昨年1月、病気のため亡くなられた作家の鈴木邦男さん。「マガジン9」では、インタビューや対談、イベントなどにしばしば登場いただいていたほか、2008年から10年以上にわたり、コラム「鈴木邦男の愛国問答」を連載してくださっていました。
その「愛国問答」がこのたび、本になりました。タイトルもずばり『鈴木邦男の愛国問答』(集英社新書)。「愛国心」「憲法」「表現の自由」など、テーマ別に選りすぐった50本のコラムを、ほぼ連載当時のまま掲載しています。鈴木さん独特の文体もそのまま、帯に思想家の内田樹さんが「鈴木さんの声が聴こえてくるようだ」との言葉を寄せてくださっていますが、文字を追っていると本当に、あの飄々とした声が聞こえてきそうな気がしてくるのでした。
先日、元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹氏がX(ツイッター)で、〈戦争指導こそが政治家にとって最も重要な能力〉だと述べたというニュースを見て、鈴木さんが映像作家・想田和弘さんとの対談(今回の本には収録されていないのですが)で〈政治家の一番大きな役割は「戦争をしないこと」〉だと述べておられたのを思い出しました。本のページを繰りながら、もうお話をお聞きできないこと、原稿を読めないことが改めて淋しく、頼りない思いでいっぱいですが、せめて遺された言葉を伝え、つないでいきたいと思います。
また、昨年末から今年初めにかけては、「マガ9から生まれた本」が他にも発売されていますので、あわせてご案内を。
まず、『家なき人のとなりで見る社会』(岩波書店)。小林美穂子さんによる、同名タイトルの連載コラムがもとになった一冊です。「つくろい東京ファンド」スタッフとして、「家なき人」のそばで奔走してきた小林さんが、コロナ禍の始まりから3年あまりの社会の変化を綴っています。
そしてもう一冊、『戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録』(集英社新書)。こちらは、三上智恵さんのコラム「三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記」から生まれた本です。基地問題に翻弄される沖縄を取材し、現地の人たちの声を伝え続けてきた三上さん。同タイトルの映画『戦雲』も、3月から全国公開されます。
どれも、一人でも多くの方のところに届いてほしい本です。ぜひ、お手に取ってみてください。
(マガジン9編集部)
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