半藤一利さんに学んだこと(塚田ひさこ)

 半藤一利さんの訃報に接し、2007年にマガジン9の前身の「マガジン9条」でインタビューさせていただいた時のことを思い出しています。
 まだ「マガジン9条」が始まって2年くらいしか経っていないころ。半藤さんのような著名な方が、まだまだ無名のウェブマガジンのインタビューなど受けてくださるのだろうか、と心配していたのですが、「憲法9条が大切だと考えて発信を続けている」というところに共感してくださったようで、すぐに快諾いただけました。
 インタビューは、半藤さんのご自宅近くの喫茶店で行いました。『昭和史 1926-1945』(平凡社)も愛読していましたし、その著者にお会いするということで私は大変緊張していたわけですが、サンダルばき(下駄だったかな?)にいかにも普段着で、待ち合わせの場所にふらっといらっしゃったその飾らない姿に、こちらの気持ちがほっと緩んだ気がしました。
 お話に入ると、講演会の時と同じように、快活でいて親しみやすい語り口、しかし語られる内容はかなりヘビーなもの。聞き手の私たちがそれにどんどん引き込まれてしまった様子は、インタビューの原稿からも伝わることと思います。
 掲載日付を見ると2007年3月ですから、あれからもう13年にもなるのか…と、改めてこの間起きてきたことを振り返りつつ、半藤さんの言葉をかみしめていました。インタビューでの発言を一部引用します。

半藤 歴史好きで歴史を勉強してきた立場から言うと、時代が転換していくときの動きはよく似ているんですね。何となく昭和8(1933)年から10(1935)年ごろの日本と今の日本はよく似ているのではないかと。(中略)ただ、私は戦前と今起こっていることがいくら現象として似ているとは言っても、まだ70歳以上の爺婆たちが頑張っている間は、そうは簡単に悪くならないだろうと思ってるんだけどね。

編集部 でもそういう方たちが退いてしまったら。

半藤 そのころは、もう私はあの世へ行ってるんで分からないけど(笑)。だけど、今の日本人はもう少し利口なはずだから、昭和8年から10年当時とは違って判断をそんなに誤らないだろうと。それには、あなた方みたいな人たちに頑張ってもらわないとね。

 インタビューを通じて、大切なことをたくさん教えていただきました。そして今、近現代史を学ぶことの必要性を改めて考えています。
 半藤さん、ありがとうございました。

(塚田ひさこ)

半藤さんへのインタビューは下記から読めます。
→半藤一利さんに聞いた(その1) 私の「戦中・終戦直後史」
→半藤一利さんに聞いた(その2) 平和憲法という「国柄」を、もっと大切にしなくてはならない
→半藤一利さんに聞いた(その3) 日本の現在と「戦前」とはとてもよく似ている

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