「憲法を変えるか変えないか」から始まる改憲論議はおかしい (西村リユ)

 今年の憲法記念日。菅首相は「改憲」を訴える集会に自民党総裁としてメッセージを寄せ、緊急事態条項の創設などかねてから掲げている「改憲四項目」の実現に意欲を示したと報じられました

 コロナ禍にあって、より効果的な策を打つために緊急事態条項が必要だとの声も聞かれますが、果たして本当にそうなのでしょうか。ワクチンの接種が進まず、症状があっても入院さえできない人が多くいる今の状況が、緊急事態条項があれば防げていたとはとても思えません。東日本大震災の後に「緊急事態条項がないために十分な救護活動ができなかった」などという言説が流れたように、いつもそうして、災害が「改憲」の言い訳に使われているだけではないのでしょうか。

 憲法改正を議論すること自体がタブーだとはまったく思いませんが、それは「ある問題を解決するために、どうしても改憲が必要」という前提が先にあってのもの。自民党が主導する改憲論議のように、ともすれば「憲法を変える」こと自体が目的であるかのように語られることには、違和感しかありません。しばしば耳にする「憲法を変えることに賛成か反対か」といった世論調査の項目も、いったい何の意味があるのだろう(どの条文を、何のためにどんなふうに変えるのかもわからないのに?)と思うのです。

 マガ9が始まった15年前から言い続けていることですが、まずは憲法について、そして出てきている「改憲案」の内容について、一人ひとりがもっともっと知り、語ることが必要だと思います。以下、直接的に「憲法」に関連するコンテンツ(本当は、すべてのコンテンツが憲法につながっていると思うのですが)をいくつか挙げてみました。

●青井未帆さんに聞いた(その1):自民党の「改憲4項目」を、改めて検証する【2018年3月28日掲載】
●青井未帆さんに聞いた(その2):憲法への自衛隊明記。「現状を1ミリも変えない」なんてことはあり得ない【2018年4月4日掲載】
憲法学者の青井未帆さんに、自民党「改憲4項目」についてお聞きしたインタビュー。「自衛隊の存在を憲法で認める」ことが何を意味するのかについても、詳しく解説いただいています。

●小口幸人さんに聞いた(その1)災害の現場で必要なのは「国家緊急権」ではない【2015年9月30日掲載】
●小口幸人さんに聞いた(その2)緊急事態条項の導入は「災害」を名目にした「戦争への準備」【2015年10月7日掲載】
東日本大震災被災地で法律支援に携わった弁護士・小口幸人さんに、「国家緊急権(緊急事態条項)」についてお聞きしたインタビュー。2015年の記事なので、想定されているのは主に地震などの自然災害ですが、災害と緊急事態条項との関係性は、今のコロナ禍にも共通するところがあると思います。

●伊藤真さんに聞いた(その1):日本学術会議問題に見える、政権の「憲法軽視」【2020年12月23日掲載】
●伊藤真さんに聞いた(その2):なぜ、9条が大切なのか。原点に返り、考え続ける【2021年1月6日掲載】
憲法学者の伊藤真さんへのインタビュー。前半では、日本学術会議の問題を「憲法」の観点から語っていただきました。後半では、そもそも「総理大臣が改憲を主張する」ことは憲法違反なのでは? という、これまであまり指摘されてこなかった問題についてもお聞きしています。

●古関彰一さんに聞いた(その1):日本国憲法誕生の真実【2007年4月25日掲載】
●古関彰一さんに聞いた(その2):9条の基本は、あらゆる人の命を大切にすること【2007年5月2日掲載】
いまだにしばしば耳にする「アメリカに押しつけられた憲法だから」という言葉。日本国憲法は、本当に「押しつけ」られたものだったのか。憲法制定過程について研究を続けてこられた、法学者の小関彰一さんへのインタビューです。

●「憲法24条を考える」シリーズ【2016年1月〜11月掲載】
憲法24条が生まれた背景と家制度について、自民党改憲案に見える「家族」のあり方について……個人の尊厳や両性の平等について定めた24条をテーマにしたインタビューシリーズです。今注目が集まっている選択的夫婦別姓制度についても、いろいろな方が語ってくださっています。

 (西村リユ)