2025年3月30日
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マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

『働くことの小さな革命 ルポ 日本の「社会的連帯経済」』(工藤律子著/集英社新書)

以前、なかなか就職が決まらず就活に疲れた大学生から「なんのために働くんでしょうか?」と聞かれたことがある。なんて答えたものか? 一瞬考えあぐねた。この新書の著者、ジャーナリストの工藤律子が紹介するのは、「社会的連帯経済」(Social …

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022年米国/マリア・シュラーダー監督)

年明けから大きなニュースになっている、タレント・中居正広氏の「女性トラブル」。週刊誌報道に端を発した芸能スキャンダルは、フジテレビのコンプライアンス問題へと発展し、同社は今や存亡の危機に立たされている。にもかかわらず事件の真相…

『杳かなる(はるかなる)』(2024年日本/宍戸大裕監督)

「能力や効率や有用性のものさしで人のいのちを選別して、『尊厳ある安楽な死』を賛美し推奨することが、いつのまにか私たちの社会の『やり方』として定着し前提とされようとしている気がしてなりません」。全身の筋力が徐々に失われていく神経難…

『生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ』(戸谷洋志著/講談社現代新書)

日本では子どもに「人に迷惑をかけないように」と教えるけれど、インドでは「誰しも人に迷惑をかけないと生きられないのだから、他の人の迷惑も受け入れるようにしなさい」と教える。本当なのかどうか分からないけれど、どこかで聞いたことのある…

『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著・三浦みどり訳/岩波現代文庫)

2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが1978~2004年という四半世紀以上の年月をかけて書き上げた作品である。第二次世界大戦期の「絶滅戦争」といわれた独ソ戦に従軍した、当時15~30歳だった…

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2019年ポーランド・英国・ウクライナ/アグニェシュカ・ホランド監督)

1932年~1933年にかけてウクライナを襲った大飢饉で数百万の人々が亡くなったとされる「ホロドモール」を描いた作品である。主人公のガレス・ジョーンズは実在の人物だ。英国の元首相であるロイド・ジョージの外交顧問を務めていたジョーンズ…

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024年米国/アレックス・ガーランド監督)

タイトルのとおり、アメリカの内戦を描いた映画である。それがなぜ勃発したのかの説明はない。アメリカ合衆国に反旗を翻したカリフォルニア州とテキサス州によるWF(Western Forces=西部同盟)が、ワシントンD.C.に向って進撃している状況が…

『ガザからの報告』(2024年日本/土井敏邦監督)

「メディアでは毎日、『ガザ地区で〇〇〇人が亡くなった。すでに戦闘開始からの死者は〇万人に上る』という報じられ方がされています。それは単なるマスの数字であって、そこから人の顔は見えません。ガザに暮らす人々はどんな暮らしをしている…

『パンとサーカス』(島田雅彦著/講談社)

昨年12月、沖縄駐留米空軍の兵長が16歳未満の少女を自宅に連れ込み性的暴行を行って、今年3月に起訴された。わが国の外務省は同月に把握していたにもかかわらず、起訴後3カ月間公表しなかった。今月18日夜、神奈川県横須賀市で米海軍横須賀基地…

『ガザの美容室』(2015年パレスチナ・フランス・カタール/タルザン&アラブ・ナサール監督)

パレスチナ自治区ガザにある美容室。クリスティンが結婚式を前にしたサルマのヘアセットをしている。その隣ではエスカティールが、自らの離婚調整を依頼している弁護士に携帯で逢瀬の話をしつつ、クリスティンのアシスタントであるウィダドにワ…