第153回:台湾の移民労働者デモとインドネシア労働者バンド「Southern Riot」(松本哉)

 また隙を見て台湾に行ってきた。今回は、以前紹介した「NO LIMIT 高円寺番外地」に大量の台湾人たちが参加してくれたので、仕返しに高円寺界隈のバンド、ねたのよいとTHE天国畑JAPONが台湾でライブ企画をやろうという話が急浮上し、その手伝いで同行した。で、そのライブ企画はもちろんまた大混乱で盛り上がりまくって最高だったんだけど、同時期に行われた台湾での移民労働者たちの行動にも参加することになったので、今回はちょっとその辺の話を。

各国共通の移民労働者たちの苦労!

 まずは台湾の移民労働者たちの状況から。これはもうどこの国も似たような状況が起きていて、安い賃金で働かされたり、職場の環境が悪かったりと散々だとのこと。で、いま特に台湾で問題になってるのは手配師、つまり中間斡旋業者たちのピンハネが半端ないこと。しかも政府が管理してるわけではなく民間業者なのでもうやりたい放題で、その上そんな中間業者が台湾と母国の2箇所を経由するので2回ピンハネされ、大変だという。
 で、台湾政府はその状況をほったらかしてる状態なのでピンハネ業者も勢いを増す一方。そして、移民労働者の契約の多くは3年契約で、それが更新されるかどうかは雇い主の気分次第なので、完全に使い捨ての状態。おまけに職場は工場などが多く、事故や怪我なども多発してるけど、労災もヘッタクレもなく自腹で病院行かなきゃいけない目に遭う人も多いとのこと。それでも母国の給料よりはマシだからとみんな台湾にやって来て、苦労しながら働いているという。そして台湾も日本同様に出生率は下がる一方で働き手も減り、しかもみんな過酷な労働をやりたくないもんだから、工場などで働く移民労働者はここ数年でもどんどん増えてる。
 いや、本当にどこへ行っても同じで、日本でも聞くような話をたくさん知った。しかも、彼らは選挙権がないからなかなかその不満も政策に反映されず、逆に政治家たちも票にならない人たちへの対策は後回しになる。どれをとっても日本と同じだし、これどこでも抱えてる問題なんだろうね〜。ヒドい話だ〜。

移民労働者デモの前夜祭ライブイベントが勃発!

 さあ、そんなわけで、台湾では外国人労働者の問題を扱ってるTIWAという団体が主催するデモが2年に1回行われており、今年がその年で、12月10日に開催されるとのこと。じゃあ参加するしかないと、せっかくのタイミングなので一味に加わってきた。
 ちなみに海外から台湾に来てる出稼ぎ労働者は、国別に言うとインドネシアが最多とのことで、大量のインドネシアの若者たちが台湾で働いている。そういえばインドネシアといえばパンクがすごく盛んなところで、アンダーグラウンドな音楽シーンがすごく大きい国だ。そんなやつらは出稼ぎに出てるからといって音楽をやめるわけがない。案の定、台湾に来てるインドネシア移民労働者バンドもたくさんあり、台湾パンクのやつらはすでにいろいろ仲良くやってるという。確かに台湾の友達たちから「東南アジアからの出稼ぎ労働者が急増してて、そいつらの動きがすごく面白いんだよ〜」って話は最近よく聞いていた。そんな訳で、台湾の若手パンクグループ「吸膠少年」とインドネシア出身バンドたちの共催で、デモの前日12月9日に景気付けのためのライブ企画が行われるという。すごい! こういうのすごく大事。
 そして、当日現れたのは「Southern Riot 南部鬧事團」というバンド。彼らは別に元々バンドを組んでてみんなで台湾に来たってわけじゃなく、台湾に来てから労働者たちでメンバーが集まって結成されたバンド。なので、メンバーもインドネシアのそれぞれ別の街から来ている。外国人労働者、出稼ぎ労働者、移民労働者…、なんていう字面や概念だけで考えてると、なんだかいろんな苦労を抱えながら大変な思いしてるイメージが思い浮かぶかもしれない。もちろんそんな苦労はたくさんあるんだけど、イベントの当日やってきた奴らは「いえーい!」と缶ビール飲みながらやって来たすごくふざけた感じのやつらでいきなり親近感が湧く。インドネシアバンドが出るからと、遊びに来たインドネシアの若い奴らもゾロゾロと現れ始める。しかも、みんな台湾の南部を中心に地方都市の工場なんかで働いてる人たちが多いから、電車やバスに乗って遠くからわざわざ遊びに来たという。おおー、なんだか盛り上がって来た〜。
 ただ、盛り上がりすぎも問題で、彼らのライブは毎回狂乱の盛り上がりらしく、前回はモッシュで弾き飛ばされた一人が頭を打って脳震盪でひっくり返ってしまい、ライブを中断してバンドメンバーや観客みんなが固唾を飲んで心配そうに見守るなか手当をして、約1時間後に辛うじて息を吹き返して「おお、よかった〜」となった瞬間、みんなで喜んで狂乱のライブがすぐ再開して、また懲りもせずに全員もみくちゃのモッシュでバカ騒ぎが続いたという。ううーん、大バカでどうしようもないけど、こいつら最高だ〜! そんな事件の次のライブなので、リハーサル中にも音チェックで演奏しながらボーカルの兄ちゃんがふざけて歌詞を変えて、インドネシア語で「安全第一、安全第一!」と叫びまくって歌ったりしてた。リハーサル中にもかかわらず、すでに会場にいる客たちも「安全第一!」と拳を挙げてふざけて騒いでる。これはいきなり先行きが不安。安全守りそうな気配ゼロ。

Southern Riotのライブ。安全第一感ゼロ

 このイベントでは台湾のバンドがいくつか出て、そのインドネシアのSouthern Riotに加え、日本からのバンドもなんとか頼んで入れてもらい、そして台湾人はもちろん台北に住む外国人たちも遊びに来るので、いろんな奴らが入り乱れるカオスなイベントになってくる。まず前半は台湾のバンドがいくつか出て早くも盛り上がり、後半にSouthern Riotが登場すると待ってましたといきなりカオス状態に。ちなみにこのバンド、ライブがただでさえ盛り上がる上に、移民労働者のパンク小僧たちがたくさん遊びに来るので、普段の過酷な労働やムカつく雇用主への鬱憤が爆発するのでモッシュにしろダイブにしろ、とりあえずメチャクチャなことになる。もはや安全第一どこ吹く風で、南部暴徒(Southern Riot)のみなさんご機嫌に騒ぎまくってる。いや〜、景気いいな〜! しかもみんな異常に楽しそう! でも、歌ってる歌詞はもちろん移民労働の問題が主要テーマで、「中間中抜き業者のボッタクリふざけんな!」みたいなことを叫んでる。みんな同じ境遇なだけに、そりゃ盛り上がるしかないよな〜。

「労働者はロボットじゃねえ。労働者も人間だ」という中国語とインドネシア語の横断幕と、後ろにはパレスチナへの連帯の旗

 そして、ライブも大盛況のまま終わり、みんなゾロゾロと会場を後にするも、どいつもこいつも帰る気配なく、みんな金もないこともあってごく自然な流れでコンビニで酒を買って路上で飲み始める。まあ、これも各国共通のライブハウス周辺の景色なので別に驚くことではないんだけど、台湾にいる移民労働者と一緒に遊んで仲良くなったのは自分としては初めてだったので、なんだかすごく新鮮。しかもどいつもこいつも、みんな無駄にニコニコニコニコしてるし、やたらいい奴らばっかりで面白い。向こうからしても、我々のような日本のマヌケたちとの遭遇はそんなに多くはないので、「おまえら日本か!」なんて面白がってやたら話しかけてきて仲良くなる。いや〜、いいね!
 そんな調子でダラダラと飲み始め、深夜になってもみんなまだ帰らないどころか飲みまくってる。明日は一世一代の巨大デモだけど、みんな本当に明日行くのか!? で、深夜3時ごろになってようやく解散し、みんな方々に散っていく。自分も飲みすぎてヘトヘトなので泊まるところに行って(日本チームは台北の知り合いの劇団の稽古場に泊めてもらってた)、ようやく寝ようかと布団に入った時、台湾のバカな友達から緊急連絡が来て「大変だ! インドネシアのやつら寝るかと思ったらまたコンビニでウイスキー1本買ってきて飲み始めた! あいつら寝る気配がねえ!」という。バカか〜! これは巻き込まれたら大変だと眠りにつくが、30分に一回ぐらいずつ「まだ飲んでる!」「お前も今から来い」などと続報が入り、挙げ句の果てには明け方5時ぐらいに「いまみんなで新曲を作り始めた!」とかいって動画が送られてくる。コラー、オマエら早く寝ろ〜!!!

明日は決戦のデモだけど帰る気配のない人々

2年に一度の移民労働者の乱ついに発生!

 さて肝心のデモ当日。この日は2年に一度の大きなデモで、移民労働者の境遇の改善や権利を訴える重要な日だ。集合時間は昼の12時半で、デモ出発は1時。
 前日は飲み過ぎで、もうヘロヘロの状態。「うわ〜、デモなんて無理だ〜」と思うが、いや待て、移民労働者たちは普段から大変な状況で、今日はそれを訴える大事なデモだ。昨日はその前夜祭とばかりに当のインドネシアのやつらと一緒に遊びつつ今日に備えて共に戦った。それを日本から来たやつらだけ寝坊してデモ参加せず「疲れてゴロゴロしてました」じゃあ面目丸潰れで彼らに合わす顔がない! ダメだダメだ、今日も彼らと共にデモに参加するんだ! ってことで、頑張って起きて日本チーム数人でゾンビの行列のように地下鉄に乗って現地に向かう。

12/10に発生したデモのポスター。「政府はしっかりやれ、中間業者クソ食らえ」のスローガン

 こっちもヘトヘトなので行動が遅く、出発時間ギリギリの1時過ぎぐらいに辛うじて到着。すでに大勢の参加者が車道を埋め尽くして集まってる。なんとか間に合った〜、と思ったけど一向に出発する気配がない。いろんな人が演説したり叫んだりしてなんだかダラダラやってる。参加者たちの雰囲気もまちまちで、真面目な活動家風の人たちから、ふらっと遊びに来たような若者たち、いろんな被り物やオブジェ持ってきてる人たちなど、いろんな感じが混ざってて、歌ったり楽器演奏してたり、祭りみたいな雰囲気ですごくいい感じ。ちなみに警備の警察はやる気ゼロ。日本みたいに「出発時間だから早く!」みたいなプレッシャー一切なしで、「早くおわんねえかなー、帰りてー」って雰囲気が顔に出てる。

何気に着ていた「過労死」Tシャツがその場に合いすぎて、日本から来てる移民労働者と間違えられて拍手喝采を浴びるTHE天国畑JAPONのキリさん

 あ、余談だけど、何年か前に台湾のデモに参加した時、友達がバンドを乗せたサウンドカーの4tぐらいのトラックの運転してた。すると友達が「お前も運転する?」って言ってきたので「運転したい!」と、交代。で、運転してると運転席側についてる同じくやる気ゼロ警官が「次の交差点は右折ね〜」とか「そこの車は避けて左に寄って」とかいろいろこっちに言ってくる。中国語なので、聞き取れないこともたまにあって「えっ、なんですか?」なんて聞き直してると、警官も「お前台湾人じゃないのか。どっから来たの?」なんて聞いてくる。日本人だというと「おお、日本人か! 東京? 俺行ったことあるよ〜」とかどうでもいい東京タワーの話とかしてくる。この時も祭りみたいなデモだったので、こっちはすでにビール飲んでて顔は真っ赤だし、そもそも片手に台湾ビールの缶持って運転してる。それどころか台湾でのトラックの免許すらない。警官のおじちゃんもそんなのお構いなしで、「どうだ? 日本のトラックと台湾のトラックは違うか?」みたいな話や、旅行とか家族の話ばっかりしてくる。いや〜、適当でいいなー。日本の警察も見習ってほしい。
 さて、話はそれた。そんないい加減な雰囲気なので1時の出発予定も大幅に遅れ、2時ぐらいになってようやく出発。それにしても本当に自由な雰囲気のデモ。テーマがテーマなので、インドネシアの他、フィリピン、ネパール、ベトナム、タイなどいろんな国出身の人たちが歩いており、その国によってまた独自のノリで、歌ってたり叫んでたり、それぞれのやり方で移民労働の問題について訴えてた。いや〜、自分は当事者ではないけれど、国を跨いだ瞬間に移民労働者となるので、いつそれが自分の問題になるかわからない。それに、そもそも本来はどこのどんな労働者だってみんな同じ境遇で働くことができるべきだから、働く人たちに分け隔てはない。頑張って早く起きて、一緒に参加できてよかったー。

台湾のデモは車道全部を使って歩くので開放感がいい。っていうか世界ではこれが普通で、やたら規制される日本のデモが異常

 …で、ちょっと待てよ。さっきからインドネシアの例の南の暴徒の人たちの姿が見えない。っていうかメンバーだけじゃなく昨日モッシュとかダイブしまくってた客で来て大暴れしてたやつらもいない。人っ子ひとりいない。あれ?
 まあ気のせいかとそのまま歩いて、2時間弱のデモが終わり、終着地の労働部(労働省)前に到着。するとその労働部前の車道を占拠する感じでステージが組まれており、そのまま集会に突入。司会の人が「みなさんお疲れさま〜」なんてみんなを迎えて、そのままいろんな団体の人や各国の人が挨拶をし始める。
 車道にステージ組むなんてすごいな〜、なんて感心しながらステージを眺めていて、ふとステージの右脇の歩道の方に視線を移すと、なんと、あのインドネシアのバンドのやつらが地面で車座になって酒飲んでる! おまけに昨晩しきりに連絡してきた台湾の友達も一緒に飲んでる! コラー!! 何やってんだお前ら〜!!! それどころか、こっちに気づくと「やっと来た。お〜い、こっちこっち」と手を振って来て、満面の笑みでビールを勧めてくる。ステージ上では全共闘みたいなおじちゃんおばちゃんなんかが鬼のアジテーションしてるってのに、そのすぐ脇でマヌケたちが揃いも揃ってニッコリとこっちを見てくる。どうなってんだこりゃー!
 やられた! こいつらデモ参加してねえ!!

コラー! デモをサボってこんなところで油売ってたのか〜!笑

 聞けば、あとでステージで1〜2曲演奏することになってるから直接こっちに来た、とのこと。なるほど、なんだか言い訳くさいけどそれじゃ仕方ないか。それにしてもずいぶん前から飲んでた気配じゃねえか、とか思いつつも台湾のバカ友達が「いいからお前らも飲めよ」とニッコリ笑ってビールを渡してくるけど、おまえは演奏しないんだからデモ出られたじゃねえか、とも思ったりして、でももっとよく考えたら日本では完全に立場逆でこっちも同じことやりそうだからまあいいか。世の中理屈で解決することばかりじゃない。こりゃ飲むしかない。
 で、いよいよ集会の終盤、出ましたSouthern Riotのライブ。みんなヨロヨロとステージに上がったが、メンバーが一人足りない。あっ、あの「安全第一!」とか叫び回って絶好調でメチャクチャ暴れてたボーカルがいない! 聞いたら、昨日のライブ中に思いっきりコケて腰を痛めて寝込んでるから今日は来ないとのこと。こら〜、何やってんだー!!! 前夜祭で力尽きてどうする〜!!!笑
 仕方なく、他のメンバーが「俺歌うの苦手なんだよなー」とか言いながらもなんとかライブをこなし、移民労働問題についても挨拶して拍手喝采を浴び、無事ステージとこの日のデモも終了〜。いや〜、よかったよかった。

二日酔いのなか最後の力を振り絞って歌う暴徒のみなさん。一人は腰痛で自宅待機

嬉しすぎて帰らない人々

 このデモがあった日は日曜日。そのインドネシアのみんなは普段は工場労働者なので、明日は仕事に行かないといけない。しかも、職場は台湾南部などの地方都市が多く、バンドのメンバーも遊びに来たやつらもみんなバラバラのところに帰っていかねばならない。イベントを企画した台湾チームや、我々日本チームも名残惜しいので、最後に一杯飲もうということに(またか!)。地方都市に行くので、ほとんどの人は台北駅からバスや電車で帰って行くとのことで、「よし、じゃあ台北駅で飲みながらみんなを見送ろう!」ということに。
 で、行ってみるとこの台北駅がまたすごいことになっていた。各国から来てる移民労働者たちの謎の溜まり場のような状態になっていて、いろんな国の人たちがウロウロしながらみんなでごはん食べたりおしゃべりしたりして、完全に無国籍地帯と化した盛り上がりを見せている。いやー、なんだかすごく良い雰囲気だ! おかげで各国の料理などの屋台もあったりしてこれは最高。どうやら普段は働いてる移民労働者たちが週末だけここに集い、ゆっくりしたり情報交換したり遊んだりしているとのこと。そういえば、香港でもこんな光景が繰り広げられるエリアがあったのを思いだした。
 まさに格好の場所。さっそく我々も台湾人、日本人、インドネシア人混ざって台北駅の広場の一角を陣取り、ビールや食べ物などを買ってきて、最後の飲み会が始まる。イベント企画や出演なども全部終わったってことで、みんなリラックスした感じ。台湾での移民の人たちの仕事の話を教えてもらったり、インドネシアの音楽や変な店の情報を聞いたり、逆に東京の地下文化についていろいろ紹介してみたり、あとは定番で悪口やバカな話を教えあったりと、有意義な時間を過ごした。ただ、みんな口々に「いや〜、明日仕事か〜!」と苦虫を噛み潰したような顔をしながら帰りたくなさそうにしている。いろいろ聞くと、やはり同じ価値観を持つ台湾人の音楽の仲間や大バカな友達なんかと一緒に遊ぶのはすごく楽しいみたいで、しかも今回はなんだか知らないけど現れた日本人たちまでいて、数日間一緒に遊んでた。彼らも「台湾や日本のみんなとこうやって一緒に遊んだりバカな話してて本当に楽しかった! いやー、明日仕事行きたくないな〜」という。こちらもまさか台湾でインドネシア人たちと遊ぶとは思ってなかったから、すごく楽しかったので「まだ帰らなくていいよ〜」なんて無責任に引き留めたりしてみる。

台北駅前にて。完全に根を張って帰る気配皆無のインドネシアチームと、「この人たちいつ帰るんだろう」と不安がる台湾チーム

 しかし、最後に残った十数人のインドネシアチームも、遠方の人から順番に「じゃあ行くよ!」と、一人また一人と去っていく。いや、名残惜しい。ただ、残り7〜8人まで減ってきたあたりでどうも人数が減らなくなってきた。彼らは相変わらず「帰りたくねえー」なんて言ってる。日本チーム、台湾チームともにヘトヘトだけど、最後まで付き合うと決めてる以上は全員を送るまでは最後までいる。ただ、ちょっと心配になってきて「終電大丈夫?」などと聞いてみるんだけど、大丈夫大丈夫という。さらにしばらくして痺れを切らし「ところで、何時のチケット取ったの?」とさりげなく聞いてみると「いやー、実はまだ取ってない」という! コラー、帰る気ないじゃねえか〜! 聞けばみんなこっそり職場に連絡して明日の休みを取ったりしたという。おいおいおい、ほんとに帰らないのか!! じゃ、さっきから長々とみんなで台北駅でたむろしてたのはなんだったんだ〜!! 今日はゆっくり寝られると思ったら、また一日飲み会が増えた〜! でも、これは日本チーム、台湾チーム含めよほど楽しかったってことなので、もう覚悟を決めるしかない。よっしゃ、飲みに行くぞー、と、友達がやってる飲み屋にみんなで向かう。いやー、恐るべしアジア地下文化交流地獄! でも、こうやってみんなが仲間になっていって、それがまたあらぬ方向にどんどん飛び火して行く感じ、やっぱりいいね〜。

 さあ、そんなわけで、日本のバンドの台湾ツアーに始まり、台湾&インドネシアパンクたちのイベントに合流し、労働者のデモに連帯して、そのまま多国籍交流をしまくって帰るという、まさに寝るヒマもないような台湾作戦。いや〜、各国の大バカたちがアンダーグラウンドで仲良くなりまくって気付いた時には地球上に大バカたちが溢れかえってる事態をもくろむ、世界マヌケ革命は着実に進んでる! いやいや、末恐ろしいにも程がある!

 おまけ。そんな交流の勢いで、そのSouthern Riotのメンバーが来年5月には東京にやって来るということに! なんてノリがいい奴らなんだ! 出ました〜、このエンドレスな感じ! よーし、乗りかかった船。こうなったら付き合うよ〜。諸君、覚悟するしかない!!

Southern Riotの曲がこちらから聴けます!

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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。