公園の「賑わい」ってなんだろう?──大阪の公園での民間事業者公募をめぐって(西村リユ)

 そもそも、公園とはなんなのか。民間事業者を入れて商業施設をつくることだけが、「公」の役割なのか。大阪の公園をめぐる政治家の発言などから生まれた素朴な疑問を、以前にコラムで書いたことがあります。
 それから3年足らず。大阪府は、府下の四つの公園を対象に、20年間の管理・運営を委託する民間事業者を新たに募集すると発表しました。「民間のアイデアとノウハウを導入し、賑わいの拠点にする」のがその狙いだといい、吉村洋文大阪府知事は「民間のノウハウを入れることで、役所っぽい公園にしないことが大都市の公園として重要ではないか」とも述べています。

 でも、「役所っぽくない」公園っていったい何なのでしょう? 民間事業者が入れば、当然ながらカフェやレストランをはじめとする、こぎれいで華やかな──そして収益の上がる──施設は増えるでしょう。でもその分、誰もが自由に利用できる、「何もない」空間はまた減ってしまうはずです。それが本当に「公」園の、あるべき姿といえるんだろうか?
 そんなことを考えていたときに、オンライン署名サイトのchange.orgで、こんな署名が始まっているのを見つけました。〈大阪の服部緑地で民間事業者を公募して飲食店など新たな施設への投資を促すのを中止させてください〉。大阪府北西部、豊中市と吹田市にまたがる服部緑地は、民間事業者導入の対象となっている四つの公園の一つで、敷地は約126ヘクタールという広さ。バーベキュー場やスポーツ施設、野外音楽堂などの施設も整備されています。その服部緑地にさらに新しく商業施設などがつくられ、豊かな自然が破壊されてしまうことに歯止めをかけたい、というのが署名の内容でした。
 呼びかけ人は、近畿大学社会総合学部教授の金井啓子さん。「今住んでいる家が、服部緑地のすぐ近所なんです。特に新型コロナの感染が拡大してからは、朝散歩をしたり、頻繁に足を運ぶようになりました。そうしたら、朝の5時半くらいからもう、いっぱい人がいるんですよ」と話してくれました。
 散歩する人、ランニングする人、犬を連れた人、ラジオ体操やストレッチをする人、楽器の練習をする人……コロナの流行が始まる前は、休日ともなれば芝生でお弁当を広げる家族連れや、バーベキューを楽しむグループの姿も多く見られたといいます。
 「だから、民間事業者を入れて『賑わいの拠点をつくる』というけれど、現状でもすでに『賑わい』はあるんです。たしかにおしゃれなカフェはないけれど、食事のできるお店はあるし、自動販売機もある。そこにあえて新しい商業施設をつくる必要があるの? と思って」

 また、お店などをつくるために園内の木々が伐採され、自然豊かな公園の景観が大きく変貌してしまう可能性もあります。
 「ちょうどつい最近、私が勤務している大学で新校舎建設のために木を伐採したんです。いい木だから、というので10本ほどが別の場所に移植されたんですが、1本しか根付きませんでした。そんなふうに、木を伐っても別の場所に移せばいい、後からもう一度植えればいいというものではない。一度破壊されてしまった自然は、そう簡単には返ってこないんですよね。私もカフェは好きだし商業施設そのものを否定はしませんが、今ある自然を壊してまでつくる必要があるとは思えません」
 これまで、こういったキャンペーンなどを立ち上げたことはなかったという金井さんですが、「放っておいたらどんどん計画が進んでしまう」という危機感で、9月に署名の呼びかけをスタート。どのくらい反応があるか見当も付かなかったといいますが、結果的にはこれまでに2500人以上の署名が集まりました。
 署名をした人たちのコメントには、「自然豊かな公園は、自然そのままの姿が憩いの場となる」「これ以上の商業施設はいらない」「市民が気軽に憩える場所をなくさないで」などの声が。同時に、天王寺公園や大阪城公園など、大阪府下の他の公園ですでに「商業化」が起こっていることを指摘し、服部緑地も同じようになってしまうのではないか、と懸念する声も目立ちました。商業施設が不要だというのではない、ただそれと比較して、あまりにも緑豊かな空間の価値が軽視されていること、行政が「公園に賑わいを」というときの「賑わい」が、商業施設によるものにばかり偏っていることを、おかしいと感じる人が少なくないのだと思います。

 大阪府による民間事業者への公募が12月3日に締め切られるため、金井さんは10月末くらいでキャンペーンに区切りを付け、集まった署名を大阪府都市計画室公園課に届けようと考えているとのこと。それまで、キャンペーンを通じて「より多くの人に、服部緑地およびその他の府内の公園で起ころうとしていることに関心を寄せてもらいたい」と言います。
 公園とは何なのか。そして「公」の役割は何なのか。それは、大阪だけ、公園のことだけに限定された問いではないはず。私も引き続き、考えていきたいと思っています。

上記キャンペーンは大阪府民以外も署名できます。あと少しですが、関心のある方はぜひ。

(西村リユ)