国会が始まって改憲論議が本格化してきた。憲法9条の2項は残して3項に自衛隊の存在を明記するという安倍加憲の奇策は、野党のみならず与党側からも疑問視されていて、その矛盾は明らかになりつつある。だが、安倍総理は強気だ。
「自衛隊の存在を書き加えるだけ。なにも変わりません。震災や災害時での自衛隊の活躍は皆さんありがたいと思っているでしょう。それに北朝鮮だって中国だっていつ攻めてくるか分からない。自衛隊は必要でしょう。それが違憲だなんて、あんまりではありませんか」
シラっと、国民に呼びかける。根本的、本質的な論議は脇に置いて、ただひたすら自衛隊という目に見える具体的な存在、それも「災害時に助けてくれる頼もしい存在」というイメージに矮小化して、とにかく国民投票で「マル」をつけさせようと、それだけをもくろんでいるとしか思えない。だからわかりやすい。すっきりしている。「自衛隊、いいんじゃね?」、はい、マルとなりやすい。
安倍改憲がいかに恐ろしいか、本サイトの伊藤真さんの「けんぽう手習い塾」第90回にくわしいが、それをすべての市民が理解して国民投票に臨むのは並大抵のことではない。「自衛隊、いいんじゃね?」くらいシンプルなワンフレーズがほしい。そう思っていたら、この人がふとつぶやいてくれた。ビートたけしである。去る1月27日、TBS系番組「新・情報7daysニュースキャスター」のなかで「陸海空、これをわれわれは保持しない。日本が一番いいね。憲法9条で」と発言したのである。
発言は唐突だった。話題は憲法とは全然関係ない、アメリカでの河川事故についての衝撃映像について。75歳の男性が携帯電話を見ながら操船していて、前方不注意で、ほかのボートに衝突したというニュースで、たけしは「海でも陸でも高齢ドライバーによる事故が相次いで、空でもあったらどうするの」と発言、続いてこう言ったのである。
「陸海空、これをわれわれは保持しない。日本が一番いいね。憲法9条で」
えっ? 何でここで憲法なの? と、ほかの出演者はポカンとして話は続かず、すぐに話題は切り替わってしまった。まったく関係ない話題の中で突然発した一言に、半分寝ながら見ていた私は思わず飛び起きた。えっ? 今、9条いいね、って、言ったよね? 確かに……。自分の耳を疑うほど、あっという間の瞬間芸ではあった。
たけしの真意は分からない。改めて問うても「そんなこと言ったかな、知らねえよ」とか何とか言ってごまかすだろう。正面切っての発言でなく、まったく関係ない文脈の中に紛れ込ませて、ぽろりと言うところがこの人らしい。
「陸海空、それを保持しない。いいんじゃね?」「9条、いいね!」。たけしが期せずして発した、このストレートでまっとうなワンフレーズを胸に刻みたい。
(田端薫)
※参考までに
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180127-00000114-dal-ent(デイリースポーツ)