第13回:身近なはずなのにわかりづらくて遠い、地方議会と議員の活動をどう伝えるか?(塚田ひさこ)

チャコの区議会物語

議員も3年目の折り返し地点

 緊急事態宣言下でのゴールデンウイークも終わりました。議員になってこの5月で3年目を迎え、4年ある任期のうちのちょうど今が折り返し地点ということになります。初当選後の連休中は、会派をどうするのか、誰と組むべきか、などについて連日のように集まっては話し合っていたことを思い出します。結局最初の年は、会派を組まない一人会派(豊島区議会においては「無所属」という扱いになります)として活動をしていましたが、所属していた政党を離れ無所属議員になった2年目からは、「無所属の会」の会派に合流し、4人会派の一員として活動をはじめました。
 そういえばこのコラムもスタートしてまる1年が過ぎました。私の中では月に1回以上は更新! と決めていたのに、まだ連載回数が13回目だなんて、おのれの力量不足に落胆しています……。いざ自分が連載コラムを持ってみると、毎週マガジン9で連載を更新している鈴木耕さんや雨宮処凛さんたちは、なんてすごいんでしょう! と眩しい目で見てしまいます。

 そんなことで心新たに議員3年目となり、コラム2年目もなんとか引き続きがんばりたいと思っております。

 さて、1年間コラムを書いてきましたが、「今さらだけど、地方議員ってどんなスケジュールで動いてるの? 毎日役所に通ってるの? やっぱり夜は宴会とかあるの? そして一体何をやってるの?」などなど、「地方議員の実態って国会議員よりよくわからないよね」という疑問を編集部からもらいました。

 実は私も未だに「地方議員の仕事って何なのか?」がよくわからないまま日々動いています。「他会派の議員が、議会のない時はどんな活動をしているのか?」についても、さっぱりわかりません。一度書いたかもしれませんが、思っていた以上に会派をこえての議員の横のつながりも、いわゆる「野党」とされるところとはありますが、「与党」とはありません。二元代表制の地方議会においては、本来は野党も与党もないはずなんですが、国会における自民公明が与党という構図に加えて、区長与党と言われる会派の存在も大きく、私たちは少数会派=野党的な存在です。「野党」が正面切って政策提言しても通らないよ、という声も聞いたことがありますが、こんなのおかしいなあ、といつも思います。
 あるベテラン議員の方によると「とにかく1期目の4年間は、何もわからないままあっという間に終わって、2期目になってようやく全体像が見えてきて、10年やってようやく議員の仕事ができるようになる」と言われたことがあるので、そんなものかなぁと思いつつ、コロナ禍で世の中がこんなに大変なのに、ただ慌ただしく毎日が過ぎていってしまっているよ! という焦りも感じています。

 話を戻して、それでは質問に答えたいと思います。

1.地方議員は、どんな年間スケジュールで動いてるの?

 議員は、当然ながら議会のスケジュールを中心に動いています。それらは全て地方自治法に細かく制定されており、それにのっとって議会運営は行われています。ここではざっくりと、地方議会の1年(12ヶ月)の流れを、四半期(3ヶ月)ごとに4つのシーズンに分けて、そこで行われる主な会議の一部を挙げてみました。シーズンという言い方が適当かどうかはわかりませんが、1期〜4期のイメージです。

●シーズン1(4月〜6月の第2定例会まで)
※選挙年は、改選後からスタート。

・各会派代表者会議:各会派の代表者が集まり、議会運営に係る各種会議や調整、申し合わせ事項の確認を行う。
*改選後の年は、「何人から交渉会派とするか?」「部屋割りはどうするか?」「委員長ポストをどう振り分けるか?」などの調整に長い時間を要するのが常らしい。

・議員全員協議会:議員全員が出席するいわゆる「全協」と呼ばれている会議で、日程や提出議案の説明と確認を行う。所管の担当理事者も出席をし、質疑を行う場合もある。
*最近はコロナについての状況報告がここで行われることが多い。

・第1回臨時会招集:任期1年の議長・副議長の選任、常任委員会の選任と承認。
*条例で回数が定められている「定例会」に対して、「臨時会」は必要がある場合、その事案に限り招集できる。がこの時期の臨時会はほぼ必ず行われる。議長、副議長は議員による選挙で決定されるが、最大会派が議長を取るのが常なので選挙自体も形式化している。

・第2回定例会(6月16日〜7月14日):一般質問、常任委員会、一般会計補正予算、条例の一部改正など。
*第1回定例会は、前年のシーズン4に行われる。議会の「第●回」という数字は、その年ごとの通し番号になっているが、年度をまたぐのでややこしい。

●シーズン2(7月〜9月の第3定例会まで)
・第3回定例会:一般質問、常任委員会、決算特別委員会にて前年度の会計決算の審議と承認、一般会計補正予算、条例の一部改正など。
*決算特別委員会のボリュームが大きい。私は今年委員として参加。

●シーズン3(10月〜12月の第4定例会まで)
・第4回定例会:一般質問、常任委員会、一般会計補正予算、条例の一部改正など。

●シーズン4(1月〜3月の第1回定例会まで)
・第1回定例会:一般質問、常任委員会、予算特別委員会にて翌年度の会計予算案の審議と採択、一般会計補正予算、条例の一部改正など。
*予算特別委員会のボリュームが大きい。こちらも委員として参加。

 5月上旬の今は「シーズン1」で、全員協議会や臨時会の招集を待ちながら、任期が1年の特別委員会のまとめの報告の委員会に出席しているところです。ちなみに私は昨年度までは、常任委員会は「都市整備委員会」に属していましたが、会派で話し合って今年度は「総務委員会」に入る予定です。特別委員会は、行財政改革調査特別委員会から、施設用地特別委員会に移ります。これら委員会の役割についても、一般にはわかりづらいところだと思いますので次回のコラムにでも書きたいと思っています。

2.議員は毎日「役所」に通ってるの?

 議会が閉会中でも毎日登庁している議員は……おそらくいないと思いますが、議会中は、自分が参加する委員会のない時でも、所属する会派の控え室にて待機をしている議員はいます。そのあたりは、会派ごとにルールを決めているようです。私の所属する無所属の会においては、自由度が高く個人の采配に任されているので「会派の規則」といったものはほぼありません。が、会派の代表者が出席する正副幹事長会がある時は全員が集まって、会議に参加した幹事長からの報告を聞く、ということは最低限の取り決めとしてはあります。
 私自身は委員会出席や職員とのアポイントメントがなくても、なるべくなら控え室に行くようにはしています。とにかく1期生なので持っている情報が圧倒的に少ないわけですから、他の議員と職員のやりとりを横で聞いているだけでも、勉強です。理事者の顔と名前もようやく一致してきたくらいですから。ただ今は新型コロナウイルス対策として、万全の対策をとるように、控え室でも「密」にならないように、また人流はなるべくおさえるように、という議長からの要請もありますので、各会派の控え室のあるフロアも閑散としています。

3.やっぱり夜は宴会とかあるの?

 議員になって1年目の時は、区内にある業界団体(例えば各地域の商店街連合会や町会連合会など)の総会あとの懇親会にはじまって、夏は盆踊り、暑気払い、秋祭り、忘年会に新年会と、1年中何かしらの「宴会」が行われており、招待状のハガキが私のような新人にも数えきれないくらい送られてきていました。
 しかし、コロナ禍になって以来、議員が呼ばれるような業界団体の飲食を伴う集まりはすべて中止になってますし、緊急事態宣言も出ている今は内輪の飲み会などもいっさいありません。宴会や飲み会がないからと言って、議員活動に何か支障が出るということはないと思いますが、コロナがおさまった後にはまた、以前のように宴会が復活するのかな、待ち焦がれている人もいるだろうな? とは思います。

4.そして一体何をやってるの?

 コロナ禍で宴会だけでなく式典やイベントなどの集まりもなくなり、街頭演説や区政報告や勉強会なども、リアルではほぼやれなくなっています。人との接触が制限されている今、議員の姿は一層見えにくくなっているかもしれません。
 議員は会派に支給される「政務調査費」を使って、自分たちの議会活動や政策について地域住民に知らせるためにニュースを作成し、配布することができます。コロナ禍の今こそ、議員や議会の活動内容を伝える手段としても、この使い方がより重要になるのではと思っています。
 今回、私の所属する会派では、はじめて4人全員の活動を一緒に紹介する「無所属の会 としま区議会ニュース2021」リンクを作成しました。3月の年度内に作成し、新しい年度が始まるタイミングで、区内全戸の約12万戸にポスティングしました。他の会派や議員の活動ニュースも、この時期に多く作られ配布されています。他の地域でも同様に行われているはずなので、みなさんも新聞の折り込みなどで見かけることがあると思います。

 議員や区政の活動を身近に知ってもらおうと、今までとは全く異なる見せ方にチャレンジしてみたのですが、概ね「斬新ですね」「見やすかった」「4人が身近に感じられた」「●●さん(私ではない)のイメージが(良い方に)大きく変わったよ」「無所属の会の雰囲気がいいことが伝わった」などの好意的な意見をたくさんもらい、紙面の編集を一手に引き受けた私としてはうれしかったです。やっぱり私は人の応援をしている方が合っているのかなあ、とつくづく思いながら。

 本来は私たちの生活に一番身近なはずなのにわかりづらくて遠い、地方議会と議員の活動をどう伝えるか? もまた、私が議員として活動している間の役割なのではないか、と思っています。
 ですからこの「地方議員は一体何をやっているの?」への答えが、決して少なくない額の「政務調査費」を使って発行するニュースにちゃんと反映されているといいのですが、どうでしょうか。まだまだやれることもやるべきこともありますね。読者のみなさんからの忌憚のないご意見も、お聞かせいただければうれしいです。

 さて、次回は「ある1週間の私の活動」について、書いてみようと思っています。

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塚田ひさこ
塚田ひさこ(つかだ・ひさこ):豊島区議会議員・編集者。香川県高松市生まれ。香川県立高松高校、成城大学卒業後、サントリー(株)など民間会社勤務を経て、2005年憲法と社会問題を考えるウェブマガジン「マガジン9条」(現「マガジン9」)の立ち上げからメンバーとして関わり、運営・企画・編集など事務局担当。2019年5月地方統一選挙にて初当選。email:office@toshima.site twitter:@hisakotsukada9