「~区政報告会&としまの未来について話そう会~知る・考える・つながる講座」に参加して(柳田茜)

 昨年4月の統一地方選挙で、マガジン9スタッフから豊島区議会議員に立候補、初当選した塚田ひさこさん。11月15日に「~区政報告会&としまの未来について話そう会~知る・考える・つながる講座」が行われました。区議会議員2年目の塚田さんが、区政報告会を兼ねて、さまざまな社会の問題をみんなで共に考え、学び合う場をつくるために企画したイベントです。

 今回のテーマは「新型コロナウイルスと私たちの社会・生活」。ゲストは、10年以上にわたり貧困問題と支援活動に取り組んでいる作家・活動家の雨宮処凛さん。前半は、雨宮さんがコロナ禍によって苦しい生活を強いられている方々の現状をお話ししてくれました。

 新型コロナウイルスの新規感染者数は11月以降、増加し続けています。雨宮さんが世話人をつとめる「反貧困ネットワーク」など、貧困問題を解決するために従来から活動してきた30以上の団体は、春の感染拡大に伴って3月に「新型コロナ災害緊急アクション」を立ち上げました。「新型コロナ災害緊急アクション」のHPの相談フォームには、この週末(11月14日、15日)も生活に困窮している方たちからのSOSの声が続々と届いているそうです。

 「コロナの感染拡大で派遣や日雇いの仕事がなくなって、わずかな貯金を切り崩しながらネットカフェを転々としていたり、なんとか家賃を払っていたのが、所持金も尽きてとうとう路上に出るしかなくなっている人が増えています。2008年のリーマン・ショックの影響で困窮したのは主に製造業に就いている男性の派遣労働者でした。今回は、若年層のホームレス化が目立ちます。中でも、飲食、宿泊、旅行、小売などサービス業で働いている非正規雇用の若い女性たちからのSOSが多い。それから最も厳しいのは外国人。外国人労働者は、言葉の問題もあるし、携帯電話を持っていない人もいて、支援を求めることもできないんです。これから寒くなって、餓死、凍死が増えてもおかしくない」

 雨宮さんのこのようなお話を受けて、塚田さんも、豊島区には外国人の居住者が多いことを指摘。国がコロナ対策として打ち出した給付金・支援金をどう申請すればよいのか、区役所の窓口には外国人の相談が殺到して、「職員が対応に追われている」と言います。

 コロナ禍はさまざまな社会の問題をあぶり出しました。例えば多くの自治体が公務員の削減や非正規化を推進してきたことで、公の仕事に従事している人々が疲弊しています。賃金格差をはじめとして、構造的な女性差別もあらわになっています。そして、ご自身もロスジェネ世代である雨宮さんは、安定雇用が崩れた最初の世代、ロスジェネの人たちをコロナが直撃していることにも言及。

 これまで国と地方の行政が放置してきたひずみは、今、あらゆる生活の場にあらわれています。会場からも、コロナ禍における雇用制度や市民の問題意識についていくつか質問が出て、活発な意見交換の場となりました。

 後半は、塚田さんからの区政報告です。塚田さんは、今年7月に豊島区が打ち出した「新型コロナウイルス感染症に対応した区政運営の当面の取組方針」を紹介。区は、将来的な厳しい区財政への対応策として「コロナをこえて国際アート・カルチャー都市の実現」をめざしています。また、「公民連携」を推し進めて、民間企業などと連携しながら、「地域課題のより効果的・効率的な解決に取り組んでいく」としているそうです。

 こうした区の方針に対して、塚田さんは「このコロナ禍にあっても、区は、経済発展の方に寄り過ぎているのではないかと気になります。区民にとって関心があるのは、これから福祉や教育や雇用がどうなるのかということ。暮らしに関わる問題をもっと前面に出してほしい」と言います。

 会場からは、区議会で塚田さんが所属している会派「無所属の会」の幹事長わがい哲代議員が豊島区の財政事情について詳しく説明。元区役所職員で、介護の現場や福祉分野に詳しいわがいさんも、「区内の開発がどんどん進んで貯えも増えていますが、もともと経済的に苦しい区民の生活はより落ち込んでいる実感があります。私たちは小さな会派なので、議会でそれほど力はありませんが、情報発信しながらみんなで変えていきたい」と語ってくれました。

 区議会議員の区政報告会というと、後援会の支援者など見知った顔の中高年の人が集まることが多いのでないかと思います。今回は、「知る・考える・つながる講座」としてゲストに雨宮さんを迎え、参加型のイベントであったせいか、幅広い世代の人が集いました。コロナ禍のもと、生活に密着した行政には大きな役割が求められています。ふだんから自治体の議員とつながり、話すことの大切さをあらためて実感した会となりました。

(柳田茜)

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