『へんしんっ!』(2020年日本/石田智哉監督)

 見ていて、いろんなもの──常識とか、自分のものの見方とか──を揺さぶられる映画だ。

 監督の石田智哉さんは大学で映像制作を学び、現在は大学院生。映画の前半では、電動車椅子ユーザーである石田さんが、全盲の俳優、ろう者のパフォーマーなどにインタビューし、「障害」と表現活動について語り合っていく。それもとても興味深いし考えさせられるのだけれど(ちょっとだけ映し出されるそれぞれの表現活動自体も、もっと見てみたいと思ってしまった)、俄然面白くなるのは、カメラが石田さん自身にフォーカスし始めてからだ。
 障害のある人たちとの舞台づくりに取り組む振付家・ダンサー(石田さんが通う大学の特任教授でもある)の砂連尾理(じゃれお・おさむ)さんに誘われ、「自分には一番縁遠いと思っていた」というダンスの舞台に挑むことになる石田さん。舞台のモチーフは、カフカの『変身』。電動車椅子で舞台に登場した石田さんの周りで、他の出演者たちが舞い、演じ、たゆたう、その様子をカメラは追う。
 さらに、周囲に抱えられて車椅子から降り、舞台の上に横たわる石田さん。ここから何が起こるのか、何が生まれるのか。ドキドキしながら画面に見入りつつ、人の視線や手の動きや表情──言語以外の表現の雄弁さに、改めて気づかされた。

 全編「日本語字幕」と「音声ガイド」付きの上映という「オープン上映」も、本作のユニークな試みだ。一般的には、耳の聞こえない人向けに字幕が、目の見えない人向けに音声ガイドが用意されるわけだけれど、本作ではその両方を、見る人すべてが体験することになる。ときには音声ガイドと映画の中の話し声がかぶることもあって、最初はなんとなく落ち着かないのだけれど、見ているうちにそれが当たり前のような感覚になってくるから面白い。同時に、目の見えない人はいつも、こんなふうに映画を「観て」いるのかと、今までにない想像を巡らせもした。

 さまざまな形で人と出会い、触れることで、否応もなく人は影響を受け、変わっていく。映画を通じて「へんしんっ!」するのは、監督自身でありその周りの人たちであり、そして観ている私たちだ。ラスト近く、監督と砂連尾さんをはじめとする登場人物たちがともにつくり上げるパフォーマンスは、多分「希望」以外の何ものでもない。

(西村リユ)