『森永卓郎の戦争と平和講座』発刊に寄せて(塚田ひさこ)

 昨年1月に逝去された経済アナリストの森永卓郎さん。“モリタク”の愛称で親しまれ、さまざまなメディアで忖度なしの鋭い発信をされてきました。マガジン9での18年にわたる森永さんの連載「森永卓郎の戦争と平和講座」から、いまあらためて読んでいただきたい38タイトルを選んだ新書が、1月17日に発売になります。連載時の担当スタッフであり、現在は区議会議員として活動する塚田ひさこさんに思い出を寄せてもらいました。

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 森永卓郎さんは、2005年に「マガジン9」が創刊された際の発起人のお一人であり、スタート当初から、月に一度の連載コラムをご執筆いただいていました。私は2005年より、森永さんの担当編集窓口を務めてきました。

 森永さんは常に、わたしたち庶民のくらしが、平和で自由で楽しいものでなければならない、そのために「経済学」はあるのだということをぶれることなく語り続けていました。本書『森永卓郎の戦争と平和講座』も、その延長線上にあります。戦争や国家、政治経済の話でありながら、最終的に問いかけられているのは、いつも「私たちは、どう生きるのか」という一点でした。

 また、森永さんは「ワーカホリック」を自認されていましたが、同時に、コツコツとまじめに働く人たちへの応援団、という気持ちを強く持っている方でもありました。その姿勢は、原稿の行間にも、講演やイベントでの言葉の端々にも、表れていました。

 これまで、連載コラムのほか、対談3本(雨宮処凛さん、堤未果さん、井上智洋さん)、「マガ9学校」(単独と斎藤貴男さんとの対談)2回など、さまざまな企画をお願いしてきました。

 原稿のやりとりは主にメールでしたが、リアルイベントの際にモリタクさんにお会いすることもあり、そのときの印象は、誰もが口をそろえて話すように、「まったく表裏がなく、誰に対してもフラットで気さく。こちら(編集者のわたし)の要領を得ないような話や問いかけに対しても、たしなめたり怒ったり、疑問を呈したりすることなく、瞬時にこちらの意図の要点を理解し、答えを返してくれる」
というものでした。

 テレビやラジオなどでは、独特のユーモアで自分をおとしめながら、人にばかにされるような展開になることも多かったようですが、原稿だけでなくそうした横顔を見るにつけ、飛び抜けた頭の良さをモリタクさんには感じてもいました。

 これまでさまざまな企画についてご相談をしてきましたが、いつも「マガ9の企画なら(平和と自由のためなら)」と、講師出演料なども破格の値段で快諾してくれたのも、本当にありがたいことでした。また、こちらの原稿依頼が遅くなっても、翌日には原稿が仕上がって送られてきて、驚いたことも一度や二度ではありません。

 コラムの依頼をして、断られたことがないのがモリタクさんでしたが、唯一、断られたのが、2023年12月のことでした。
「大変な病気になったので、これ以上は書けない」
というものでした。

 (こんにちは。大変申し訳ないのですが
どうしても残された時間で書かなければならない書籍があって
時間を取ることが、もうこれ以上できません。
宜しくお願い致します。)

 それ以降、コラムのお願いはできませんでした。しかし、次々と書き下ろし新作の出版や、ラジオ出演、イベント出演などを精力的に続けている姿を拝見していたので、「モリタクさんのことだから、がんも乗り越えていくのかな。そろそろマガ9コラムの執筆再開のお願いメールをしてみよう」と思っていた矢先の、突然の訃報でした。愕然とした、という言葉しかありません。

 今、いたるところで、モリタクさんが遺してくれたものの大きさを感じています。森永さんは、原稿の中でも、またイベントや講演会などでも、日本社会や政治経済の最悪な状況についてデータを示しながら、「こんな社会にして、ふざけんじゃねーよ」
と、絶望的な未来予想をします。

 そんな状況を突きつけられ、「じゃあ、いったいわたしたち、庶民はどうすればいいの?」という気持ちになるのですが、すると、かならず最後には、

「みなさん、アーティストになりましょう」
 
とおっしゃるのです。

 これは、

「搾取される社会の仕組みの奴隷になるのは、やめましょう。そして、ギスギスする暮らしではなく、楽しく、自分自身が主役の人生を生きましょう」
 
 という、一人ひとりの生き方をまるごと肯定するエールでした。

 本書『森永卓郎の戦争と平和講座』にも、そんなモリタクさんの愛あふれるメッセージが、随所にちりばめられています。

 まだまだお聞きしたいこと、教えていただきたいことがあります。本当に残念でなりません。しかし、長年、執筆を続けてくださったことへの感謝とともに、この本を、困難な今を生きる多くの方に手に取っていただけたらと、心から願っています。

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