第73回:【拡散・活用希望】第二の“もんじゅ”案件、辺野古埋め立てに反対する5つの理由(想田和弘)

 今週の日曜日(2月24日)、沖縄で辺野古米軍基地のための埋め立ての是非を巡る県民投票が行われる。

 僕は沖縄県民ではない。しかし本土が基地負担を沖縄に押し付けるという構図の中で行われる投票であり、県民でないからといって我関せずとしてはいられない。しかもこの基地建設には合理性がなく、巨額の費用をかけながら結局挫折した“もんじゅ”のような運命にいたる恐れもある。ここで明確に反対するのは、市民としての責務だとも感じる。

 そこで県民投票を前にして、僕が基地建設とそれに伴う埋め立てに反対する5つの理由を述べておく。それはそのまま、沖縄県民のみならず、日本国民が辺野古埋め立てに反対すべき5つの理由でもあると信じている。

〈1〉辺野古基地を建設しても、普天間基地が返還されるとは限らない

 日本政府は辺野古基地建設を強行する口実として、「世界一危険な普天間基地を一刻も早く返還させ、危険を取り除くため」という論理を用いている。つまり辺野古基地が完成さえすれば、まるで普天間が自動的に返ってくるかのような物言いをしている。

 しかしこれは控えめに言ってもミスリーディングである。

 その理由は、2017年6月の参院外交防衛委員会でなされた稲田朋美防衛相(当時)の答弁にある。稲田防衛相はこの際、日米が2013年に合意した8つの条件が整わなければ、辺野古基地を建設しても普天間は返還されないことを明言したのである。

○藤田幸久君 (略)そのことに関して、今後アメリカ側との具体的な協議やその内容に基づく調整が整わない、このようなことがあれば、返還条件が整わず、普天間飛行場の返還がなされないことになりますと。
 つまり、これは、辺野古の新基地が建設されても、アメリカ側との調整が整わなければ普天間基地は返還されないということで間違いございませんですね。
○国務大臣(稲田朋美君) 六月六日の当委員会でも申し上げましたように、米側との具体的な協議、またその内容の調整が整わない、このようなことがあれば、返還条件が整わず、返還がなされないということになりますけれども、そういったことがないようにしっかりと対応をしていくということでございます。

 そういう意味では、マスメディアがよく使っている「辺野古移設」という言葉もミスリーディングである。僕も以前、辺野古基地を建設すれば普天間は返ってくるものだと思い込まされていたためにこの言葉を使っていたことがあるが、現在では使っていない。マスメディアも市民も政治家も「辺野古移設」という表現の使用をやめるべきだろう。

〈2〉滑走路が短すぎる辺野古新基地は、造っても実は使い物にならない

 安倍政権が「日本を守るためにどうしても必要だ」と宣伝する辺野古基地だが、信じがたいことに、造っても肝心な時には使い物にならない。

 なぜなら普天間の滑走路が2800メートルあるのに対して、辺野古は1800メートルしかない。したがって、なんと緊急時の任務に対応できないというのである。

 事実、先述した「8つの条件」には、「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」とある。ちょっと分かりにくい表現だが、噛み砕けばこういう意味になる。

 「辺野古基地は滑走路が短すぎて緊急時に使えないので、基地が完成しても、米軍が那覇空港などの民間施設を緊急時に使用できないのであれば、普天間は返還されない」

 驚くべきことであろう。

 いずれにせよ、緊急時に使えぬ軍事基地を、いったい何のために造るのか。僕にはまったく理解できない。

 米政府監査院(GAО)は2017年4月、辺野古基地完成後も県内の別の滑走路の使用を検討することを求めた。また、米国の「平和を求める退役軍人の会」は、辺野古基地建設計画の見直しを求める声明を591票対5票という大差で採択している。

 同声明では辺野古基地について、「おそらくは完成すらしない、深刻な問題を抱えた無駄な公共事業であり、日本政府のメンツを守るためだけに無闇に推進されている」と痛烈な批判をしている。

 元米海兵隊政務外交部次長・ロバート・D・エルドリッヂ氏も朝日新聞の取材に答えて、次のように述べている。

 「海兵隊も辺野古移設を望んでいるわけではありません。移設後の基地は、普天間飛行場よりも滑走路が短く、有事に動く主力の軍用機が離着陸できない。普天間のように高台にもないから津波にも弱い。住宅地にも隣り合うため、騒音被害も生まれるでしょう」

〈3〉辺野古基地建設には巨額の費用と長い年月がかかる上に、もしかすると完成しない(第二の“もんじゅ”)

 辺野古基地の埋め立て工事には、国は2405億円、5年の歳月がかかると試算している。しかし沖縄県の試算では、埋め立て工事に5年、軟弱地盤の改良工事5年、埋め立て後の施設整備に3年の計13年がかかると予測し、工事費も国の試算の約10倍の2兆5500億円に上るだろうとしている。もちろん原資はすべて税金である。

 なぜ国と県の試算にこれほどのギャップが生じているのかといえば、国はこれまで、2016年から建設予定地にあると指摘され続けてきた軟弱地盤の存在を、否定し続けてきたからだ。

 しかし今年1月30日、安倍首相はとうとう国会の答弁で、軟弱地盤の改良の必要性を認めざるをえなくなった。同時に、工期や費用については「確たることを申し上げることは困難」と述べた。

 つまり現時点で国は、すでに工事がスタートした巨大事業が、いつ完成し、いくらかかるのか、予想することすらできないのである。これは驚愕すべきことではないだろうか(みなさんの会社でそんなことありえるだろうか?)。

 しかもそれで本当に完成するのならまだ救われるが(救われないけど)、「平和を求める退役軍人の会」が指摘したように、どれだけ費用をかけても、辺野古基地は完成しない可能性すらある。

 なぜなら辺野古のマヨネーズのような軟弱地盤を改良するための「サンドコンパクションパイル工法」では、水面下最大90メートルの砂杭を約6万3千本も打たねばならないそうだが、世界でも70メートルまでしか実績がなく、これまでに例がないというのである。しかも90メートルの砂杭を打てる船は国内に存在しない。

 更にこの工法で工事を進めるには、国は沖縄県に対して工法を変更した工事計画書を提出しなければならないが、玉城デニー知事は変更後の計画を承認しない方針である。工事には技術的な問題だけでなく、政治的・法的な問題も山積みであり、辺野古は派手にお金とリソースを浪費して環境を破壊するだけの、未完のプロジェクトとなる可能性が高い。

 「いくらなんでも、国が大々的に進める国家プロジェクトが、そんなことにはならないだろう」

 そう、楽観視するみなさん。

 みなさんには、高速増殖炉「もんじゅ」のことを思い出して欲しい。これまで1兆円以上かけて建設・維持してきた「もんじゅ」が、ほとんど稼働することもなく、あえなく廃炉が決定したことは周知の通りである。つまり「そんなこと」は、十分にありうるのである、この国では。

 僕は辺野古基地が「第二のもんじゅ」になるのではないかと、本気で危惧している。

〈4〉そもそも軍事戦略的にも辺野古基地は必要ない?

 それでも、辺野古基地が日本や沖縄の生存にとって絶対に必要不可欠なのであれば、歯を食いしばってでも建設しなければならないのかもしれない。

 ところが、ブッシュ政権でパウエル米国務長官の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン元陸軍大佐は、琉球新報のインタビューに答えて衝撃的な発言をしている。彼によれば、そもそも辺野古基地は軍事戦略的に意味がなく、実は海兵隊の兵力(つまり既得権)を安価に維持するための「方便」だったというのである。

 琉球新報の記事から、大事な部分を引用する。

 当時の分析では、沖縄の海兵隊駐留は日本政府が多額の米軍駐留経費を支払っているため「カリフォルニア州での費用より、米側の負担は50~60%安く済んでいた」と指摘した。米側の財政上、好都合であり、米本土に海兵隊を戻すことは非経済的と判断していたという。同州内の基地閉鎖もあったため、沖縄の海兵隊員を米本土に戻しても駐留させる場所がなく「兵力削減につながることを海兵隊幹部が恐れた」と明かした。

 日本政府が主張する在沖海兵隊の「抑止力」について「もろ刃の剣だ。抑止力の一方で、米軍の駐留は中国の軍事費を拡大させ、より強力な敵にさせる」と、軍事的緊張を高める要因になると指摘した。

 仮に朝鮮半島で有事が起きた際でも在沖海兵隊の派遣は「戦闘が終わってからしか現地に到着しないだろう。60万人の韓国軍にとって微少な追加でしかなく、戦略的理由はない」と述べた。

〈5〉取り返しのつかぬ自然破壊になる

 毎日新聞によると、埋め立てが予定されている辺野古・大浦湾には、「5806種の生物が確認され、うち262種が絶滅危惧種」だという。新種の発見も相次いでいるだけでなく、生物の種類は世界自然遺産に登録された屋久島(約4600種)や小笠原諸島(約4400種)よりも多いという。

 僕は沖縄県民や日本人だけでなく、すべての人類に対して問いたい。

 こうした貴重な自然や生き物が、巨額の費用と長い年月をかけてもおそらくは完成せず、完成したとしても使い物にならない、戦略上も意味のない軍事施設のために、沖縄の民意を蹂躙し欺きながら、海兵隊の既得権を温存し日本政府の面子を潰さないという超絶くだらない目的だけのために、破壊され殺されてもよいのだろうか?

 というわけで、24日の県民投票は、極めて重大です。

 貴重な投票権を持っている沖縄県民のみなさん。

 もし僕の説明に賛同されるなら、ぜひとも「反対」に丸をつけてください。また、周りで選択に迷っている人、投票にいくかどうか迷っている人がいたら、この「5つの理由」を説明してあげてください。

想田和弘
想田和弘(そうだ かずひろ): 映画作家。ニューヨーク在住。東京大学文学部卒。テレビ用ドキュメンタリー番組を手がけた後、台本やナレーションを使わないドキュメンタリーの手法「観察映画シリーズ」を作り始める。『選挙』(観察映画第1弾、07年)で米ピーボディ賞を受賞。『精神』(同第2弾、08年)では釜山国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を、『Peace』(同番外編、11年)では香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞。『演劇1』『演劇2』(同第3弾、第4弾、12年)はナント三大陸映画祭で「若い審査員賞」を受賞した。2013年夏、『選挙2』(同第5弾)を日本全国で劇場公開。最新作『牡蠣工場』(同第6弾)はロカルノ国際映画祭に正式招待された。主な著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)、『演劇 vs.映画』(岩波書店)、『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(岩波ブックレット)、『熱狂なきファシズム』(河出書房)、『カメラを持て、町へ出よう ──「観察映画」論』(集英社インターナショナル)などがある。