『山城知佳子 リフレーミング』(東京都写真美術館)

 会場の外は白い。モニターの中の映像では、フェンスの前で女性がソフトクリームを舐めまわしている。自動ドアで会場の中に入ると、暗い。その対比が沖縄の陽射しとガマ(洞窟)の闇を連想させた。

 『山城知佳子 リフレーミング』は、地元沖縄を題材におよそ20年、さまざまな形で創作を続けてきた現代美術家山城知佳子さんのこれまでの作品を再構成した展覧会だ。暗い会場の中のモニターには《BORDER》(2002年)《OKINAWA墓庭クラブ》(2004年)などのビデオ作品が並ぶ。ひと際大きなモニターでは《アーサ女》(2008年)が映し出され、その荒い息が会場内に響く。
 私が彼女を知った最初は、《あなたの声は私の喉を通った》(2009年)だった。沖縄戦の記憶の継承は大きな問題だが、当事者の言葉を自分の声で同じように語ることで、他者の経験を自身で血肉化できるか、その困難さを表現する作品に、強く心を打たれた。以上の作品には山城さん自身が被写体として登場する。
 奥の部屋は比較的新作だ。まず《土の人》(2016年)。三面のプロジェクションに展開される、顔に泥を付け古布をまとった人物のパフォーミングはどこか神々しい。この作品が撮影されたのは、沖縄とともに韓国の済州島という「圧殺される周縁」だ。
 最新作《リフレーミング》(2021年)は、沖縄に戻った印象を受けた。琉球処分によって都を離れた士族と辺野古埋め立てに使われる土砂採掘業者がシンクロし、サンゴや現在の沖縄が交錯する。ループ上映なので端緒と結末が判然とせず、これが寓話性を高める。
 説明的でないがゆえに、さまざまに喚起されるイメージがオーバーフローを起こすほど刺激的だった。ガマから出るとまた白い世界。そこのモニターに映し出されているのは《I like Okinawa Sweet》(2004年)なのだ。フェンスは米軍基地で、ソフトクリームは基地受け入れの代償としての振興策の譬喩だろうか。
 鑑賞後、美術館から恵比寿駅へ向かう途中に沖縄のアイスクリーム「ブルーシール」の店があった。そこで食べたアイスは、やはり美味しかった。

(仲松亨徳)