第118回:安倍泥船丸がブクブクブク……と(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 憤るのもちょいと疲れてきているぼくだけれど、それにしても、やっぱり腹が立つ。新型コロナウイルスを巡る、安倍政権のひどさだ。結局、政府内のどこにも司令塔がなく、各閣僚らが好き勝手な発言を繰り返すから、振り回されるほうはたまったもんじゃない。
 それに輪をかけて、専門家会議とやらが、まったく専門家らしくないことばかり発表するものだから、舵取りを失った図体ばかりデカい船が、もはや沈没寸前というところまで来てしまった。
 タイタニックならぬ安倍泥船丸がブクブクと……。

我々が「誤解」していた?

 加藤勝信厚生労働相って、こんなひどい男だったっけ? この人、言うことがすさまじい。デタラメ屁理屈のマシンガン。
 PCR検査に関しては、「37.5度以上の熱が4日以上続き、強いだるさや息苦しさを感じることが条件」だと、以前は言っていた。厚労省の2月の見解にも、そう明記されていたはずだ。ところがそれをこの加藤、クルリンパッと引っくり返してみせた。
 「それはひとつの目安ということで、我々(政府)から見れば(国民の)誤解といえばそういうことで……」などと、その見解を守って自宅待機のまま亡くなった人のことなど歯牙にもかけぬ言い草である。
 なに? あれはぼくらの「誤解」だったのか? だが、厚労省や専門家会議のページには、明らかに「37.5度以上が4日間続くこと」と書いてあったはず。それに従って多くの人が我慢をし、耐えきれずに電話しても検査を拒否された、という事例が掃いて捨てるほどあったではないか。いや、いまだに続いているという報告もある。
 さらには「あれはあくまで目安だった。それが基準というふうに受け取られてしまった。37.5度が4日間続いたら、必ず検査を受けてください、という意味で言ったのだ」と開き直られては、開いた口が塞がらない。ちょっと待て、いったいどこにそんなことが書いてあったか。もし事実なら、その証拠を示してほしい。
 確かに加藤厚労相が「検査に関しては、柔軟に対応するよう何度も申し上げた」のは事実だ。しかし、「医師の診察で必要とされた人は検査する」ということと「柔軟に対応する」との間には、1万キロほどの距離がある! そうであるならなぜ、厚労省通達でも発して「医師から要請があったらきちんと検査するように」と指示しなかったのか? それとも保健所が加藤厚労相の言うこともきかずに、勝手に検査拒否をし続けたというのか。あの「目安」が事実上の命令と受け取られていたからではないか。
 都合の悪いことはすべて“下の者”に押しつけて責任逃れ。加藤厚労相はまさに、最低の“上司”というしかない。
 さらに許せないのはこんな言い訳。4月30日の、小池晃議員の質問に対する答弁がまたひどい。
 「2万人の検査体制が取れると言ったではないか」と聞かれて「2万人の検査体制が取れるとは言ったが、2万人の検査をするとは言っていない」
 本気で、てめえ、ざぁけんじゃねえ! と怒鳴りたくなる。これに怒らない人がいたら、その人には“怒る”という感情が欠如している。
 これは例の「安倍用語集」のひとつ「ご飯論法」である。「ご飯は食べたか?」と問われて「ご飯は食べていない(実はパンは食べた。ご飯と言われたので、ご飯は食べていないと答えただけ)」という論法だ。
 ごまかし専門の「安倍用語」が、すでに閣僚たちに蔓延している。コロナの蔓延よりたちが悪い。

派手なパフォーマンス合戦

 突然、コロナ特措法担当大臣になってしまった西村康稔氏も、どうも訳がワカランチン。張り切ったのはいいが、ただ目立つだけを考えているとしか思えない。だがこの人、自民党内では相当に評判が悪いらしい。「パフォーマンスがみえみえで、中身がない」とのことらしい。
 例えば、大阪の吉村洋文知事と派手なバトルを繰り広げてみせたが、結局は、たいした具体策を示せず、巷の評判は圧倒的に吉村知事の勝利(それはそれで、かなり困った事態だが)に終わった。
 その西村担当相、安倍忖度組の筆頭議員。なんとか経済活動の再開を目論む安倍首相の意を汲んで、「感染の低い地域から、宣言を解除しても」と言い出した。だが一貫性はない。
 「かなり自粛が緩んできているところもあることに、警戒しなければならない」とも発言している。どっちなんだよ!
 自民党はコロナ対策の合同部会を5月7日に開いた。そこへ、なんと200人超の自民党議員たちが押し掛けた。「三密どころか酸欠だ」との声が飛ぶほどのすし詰め状態。
 言いたいことがあって、熱心なのもいいだろうが、どこか“緩んできている”のは、自民党そのものではないか。

ツイート・デモの威力

 「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが、爆発的な支持を集めている。普段は政治的発言をあまりしない芸能人などが、次々と賛意のツイートを発し、それも影響したのだろう、この「#」をつけた投稿は、12日現在で600万件に達しているという。政治的発言を避けてきた芸能人たちでさえ我慢できなくなるほど、安倍政権のやり方はひどいということだ。「ツイート・デモ」という言葉さえ生まれている。
 これについて、いわゆるネット右翼諸士がパニックに陥っている。とにかく安倍忖度官僚を検察トップに据えたいがための「改正案」。どう考えてもこの改正案には理がない。さしものネット右翼たちも反論のしようがない。つまらぬコリクツで皮肉を言うくらいしか術がない。
 例えばきゃりーぱみゅぱみゅさんも、このハッシュタグを発信した。すると自称ファンを名乗る連中が「もうあなたの歌は聞かない」「ぱみゅぱみゅには失望した、彼女のCDを叩き割った」などと絡み始めた。だいたいが、いまどき「CDを叩き割る」なんてどこの世界の話よ。若い人はほとんど、ネット配信で聴いているのだ。この若者ぶった自称ファン、どこの指令で動いているかは、想像すれば分かりそうな……。
 ぱみゅぱみゅさんのホントのファンたちが、熱心にこのくだらぬ皮肉に応酬、残念ながら彼女は「ファン同士が言い合いになるのは悲しい」として、ツイートを削除してしまったが、その影響は大きかった。ネット右翼サイドの、つまりは安倍サイドの完敗であろう。
 他にも、多くの芸能人や識者が賛同の意を表明。ほぼ「国民運動」の体をなしてきた。それでも安倍首相は、11日の国会審議で「批判はまったく当たらない。今国会で成立を期す」と発言。もう何も聞く耳持たぬ、“まさにその中においていわゆる独裁者”。それも破れかぶれの“裸の独裁者”になり果てた。自民党内からも、これはやり過ぎだ、との声が挙がり始めた。
 安倍側近を自認する今井尚哉氏や佐伯耕三氏らの茶坊主官僚たちも、そろそろ「裸ですヨ……」と小声で教えてあげたらどうだろう?

アベコロナ3点セット+1

 「アベコロナ3点セット」という言い方が、永田町、それも自民党界隈で流行っているらしい。

 ① 撤回に追い込まれ補正予算の組み直しに追い込まれた30万円支給策
 ② 意地でも外さないアベノマスク、閣僚でさえつけているのはあの人だけ
 ③ 星野源さんを政治利用した優雅な首相休暇の動画配信

 どれをとっても、一般庶民の気持ちを紙やすりでゴリゴリの不快感極まる所業だ。そこへ持ってきて、ついに4番目の「#検察庁法改正案に抗議します」が火を噴いた。もうダメだろうな……。
 30万円給付案を、連立離脱の脅しまでかけられて一律10万円給付に変更せざるを得なかったことで、強硬策に出た山口那津男公明党代表に対し、安倍の心中は煮えくり返っているという。山口代表のゴリ押しがあったとはいえ、補正予算の組み換えをせざるを得なかったのは、近来稀に見る失政中の失政だからだ。
 だが、選挙では公明党票≒創価学会票がなければ、100人単位で落選する自民党議員がいるという現状では、公明党に三行半を突きつけるわけにもいかない。

 正直なところ、安倍首相は進退窮まっているという。第一次安倍政権の途中投げ出しという例もある。
 これで、東京オリンピックが正式に中止とでもいうことになれば、はい、もうおしまいです。

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。