『女性の休日』(2024年アイスランド・アメリカ/パメラ・ホーガン監督)

 しばしば「世界で一番女性が生きやすい国」といわれるアイスランド。国会議員の半数近くは女性、2018年には世界で初めて「性別による賃金格差を禁止する」法律が施行され、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」では16年にわたって連続1位を占めている。
 そんな「男女平等の国」が生まれるきっかけの一つになったといわれるのが、本作のタイトルになっている「女性の休日」だ。1975年10月24日、権利の向上を求めて立ち上がったアイスランドの女性たちが、家庭の外でも内でもすべての労働を放棄して「休日」にすることで、女性の社会や経済に対する貢献度を可視化しよう、と呼びかけた。これに国じゅうの女性の90%が呼応して「休日」に参加、国を揺るがす一大ムーブメントになったのだ。
 映画は、この「運命の1日」が実現するまでのストーリーを、参加した女性たちのインタビューとアニメーション、そして当時の記録映像によって描き出していく。
 この「女性の休日」より前、アイスランドはジェンダー平等においては、ヨーロッパの中でむしろ「遅れている」国だったという。「女性は家庭の中にいて、ひたすら夫に尽くすべき」といった性別役割分業意識も根強かった。
 〈弁護士になりたかったけれど、周りからは「どうせ結婚するんだから」と言われた〉
 〈自分が仕事を教えた10以上も年下の男性社員が、あっというまに上司になっていく〉
 〈男性たちの政治談義に加わろうとしたら、私が口を開くたびに無視された〉
 かつての時代を振り返って女性たちが語るエピソードは、ほんのちょっと前の(もしかしたら今の)日本でもありそうなものばかりだ。
 そんな状況の中、国連が1975年を「国際女性年」と定めたことを機に、女性たちは立ち上がる。インターネットもスマホもない時代、情報の伝達手段はラジオや電話や手紙、あとは実際に顔を合わせて話すこと。国内各地を訪ね歩き、粘り強い話し合いを重ねて、女性たちは着実に連帯を広げていった。
 話し合いの中で、当初出たアイデアは「ストライキをやろう」。しかし、これに一部の保守派の女性たちが強く反発した。話し合いが紛糾するかと思われたとき、一人の女性が「じゃあ、『ストライキ』じゃなくて『休日』にしたらどう?」と言い出す。「ストライキ」にこだわっていた女性たちも最終的には歩み寄り、「女性の休日」を呼びかけることが決まった(このプロセスも、現代の私たちに大きな学びを与えてくれている気がする)。
 当日、首都レイキャビクの広場には2万5000人が集まった(それ以外にも、各地で小さな集会が開かれたという)。そこで撮影された貴重な記録映像には、年格好も雰囲気もさまざまな大勢の女性たちが、みな実に伸び伸びとした表情で、とびきり楽しそうに笑い、語り合う様子が収められている。彼女たちが「休んだ」ことで、初めて家事を自分でやったり、子連れで仕事に行かざるを得なくなったりと、ふだん女性たちにいかに支えられているかを、身をもって知ることになった男性たちが大勢いたのだ。
 もちろん、その1日ですべてが変わったわけではない。けれど、この「休日」は、たしかにアイスランドにおけるさまざまな変化の始まりになった。わずか5年後、1980年には世界でも初めての女性大統領が誕生。政治や経済の場で、急速に女性が存在感を増していくことになる。
 その事実にも力づけられるけれど、一番印象的だったのは、インタビューに答えて当時を振り返る参加者の女性たちが、みなとても楽しそうだったこと。生き生きした表情で、ときにいたずらっぽく笑いながら思い出を語る。一人ひとりのその姿がなんとも魅力的で小気味よくて、もしあの「休日」がなかったら、この人たちは今、こんな晴れやかな表情で笑っていただろうか? と考えずにはいられなかった。

 さて、昨年10月の日本公開日からは少し時間が経ってしまったこの映画を改めて紹介しようと思ったのは、3月8日の国際女性デーを前に、各地でアンコール上映が相次いでいるから。少し待てば大半の映画が配信で見られる昨今だけれど、これはぜひ、映画館でたくさんの人と一緒に見てほしい(私が見た映画館では、終映後に客席から拍手が沸き起こっていた)。
 また3月6日〜8日にかけては、日本版「女性の休日」全国一斉アクションも呼びかけられているので、こちらもぜひ。

(西村リユ)

『女性の休日』(2024年アイスランド・アメリカ/パメラ・ホーガン監督)
全国公開中
https://kinologue.com/wdayoff/

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