ハードだった第1回定例会もようやく明日で閉会
コラムの更新が久しぶりになってしまいました。年末年始に行った「女性による女性のための相談会」の報告も、豊島区議会第1回定例会において行った「一般質問」のことも、「総務委員会」でのやりとりも、「令和4年度予算特別委員会」の質疑についても、重要なことがたくさんあり、書き残して伝えなくては! と焦りながらも、目の前の議案についての調べもの──例えば資料の読み込みや所管担当理事者へのヒアリング、そしてどんな質問構成にするべきかを考えるだけで、時間はどんどん過ぎていきます。そんな毎日の繰り返しで、3月23日の本会議をもって、このハードだった定例会は閉じようとしています。
そんな言い訳がましいことを言いながら、今年最初のコラムだというのに、区議会とは別のことを書きます。どうしてもここで言っておきたいこと、気になって仕方のないことがあるからです。それは、23日の18時から行われた、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の、日本の国会におけるオンライン演説についてです。
国会でのオンライン演説は憲法違反ではないの?
ゼレンスキー大統領が、諸外国と同様に日本の国会においてもオンライン演説を行う可能性があるというニュースは、1週間ほど前から話題になっていましたが、最初に聞いた瞬間から「そんなことをできるの?」と思いました。それは何も、オンライン中継の設備が整っているかという心配ではなく、曲がりなりにも「非武装中立」「戦争の永久放棄」を憲法に明記してある日本で、その国権の最高機関である国会において、紛争当事国の大統領が支援を求める演説をする、ということに対しての強い違和感です。「そもそも憲法に違反しているのでは?」と感じたほどです(日本政府は、ウクライナは「紛争当事国」ではないとして、自衛隊の防衛装備品である「防弾チョッキ」を送ったわけですが、相当な無理があるのではないでしょうか)。
特に当初は、国会の本会議場で演説が行われるとも報道されていました。国会議員の有志が主催する形で、国会の議員会館内のどこかの会議室で行うのというのならまだわかりますが、国会の本会議場で全議員が参加して演説を聞く、というのは過去の例から考えても、相当に特別な形になるのではないか、と想像しました。防弾チョッキを送ってしまったのと同様に、ここでもまた一歩、日本の平和主義から一歩はみ出すことになるのではないかと、懸念していたのです。しかしながら最終的には議員会館の会議室で行うということになり、ほっとしました。その理由については特段、明らかにされていませんが(本当に通信システムの課題によるものだとしても)、良かったとは思いました。
この原稿は、実際に国会演説が行われる前に書いていますので、この演説が行われたこと自体が批判するべきものなのかどうか、はっきりとはわからない部分もあります。しかし、私はこの間の報道を見聞きしている中で、この件はもっと慎重に取り扱われるべき事柄ではないか、とずっと思って来ました。非常に重要な事柄なのに、与野党で事前にどのような話し合いがなされてきたのか、そして国会対策委員会や議会運営委員会でどんな手続きを踏んでこういうことになったのか、各政党からの発信もこれまであまりなく、伝わってこないことも不満です。なし崩し的にこれほど大事なことが決められて実現されていくことに、とても危うさを感じていました。
今こそ日本国憲法の出番ではないのか?
ロシアによるウクライナの侵攻について。それは私たちの目にはある日突然に行われたように見えていますが、専門家の話を聞くと、どうやらそういうことではないようです。両国には複雑な歴史の経緯があり、ロシアのプーチン大統領はNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大について「約束違反だ」と厳しく批判していたという報道もあります。ロシアにはロシアにとっての「正義」があるということです。
もちろんどんな理由があろうとも、話し合いではなく武力によって問題解決を図ろうとするプーチン大統領のやり方は、決して許されるものではありません。しかし、戦争というものはいつも「自衛」から始まり、そのたびにそれぞれの国が「正義」を主張してきました。だからこそ「日本国憲法」は本来、自衛のための戦争であっても許されないとしているのです(現状の政府解釈では「自衛のための戦争は許される」とされていますが、私はこれについても解釈改憲だと考えています)。
今、日本国内においては、ロシアに対して徹底的に闘おうとしているゼレンスキー大統領を賛美し、ウクライナを支援しようという声が大きくなっているように感じています。しかしながら、私は今回のようなケースこそ非武装中立を掲げる日本国憲法の出番であり、それを使ってどのようにすれば停戦調停ができるのか、といった議論がされる場面ももっとあって然るべきではないか、と考えます。でも実際には「戦争を止めよう」という議論の場において、政治家からもニュースなどでコメントをする有識者からも、これまであまり憲法の話は持ち出されていないように思えて、それがとても不満でもあり、危機感もあります。
ウクライナとロシアの市民の命を守るためには、どちらか一方への支援を拡大させるのではなく、両国に今すぐの停戦を呼びかけるしかないでしょう。日本は平和憲法をもち、NATOにも加盟していないことから、その役割を本来は担うことができるはずでした。しかし日米同盟が強固になっている今、そうもできない状況にあるということに対して忸怩たる思いがあります。
しかしだからと言って、この戦争に乗じて憲法をないがしろにする、もしくは憲法を改悪しようなどという行為は絶対にやるべきではありません。
日本国憲法は、度重なる解釈改憲によって、かなりボロボロになっているとはいえ、それでも憲法9条には非武装中立、そして憲法前文には、積極的非武装平和主義が書かれています。
平和を願う市民が、「どうすれば戦争を止めることができるのか」について議論する場合は、この憲法から語ることも忘れないで欲しいとも思うのです。
私が憲法の中でも最も好きな「前文」は、「崇高すぎる」「理想的すぎる」「現実離れしている」と揶揄する向きもあるのですが、先の戦争でおびただしい数の犠牲者(8500万人とも言われている)を出した後、世界中の人の「もう戦争はいやだ。こりごりだ」という思いの上に練り上げられたのが日本国憲法であり前文であるということは、憲法制定に至る過程を紐解けばわかることです。
人間は愚かで、何度も間違いを犯すものです。でもだからこそ、過去から学ぶしかないのです。
正しい戦争はないし正しい暴力もない、しかしながら、国家がそれを認めたり進めようとするときは、主権者である市民がそれを止めることができる。その歯止めをかけるのが立憲主義ではないか、と考えます。「立憲主義が大事」とこれまで言ってきたはずの人たち(政治家も含め)までもが、今回の戦争のことになると、なぜか「国家」の目線に立ってあれこれ議論をしているように見受けられるのも、気になるところです。
「ウクライナに平和を!」の市民と自治体議員の党派を超えたネットワーク
もう一つ、ウクライナの問題に関連して書いておきたいことがあります。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻のニュースが流れた直後、27日には渋谷で「ウクライナに平和を!」と訴える市民と議員の緊急行動がありました。ここにはウクライナ人・ロシア人をはじめ外国から来た方や中学生など市民、合わせて約1000人が集まりました。これは武蔵野市議会議員の山本ひとみさんが「戦争反対!そしてウクライナの市民、ロシアの市民に寄り添おう」と呼びかけをはじめたところ、あっという間に241人の自治体議員と市民有志が名前を連ねて、その緊急アクションとして渋谷に集まったものです。私もこの呼びかけに答える形で参加しました。
その後、「ウクライナに平和を!自治体議員&市民有志」として内閣総理大臣あてに、「ロシアのウクライナへの侵攻に反対し、平和の実現を願う要請書」(*)を出し、勉強会なども開いてきました。23日のゼレンスキー大統領国会演説に関しても声明を出そうかという話し合いを、みなさん忙しい合間をぬってのズーム会議を重ねて行っています。
参加している市民や自治体議員には、「女性のための相談会」で顔を合わせたことのある人もおり、平和のアクションでも「日本政府に対しては非軍事での支援を求め、あくまでもウクライナ市民、ロシア市民に寄り添う」というスタンスを共有できて、とても心強く感じます。
*3月4日に内閣総理大臣宛に出した「要請書」。以下がその内容になります。
日頃は、市民の生活向上のためご尽力いただき、ありがとうございます。
私たちは、2月27日に渋谷でウクライナに平和をと訴え、ロシアの撤退を求める行動を行いました。2月24日、ウクライナでの戦争が始まった日から呼びかけをした急な行動でしたが、約1000人が参加し、趣旨に全国で240人が賛同する広がりとなりました。
ウクライナやロシアの方も、戦争反対を強く訴え、多くの市民が戦争を終わらせるため行動したいと望んでいることが明らかになりました。
こうした状況を踏まえ、ウクライナにおける平和の回復のため、下記を要請します。
1 いかなる軍事大国も武力による意思の強制は許されない。日本政府は、平和的な外交努力で、ロシア軍の撤退を呼びかけること。
2 日本政府自らが、軍備増強を行わず、核兵器による威嚇や脅迫にくみしないこと。
3 広島・長崎への核爆弾の投下、福島での原発事故を経験した日本として、核の被害の大きさと深刻さを世界に訴えること。
4 多数の死傷者・難民がでているなかで、難民救援や自国への受け入れ・医療や衣食住など人道支援に全力を尽くすこと。
区議会での国政に関する審議とは
さて、今回は区議会とは別のことを…と最初にお断りをしましたが、「区議会物語」ですので、区議会でのことも少し書いておきたいと思います。区議会で、安全保障など国政のことについて議論や質疑が全くされないかといえば、そんなことはありません。特に区民からの陳情では、国政に関するものがしばしば出されます。
今定例会中にも、次のような陳情が出されました。
1)日米地位協定の抜本的改定を政府に求める陳情
2)核兵器禁止条約締結国会議にオブザーバー参加を国に求める意見書を提出することについての陳情
こうした国政に関する陳情は、ほぼ総務委員会に付託されます。
内容について簡単に説明すると、1の陳情の主な要旨は、次の通りです。
日本国内でのコロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大は、在日米軍基地由来の可能性があるとされているにもかかわらず、米軍基地は治外法権となっていて米軍には日本の法令や条例などを守る義務がありません。また米軍関係者は日米地位協定第9条により、日本の入管法の適用や検疫が免除されているため、基地から直接、出入国できるようになっています。このことが根本的な問題であると考えた陳情者は、「日米地位協定の抜本的な見直し、米軍への日本の国内法の適用、事故現場への日本側の立ち入り調査、日米合同委員会の議事録の公開などを実現すること」を求めており、この要望に沿った意見書を区議会から国に出してほしいとの陳情だったのです。
私(無所属の会)としては、米軍関係の事件や事故があっても日本側からは現場検証もできないという日米地位協定の問題やその理不尽さについては再三指摘されて来たことなので、陳情を採択することに賛成をしました。しかしながら賛成少数で委員会では不採択となりました。残念です。
そして2の陳情はシンプルに「核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を国に求める意見書を提出してください」というものでした。
これについては、以前より岸田政権になってからオブザーバー参加には前向きだという報道もされて来たことですし、外務省HPにも日本政府の立場として「核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たし、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく」とあります。与党・公明党の代表も昨年までは「オブザーバー参加を」と語っていたようなので、これは可決になる可能性もあるなと思っていました。しかも何より、豊島区は1982(昭和57)年7月2日に、世界の恒久平和を願い、東京23区で初めて「非核都市宣言」を行った区です。宣言文の最後では「豊島区及び豊島区民は、さらに他の自治体とも協力をし、核兵器完全禁止・軍縮、全世界の非核武装化にむけて努力する」と高らかに謳っているのです。そしてちょうどこの総務委員会の開かれている日は、ロシアのウクライナ侵攻のニュースが流れたばかりでしたので、意見表明ではそのことにも触れつつ、いまこそ平和が大事であるというメッセージを出すべきではないか、という思いも述べた上で、この陳情の採択に賛成をしました。しかしながら、各委員の質疑を聞いていると、どうも後ろ向きな発言が続き、こちらも委員会では賛成者少数(無所属の会と共産党)で、継続審査が多数となってしまいました。誠に残念です。
こうした国政マターの場合、各会派の委員の議論を聞いていてもなんだか釈然としないことも少なくないのですが、所属をしている政党の方針に従わなくてはならないという事情もあるのでしょうね。地方議会によっては、それぞれの会派独自の判断に任されているところもあると聞くのですが、豊島区はその辺りとっても堅い印象です。与党が圧倒的多数の我が議会では、国の方針と違う結果にはまずならない、ということも、この3年の間に思い知りました。これでは質疑の前から結果が見えていて、もう「茶番」ぽくって虚しいのですが、議事録に残すことにも意味があると考え、しっかり発言するように努めています。
さて、次はこんなにコラムの間が空かないように、先日終わったばかりの令和4年度予算の審議のことから書きたいと思います。