悲しいお知らせです。「マガジン9」にコラム『柴田鉄治の「今月の論点」──新聞、テレビを斬る』を連載いただいていたジャーナリストの柴田鉄治さんが、8月23日、病気のためお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りします。
朝日新聞記者として、そしてフリーのジャーナリストとして、数多くの事件やテーマを取材されてきた柴田さん。科学者になりたいという思いもありながら、少年時代の戦争体験から「平和を作る仕事がしたい」と、新聞記者の道を選んだといいます。観測隊に同行して訪れた「南極」への思いはとりわけ深く、世界中を南極のような「国境も軍事基地もない、平和の地」にしたい、と繰り返し語り、コラムでも書かれていました。
実は、柴田さんの朝日新聞での後輩にあたるジャーナリストの伊藤千尋さんのFacebookによれば、お2人で「平和」をテーマにした共著を出版しようと、今年の春から執筆を進められていたとのこと。「もう年齢から言って後がないから、最後に平和を訴える本を出したい」と、柴田さんからの提案があったのだそうです。柴田さんが書こうとされていたテーマはやはり、「南極からの平和」でした(伊藤さんは、なんとか出版の道を探りたいとのこと、朗報を待ちたいと思います)。
最後まで、「平和」を希求されていた方だったのだと、改めて思います。
マガジン9では、2009年1月から〈柴田鉄治のメディア時評〉のタイトルでコラムを連載いただいていました。
17年のサイトリニューアルの際、すでに8年以上の連載になっていたことから「いったん区切りを付けて、今度は違うテーマのコラムを書いていただくのもいいかと思っていますが」とご相談したところ、柔らかい口調で、けれどきっぱりと「いや、私はやっぱりメディア評論が書きたいんだよ」とおっしゃったのを覚えています。それだけ、ご自身も長年身を置かれてきたマスメディアの状況への危機感が強かったのでしょう。
リニューアル後に〈柴田鉄治の「今月の論点」〉とタイトルを変更し、さらに3年以上、連載を重ねていただきました。最後の更新は今年7月1日。「憲法軽視の安倍政権」に警鐘を鳴らし、「慰霊の日」を迎えた沖縄に思いを馳せる内容でした。まだまだ、書き続けていただきたかった。それしか、言葉が見つかりません。
ご自分の子どものような年齢の編集部スタッフにも、いつも優しく、丁寧に接してくださった柴田さん。本当にありがとうございました。どうぞ、ゆっくりおやすみください。