州の政治・社会事情(環境、医療、教育、福祉など)を中心に発信。環境ビジネスの他、共同通信47ニュース、ハフィントンポスト、EU Mag(駐日EU代表部公式webmagazine)の他、ビジネス・業界誌などに執筆。

●ウェブ言論メディア「SpeakUp Overseas」※連載シリーズ「世界コロナ日誌」

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