デモクラシータイムスとマガジン9の共同企画・第2弾は「安倍首相の辺野古フェイク発言とNHK」。新年早々におきた、NHK「日曜討論」での辺野古問題を巡る安倍首相の“フェイク発言”と、それに対するNHKの対応を問題視した鈴木耕さんが、元NHKプロデューサーで武蔵大学教授の永田浩三さん、沖縄に足繁く通って現場取材を続けるジャーナリストの横田一さんとともに、メディアの責任について語り合いました。
フェイク発言をそのまま放送したNHK
まず横田さんから、この件についての経過説明がありました。
1月6日放送されたNHKの番組「日曜討論」で、名護市辺野古の新基地建設を巡って安倍首相が、土砂投入の映像を背景に「土砂を投入していくにあたって、あそこの珊瑚は移している」「絶滅危惧種は砂ごとほかへ移動している」などと発言、環境保全の姿勢をアピールしました。
それに対して沖縄県の玉城知事がツイッターで、さらに地元紙『琉球新報』も事実と異なることを指摘。首相の事実誤認の発言と、それをそのまま放送したNHKに対して批判の声があがりました。
横田さんが8日、NHKに問い合わせたところ「番組内での政治家の発言については答えない。他社の報道についてはコメントしない」という回答が寄せられたといいます。「事実に反する報道をしたことは明らかで、放送法4条に違反している。これを許したら嘘八百の政治的プロパガンダを垂れ流してもいいとなって大問題」と、横田さんは問題の本質を鋭く指摘します。
政治家の発言にハサミは入れない?!
NHKに32年間勤務していた永田さんは「安倍総理の発言はどう考えてもおかしい。その場にいた司会者がなぜ問い返さなかったのか。それがことの始まり」と、新年最初の首相の出演番組でのNHKの失態を苦々しく語ります。
「『日曜討論』のような政治番組では、政治家の発言にむやみに『ハサミを入れない』のが原則。ゆえに事後訂正はむずかしいという悩ましい葛藤があったのではないか。それでも『事実を曲げない』という放送法4条や番組基準の方が優位にあるはず」(永田さん)。
収録から放送まで時間があったにもかかわらず、事実誤認の発言をそのまま流したことの罪は重く、NHKには最低限でも説明責任があると、3人の意見は一致しました。
放送されるまでのパイプが詰まっている
時の政権が記者会見という形で言いたいことを一方的にしゃべり、テレビがそれを垂れ流す。NHKはいつからそうなってしまったのか、という鈴木さんの問いに「小泉政権、海老沢会長、諸星理事のころから」と、永田さんからは実名があがりました。
政権の暴走をチェックする公共放送から、政権の旗振り役を請け負う国営放送への変質は徐々に進み、第2次安倍政権になってからは「露骨により生々しく」(永田さん)、上層部の意向が現場にまで降りてくるようになったと言います。
「政権に都合の悪いニュースを出そうとすると、(小池報道局長の頭文字から)Kアラートが鳴る」と、内部を知る永田さんならではのエピソードも。
「現場の記者は、真実を追究することを使命とする誇り高き集団。彼らによる優れた記事が、上層部の横やりによってお蔵入りしているケースが多々ある。放送に至るまでのパイプが詰まっている」(永田さん)
「NHKの現場記者はよく勉強もしているし、非常に熱心。辺野古についても取材の蓄積は十分あると思うので、検証番組を作って、国民に正確な情報を伝えて欲しい。今回の件は、放送法違反がきわめて濃厚で、訂正放送を流すべき事案。そうしないと、受信料不払い運動が起きる。国会でも徹底的に追及してほしい」(横田さん)
「早いほうが勝ちという“速報性の罠”に陥らず、きちんと時間をかけて自主的に取材して検証する番組が求められる」(永田さん)
一人ひとりの記者のがんばりが、私たちのところに届かないのはなんとも残念。“パイプのつまり”を掃除して、真実を明らかにするためにも、視聴者として応援しましょう。
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