『極上のおひとり死』(松原惇子著/SB新書)

 シングル女性の自分らしい人生とその最期の迎え方を考え、実践することをライフワークとしてきた著者の新作である。
 ひとりとは自由であること――著者は折に触れて語るが、それは寂しさや不安を抱えることでもある。双方を理解した上で、著者はひとりで生きて死ぬことを選択するのだが、他者に対して無関心ということではない。むしろ逆だ。
 Senior、Single、Smileの頭文字をとって名づけられた「SSSネットワーク」は、著者が立ち上げたおひとりさま女性約800人の会員を有する団体であり、このメンバーに対する著者の眼差しはとても優しい。
 前半ではひとりで逝った会員のケースが紹介される。SSSネットワークがつくった共同墓に入ることを申し込んでいたメンバーの方々だ。桂子さん(仮名。以下同)は早期退職して好きな山歩きを楽しんでいたが、正月、部屋で倒れているのを妹に発見された。死因は脳溢血。享年59歳だった。
 1935年生まれの節子さんは戸建てにひとり住まいだったが、80歳を過ぎて身体が弱ってきたことを実感し、サービス付き高齢者向け住宅に入居したところ、その2日後にお風呂場で倒れて亡くなった。
 恭子さんは夫も子どももいるものの、ひとり暮らし。毎日ジムに通い、日帰りバスツアーにも参加する元気な暮らしを送っていた。彼女はある夜、テレビの前に敷いた布団の上で亡くなった。心臓発作だった。享年82歳だった。
 生前から気にかけていた会員の最期を著者は「ひとりで逝った幸せ」と評している。当人がどのように最期を迎えたかをできるかぎり正確に記録するのは、故人の記憶を仲間と共有し、自分らしい人生を全うするとはどういうことかを学ぶためだ。
 後半は実践編である。おひとり死を迎えるための心構え、人に迷惑をかけないで死ぬために今からやっておくべきこと。前者で大切なのは人間関係だ。向こう三軒両隣、さらに裏三軒くらいには「私はひとりなので、異変に気づいたら、訪ねてください。お互いに見守り合いましょう」と伝えておく。趣味、勉強、地域活動、社会活動などのグループに参加し、人との関わりをもっておけば、しばらく姿を現さないと、「最近来ないけれど、どうしたんだろう?」と気にしてくれるだろう。おひとりさまには身内や友だちよりも地域が大切という著者の言葉には実感がこもっている。
 高齢者がひとりで暮らしていくときに大きな壁になるのは身元保証人だ。家を借りる、介護施設や有料老人ホームに入所する、入院する、手術を受けるといったときに必ず聞かれることだが、なかでも入院や手術の際のアドバイスは、「身内はいないで通せ」とシンプル。それでも渋るようなら、札束をちらつかせて押し切れと。
 遺言書の書き方から誰に預ければよいか、死後3日間のうち(遺体が腐乱しないうち)に発見してもらうにはどうしたらいいかも指南する。
 人間、死ぬときはひとり。本書は、女性のおひとり様向けだけでなく、最期を迎えるにはどうすべきかを考える、すべての人に役立つ手引きである。

(芳地隆之)