第714回:桐生市長が謝罪、そして高裁では怒涛の勝訴ラッシュ!! 〜今、生活保護を巡って起きていること〜(雨宮処凛)

 「生活保護制度の崇高な理念を身勝手な解釈で捻じ曲げ、組織風土の中に形成された悪しき慣行や極めてずさんな事務処理の数々について、福祉事務所という他部局にはない組織構造とはいえ、問題発覚まで一切気づけなかった私どもの責任は重く、心から恥じております。
 制度利用者並びに相談者の皆様に対して、堪え難い苦痛や不利益を与えてしまったこと、また、桐生市民の誇りを著しく傷つけてしまったことに対しまして、心よりお詫び申し上げます」

 この言葉は、3月28日、群馬県桐生市長のコメントとして発表されたものの一部である。

 群馬県桐生市で、生活保護を巡ってトンデモないことが起きていると発覚したのは一昨年11月。

 最初に報道されたのは、利用者が受け取る保護費が「1日1000円」などの形で「日割り支給」されているというあり得ない実態だった。

 以降、市の福祉事務所に生活保護利用者の印鑑1900本以上が保管され、本人の了解がないまま架空の受領印が押されていたことや、この10年で生活保護利用世帯が半減していること(全国的に見れば横ばいなのに)、10万人を超える人口がいるのに生活保護を利用する母子世帯はわずか2世帯だけなど、続々と「いったい何が起きてる?」的事態が発覚。

 それだけではない。

 福祉事務所の職員が、申請に来た人を怒鳴る、暴言を浴びせる、果ては帽子をかぶっている人に「態度が悪い」と申請させないなど、無法地帯のようになっているとの証言も次々と寄せられたのだ。

 そんな状況を受け、貧困問題に取り組む人々で「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が結成されたのは昨年。

 そうして昨年4月には調査団が桐生市を訪れ、現地での相談会や集会を開催。県庁や市への要望書提出などをしている。もちろん私も調査団の一員として参加。詳しい顛末はこの連載の674回で書いたので読んでほしい。

 さて、そんな桐生市ではこの事態を受けて第三者委員会が作られ検証が続けられていたのだが、このたび、提言などを盛り込んだ報告書がまとめられたのである。

 3月28日、桐生市の荒木恵司市長に提出された報告書では、分割支給などについて組織的な不正が認定され、印鑑の保管や架空の受領印については「規範意識が崩壊していた」と指摘。

 また、この10年間で保護世帯が半減したこと、母子世帯が著しく少ないことについては「保護申請権の侵害が疑われる事情が存在したことが減少の一つの原因であったと指摘せざるを得ない」とされていた。

 一方、再発防止策として、職員の言動を記録できるよう、窓口相談の録音・録画や、外部からの監視体制などの導入などが盛り込まれた。

 市長は「利用者らに耐え難い苦痛や不利益を与えたことなどをおわびします」と謝罪。

 これを受け、市長は6ヶ月にわたって給与の30%を、副市長はやはり6ヶ月にわたり給与の20%を減額する方針を発表。関係職員を処分する方針も示したという。

 私も一昨年から追い続けてきた桐生市問題。マガジン9の執筆陣である小林美穂子さんも詳しく追い、つい最近、それをまとめた『桐生市事件』が出版されたところだが、ここに来て報告書がまとめられ、市長が謝罪したことに、まずはほっと胸を撫で下ろした。

 もちろん、まだまだこれで終わりではないが(何しろ10年間にわたって利用者が半減してきたのだから、そこへの対処も必要だ)、とにかく、不正が正される第一歩までこぎつけたことの意義は大きい。

 さて、そんな生活保護を巡っては、このところ嬉しいニュースが続いている。

 この連載でも、2013年からの生活保護引き下げを違法として全国で「いのちのとりで裁判」が行われていることを書いてきたが、それが現在、怒涛の快進撃を続けているのだ。

 桐生市の報告書が出た同日の3月28日には、東京高裁でさいたま訴訟が勝訴。その前日には東京高裁で東京の訴訟が勝訴と、2日連続の東京高裁での勝利となった。

 また、18日には札幌高裁で逆転勝訴。13日には大阪高裁で逆転勝訴。

 これまで地裁レベルでは19の勝訴を勝ち取っているが、高裁レベルでは6件の勝訴。

 まとめると、地裁19勝11敗、高裁6勝4敗だ。これは、これはイケるのではないか??

 ということで、舞台はとうとう最高裁へ。上告審の弁論期日が5月27日に指定されたのだ。

 これを前に、4月3日12時から参議院議員会館の講堂で集会が開催される。

 地裁・高裁で訴えが続々と認められる中、今こそ心をひとつにして最高裁に向かおうという「決起集会」だ。

 各地の弁護士さんや原告、支援者たちによる報告やスピーチが聞けるので、ぜひ、参加してほしい(私は司会をつとめる)。詳しくはこちらで。

 ということで、10年近くにわたって続いてきた裁判が、今、大きな山場を迎えている。

 しかも私は、舞台裏で地道に闘いを支えてきた人たちを多く知っている。それだけに、なんだか感無量だ。

 ああ、早くバキバキに勝訴して、みんなで大宴会とかやりたいものである。

 まだまだ安心はできないけれど、この動き、見守っていてほしい。

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雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。