第16回:「学校給食」に希望と夢を!(塚田ひさこ)

チャコの区議会物語

横浜市長選挙でも焦点になった「学校給食」

菅総理が総裁選挙に立候補しないというニュースが駆け巡り、自民党内の勢力争いの話ばかりが聞こえてきて、心底うんざりしている今日この頃ですが、思えばこの選挙結果から大きく流れが変わってきたとも言えるのではないでしょうか。ちょっと前の話になりますが、8月22日に投開票された横浜市長選挙のことです。
候補者が乱立したこの選挙は、ゼロウチ(20時の開票と同時に、出口調査などの結果から当確を出すこと)で野党の統一候補、山中竹春氏が圧勝という結果になりました。カジノを含むIRの誘致推進か中止かという長年の対立にようやく決着がついたとみていいと思いますが、私は各候補者の政策論点の一つにもなっていた「学校給食」についても注目していました。

私自身、10年前までは横浜市民だったので、中学校に給食がなくて大変だ、という話はよく耳にしていました。全国的にみると2016年には、約9割の公立中学校で学校給食が導入されているのですが、横浜市は遅くてなんと今年の4月から始まったところ。政令指定都市では全国でも最後となる導入でした。しかも全員給食ではなく、希望者のみが選ぶことができる「選択制」です。2016年から導入されていた「ハマ弁」(なんだか聞こえはいいですが冷えたデリバリー弁当だそうです)も選択制だったのですが、美味しくないからということも理由の一つだったのか、利用者は2割程度だったといいます。
そんな中学校の学校給食について、山中氏は選挙公約で「全員で食べる給食にする」と訴えており、また田中康夫候補は「温かい完全給食を早急に実施」とさらに一歩踏み込んで訴えていました。学校給食に関しては、田中氏の方が子どもの学びや育ちにおけるその重要性をより理解しているように思えました。

横浜市の給食問題においては、地元保護者の長年の運動もあったことで、このように選挙の公約にもなりました。「完全給食」を掲げた候補者が勝ったことで、今後横浜市の給食がどのようになっていくのか、しっかりと見ていきたいと思います。人口約370万を超える横浜市ですから、給食の公共調達による影響力ははかりしれないものがあるでしょう。例えば献立をどのようにして、その材料はどこから調達してくるのか、地元の生産者からなのか輸入食材なのかによっても、つくられる「地域循環型経済」は変わってきます。
給食というのは、自分が暮らしている地域以外の状況を知る機会がないので、どこでも一律、自分のところの方式や献立と同じだと思って過ごしてしまいがちです。しかし、実は自治体によって大きく異なるものだし、選挙の公約や焦点にもなるほど「変えることができる」ものでもあるのです。

「オーガニック給食」は、日本でどこまでできるのか?

さて、豊島区の話です。私は議員になった当初から、チャンスがあれば「オーガニック給食の導入」について、豊島区はどのように考えているのか、できれば一般質問で問うてみたいと考えていました。というのも数年前より韓国のソウル市では、行政と市民や生協組合が一緒になって、給食の無償化とオーガニック化を進めているという情報は得ていましたし、2021年にはソウルのすべての小・中・高校で「オーガニック無償給食」が全面施行されるとのことで、ある種羨望の眼差しでこの取り組みについて見ていたからです。

また以前、マガ9でも園長先生にインタビューさせていただいた、東京新宿区の24時間保育園「エイビイシイ保育園」でも、子どもたちの給食やおやつは全部有機食材を使っているという話を聞きました。この時も、広く一般化するといいのになあ、と思いましたが、ただやはり原価率が高いという印象も否めませんでした。

「有機食材を使った給食って、どうなんでしょうね?」と会派の中でも、それとなく聞いてみたりしましたが、「それは難しいよ」と即答され、給食に切り込むのはなかなかハードルが高そうだな、と思ってもいました。
しかし昨年の定例会で、多数派会派の議員さんが一般質問で、「SDGs(持続可能な開発目標)の推進の一環として、給食の食材にフェアトレードの食材を取り入れてはどうか?」と聞いたところ、教育長は「そういう取り組みは、本区は積極的に進めていく!」と力強く答弁するではないですか。「それが可能なら、SDGsの推進の切り口で、環境保全のアプローチから、オーガニック食材だっていけるんじゃない? それで一般質問を作ろう」。そう思って調べはじめたところ、やはり「公共調達」を変えるというのは、そう簡単ではない、ということもわかってきました。

調べてわかった「うちの給食は美味しい!」

そもそも豊島区における学校給食はどうなっているのか、を知る必要があります。「給食が美味しくて、子どもがおかわりしている」という地域の保護者の声を耳にすることがあったのですが、自分の過去の経験から「給食が美味しいなんてことがあるのか?」と疑心暗鬼だったんですね。しかし調べてみると、豊島区の学校給食は、たしかにかなり高い水準にありました。

公立の小中学校30校すべてにおいて単独調理方式(自校方式)、すなわち、学校に給食室を設置して校内で給食を調理する方式をとっています。各校に配置された栄養士によって学校ごとに献立がつくられ、調理師によって調理されたものが提供されるこの自校方式のメリットは、大きなものがあります。例えば、給食の適温提供ができる、栄養士による食育や調理過程の学習ができる、アレルギー対応ができる、行事食やオリジナル献立ができる……など。昔を知る人に聞くと、栄養士さんが手作りの味噌を持ち込んで、味噌汁を作っていたという話も出てきました。

学校給食のことを一般質問してみたら

そんな経緯もあって、6月の第2回定例会での一般質問では「学校給食」について取り上げることにしました。「変える」部分に力点をおくのではなく、今ある制度の良いところをまずは堅持させることも重要では、との先輩議員のアドバイスももらい、「自校式のメリットをどのように考えているかを改めて確認し、それを堅持していくこと」を明言するような答弁をまずは得ることにしました。例えばこんな感じです(答弁のやりとりを一部引用しまとめています)。

(質問1)
昨今、他の自治体では、効率化やコスト削減という面から、共同調理場方式(給食センター方式)や、外部委託方式(デリバリー方式)をとる学校が増えてきている。豊島区においてはこれからも単独調理方式(自校方式)を堅持するべきと考えるが、それについてはどのように考えているか?

(答弁)
本区は、各校に調理場がある「自校方式」により、全校に配置した栄養士が、特色ある献立の作成を通じて質の高い給食を提供しており、これまでも「全国学校給食優良校」として文部科学大臣表彰を多数受賞するとともに、平成30年度には、南池袋小学校が健康づくり優秀学校として東京都教育委員会表彰を受賞するなど、高い評価をいただいている。
現在、23区の中には「センター方式」や、調理場をもつ学校が、調理場をもたない学校の給食調理も行う「親子方式」の区もあるが、本区においては、出来立ての温かい給食提供、アレルギー対応、衛生管理、食育などの観点から、さらに、この間のコロナ禍における緊急の学童カレーの提供をはじめ、危機管理の適切な対応ができたことも踏まえ、効率性を追求しつつも、現在の「自校方式」を維持していきたいと考えている。

(質問2)
自校方式の本区では、「食」と「生産者」との結びつきを考えるために平成17年に宮城県と相互交流宣言を行ったことから、毎年11月に宮城県から贈られる新米を教材として、体験型学習を通して食育を学ぶ「宮城米給食の日」を設けている。これに倣い安心安全でおいしい食材とは何か? を考え、農水省も推進をはじめた未来の持続可能な日本の農業をつくることにつながる有機農産物・特別栽培農産物などを取り入れた「特別給食の日」を設定してはどうか?
なお、千葉県いすみ市は、2015年より学校給食に地元産の有機米の採用をはじめ、2018年には全量が有機米に切り替わっている。また同年から給食用の野菜の有機化にも着手し、現在までに7品目の有機化に成功し、全ての野菜の有機化を目指しており、全国の自治体からも注目を集めている。令和元年度には、農林水産省の「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」の農林水産大臣賞にも選ばれている。
本区は、農地がゼロであるので、生産者を県内にかかえるいすみ市と同じように考えるわけにはいかないことは承知しているが、環境保全型農業と地域循環型経済を見据えておくことは、持続可能なまちづくりの実現に寄与することであり、SDGsの理念とも一致する。今後の取り組みとして、安心・安全な食材に加えて、環境にも良い「学校給食」を検討するべきではないか?

(答弁)
現在、有機農産物や特別栽培農産物だけに特化した「特別給食の日」を全小中学校で一律に実施することは考えていない。しかし行事食などのイベントを通じて、環境に配慮した食材の利用を考えることに努め、食育の推進を図っていく。
おいしい新米と新鮮な宮城食材を使用した給食を提供し、食材について栄養士などから子どもたちに声掛けするなどの取り組みにより、対象校では、給食の残菜が通常より減少したという報告も受けている。今後は、先進自治体の取り組みも参考に、経費面も含めどのような取り組みを実施していくことが、環境にも良い学校給食となるのか、その手法や効果について、具体的に研究していく。

(質問3)
豊島区の学校給食が、おいしく充実しているということは、本区で子育てをしたい、また住み続けたい「持続可能なまちづくり」にも必要なことであり、SDGs推進と共にPRすべき要素でもあると考えるがどうか?

(答弁)
本区の学校給食は、これまでも試食会やイベントなどを通じて、保護者の皆さまからも「本当に美味しかった」「給食の質は下げないでほしい」などの高い評価をいただいている。
また、SDGsの17の目標について、子どもたちが知識としてだけでなく、体験を通じて学ぶことの効果は非常に大きいものであり、特に、食を通じて、健康や環境問題、貧困など世界規模の課題解決に貢献することの重要性について、体験的に理解する効果は大きく、学校給食はいわば「生きた教材」である。

一見当たり前のことしか聞いていないし、またオーガニック給食への道は遠そうだなあ、と思ったわけですが、なんでもかんでも「効率化」や事業経費の「スリム化」「アウトソーシングによる経費削減」が奨励される傾向にある中で、学校給食自校式のメリットについて今いちど確認をし、「堅持」を約束させ、次なる展開を考えることができたことには大きな意味があったのではないか、と自負をしています。

生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与すべき「学校給食」

なお、この豊島区の「自校式の保持」には、各校の栄養士さんたちのがんばりがあったとも聞きました。少子化による統廃合が進む中、給食センター方式にしては? という声もやはりあったそうですが、そうならなかったのは、「子どもたちには、温かい給食、美味しい給食を食べさせなくてはならないのよ!」とがんばってきた先人たちがいてこそなのだと、ヒアリングなど聞き取りをする中でも知ることができました。

公共調達の高い壁はあるものの、環境保全のこと、そしてこれからの社会のあり方を考えるとき、やっぱり人数の多い首都圏の学校における「学校給食」の食材をどうしていくかということは、大きな鍵を握っていると思います。私一人でどうにもなることではないので、ここは同じ思いの方々とネットワークでつながって、「食」や「環境」からも、政策を考えていきたいと思っています。

そんなこともあり、9月1日からオープンしたという「オーガニック給食マップ」を、興味深く眺めているところです。このサイトの「私たちの思い」の最初のところには、

「これからの世界を生きていく子どもたちには、できるだけ身体によいものを食べさせてあげたい。それは、私たち大人の共通の願いです。それを、学校給食というどんな子どもたちにも公平な食卓でこそ実現させたいと考えています」

と書かれていますが、私も強く同意するところです。この活動の賛同団体には、自治体、共同組合、団体、個人が参加しており、賛同自治体には、もちろん千葉県いすみ市の名前もあります。

そしてこれも最後にこれも書き留めておきたい。
学校給食法」第2条の4には、次のように定められています。

「食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと」。

この条文、すごくいいな、と思いませんか。今私たちが真剣に考えなければならないことでもあるし、「これぞ、オーガニック給食のことじゃない?」と言いたくもなりますが。
学校給食法は、昭和29年に制定されて以来の初めての大幅改正が平成21年に行われましたが、この第2条の4はその際に入った文言です。条文を書いた人の「学校給食」に込められた思いが伝わってきます。書いた人に会って話を聞いてみたいという思いにもかられました。

       

塚田ひさこ
塚田ひさこ(つかだ・ひさこ):豊島区議会議員・編集者。香川県高松市生まれ。香川県立高松高校、成城大学卒業後、サントリー(株)など民間会社勤務を経て、2005年憲法と社会問題を考えるウェブマガジン「マガジン9条」(現「マガジン9」)の立ち上げからメンバーとして関わり、運営・企画・編集など事務局担当。2019年5月地方統一選挙にて初当選。email:office@toshima.site twitter:@hisakotsukada9