【特別インタビュー】次にやってくる「改憲テーマ」はこれ!? 「国会議員の任期延長」は本当に必要か

今年7月の参議院議院選挙で、改憲に積極的ないわゆる「改憲勢力」が、国民投票のための改憲案発議に必要な3分の2以上の議席を維持しました。衆議院でも同様の状況となっていることから、一部政治家からは「できるだけ早く改憲案発議を」と主張する声も聞かれます。
「今後の動きで注目しておくべきは、『9条と自衛隊』でも『国家緊急権』でもなく、緊急時における『国会議員の任期延長』についてです」と指摘するのは、長く被災地支援に取り組み、緊急事態条項に関しても詳しい弁護士の小口幸人さん。以前にもこの問題について解説いただきましたが、最近になって再び「任期延長」が「本命」の改憲テーマとして浮上してきているといいます。しかしその議論には、根本的な誤りと問題のすり替えがある、とも。どういうことなのか、詳しく解説いただきました。

なぜ今、「国会議員の任期延長」なのか

 今年(2022年)の通常国会では、憲法に関連する問題を議論し、改正草案の審査・採決を行う「憲法審査会」が例年以上のペースで開催されました。特に衆院では15回と過去最多の回数でしたが、そこで自民党や公明党、国民民主党の委員が、そろって「早急に議論すべき」と発言したのが「国会議員の任期延長」についてです。
 これは、大規模な災害などによって緊急事態に陥り、予定されていた国政選挙が行えないときに備えて、国会議員の任期を延長できる規定を憲法に書き込もうというもの。以前にこちらでお話ししたように、2016年ごろにも話題に出ていたものですが、最近になって再びメインの改憲テーマとして持ち出されるようになりました。
 4月7日の衆院憲法審査会では、自民党の筆頭理事である新藤義孝議員が、「中間的な取りまとめとして論点の確認をしたい」と述べた上で、国会議員の任期延長のための改憲を行うことについては、「更に議論すべき項目が残るものの、方向性としてはおおむね意見の大勢であった」と発言しています。もちろん野党は後から「それは新藤議員の私見に過ぎない」と反論していますが、ともかく自民党が「憲法改正して任期延長の規定を設けるべきという意見が大勢だった」と印象づけようとしていることは間違いありません。次の通常国会で憲法審査会が開かれれば、ここから議論がスタートすることになるでしょう。
 なぜそうなったのかといえば、「実現可能性のある改憲テーマがそれくらいしかない」からだと思います。
 改憲を目指す人たちにとって「本丸」が9条であることは変わりないのでしょうが、賛否の分かれるテーマですから、とりまとめて発議にまでこぎ着けられる見込みはほとんどありません。そして、9条改正にこだわり続けていた安倍首相が退陣し、その後の菅首相、岸田首相はいずれも、改憲にはまったく関心がない。そのため、自民党としても9条改憲を進めていこうとするエネルギーがしぼんでいったのだと思います。
 緊急事態における政府への権限集中──国家緊急権も、6年ほど前に改憲テーマとしてかなり注目されましたが、「人権が保障されなくなる」という声が高まって反対の世論が盛り上がり、立ち消えになったという経緯があります。
 しかも、必要性を訴える人たちが口にしていた「世界の多くの国の憲法に緊急事態条項が設けられているのだから、日本の憲法にも設けるべきだ」という主張は、ほぼ意味をなさないことが明らかになってきました。自民党改憲案にあるような、政府の権限を強める内容の緊急事態条項を持つ国は世界的に見ても決して多くなく、緊急事態においても制限してはならない人権の内容を規定するなど、むしろ政府の権限を縛る内容を定めている国が多いことが分かってきたのです。憲法審査会事務局も、今春の憲法審査会での報告でそのことを指摘しています。
 「設けるべきだ」という根拠が完全に崩れてしまった上、議論を進めようとしても再び世論の強い反対にぶつかることは間違いない。ですから、政府への権限集中がこの先憲法改正の本命として本格的に取り上げられる可能性は低いと思われます。
 しかし、自民党にとっては「改憲」の主張そのものを引っ込めてしまうことは、選挙の際の集票にもかかわります。そこで、なんとか議論を止めないために、よりハードルの低い「国会議員の任期延長」に、改憲の軸足を移すことになった。それが、今年の憲法審査会で起こっていたことだと思います。

 といっても、この「国会議員の任期延長」が、たちまち改憲案として国会で発議されるとは私自身も考えていません。後で述べる理由により、衆参両院の憲法審査会で可決されるのは、それほど簡単ではないだろうと思うからです。
 ただ、今後のメディアの取り上げ方などによっては、その予想が覆されることがないとは言い切れません。来年の通常国会で憲法審査会が始まれば、まるでこの「国会議員の任期延長」が非常に重要なテーマで、そのための議論も大詰めにまで来ていると思えるような報道も出てくるでしょう。それに流されてしまわないために、この「国会議員の任期延長」改憲が決して必要なものとはいえないこと、そしてそれをめぐる議論に根本的な誤りが含まれていることを、皆さんに知っていただきたいと思っています。
 少々細かい説明になりますが、お付き合いください。

54条2項の問題は、「すでに決着がついた」

 すでに述べたように、「国会議員の任期延長」というテーマ自体は、2016年にも取り上げられていたものです(そもそも任期延長では解決できない課題がいくつもあるなど、その問題点についても前回の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください)。ただし、今回議論されている内容は、6年前とは少し様相が違ってきています。
 6年前は、「国会議員の任期延長が必要」な理由として持ち出されていたのは、主に憲法54条2項の不備でした。

憲法第54条2項:衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

 つまり、衆議院が解散されたばかりのタイミングで大災害が起こり、総選挙が行えなくなった場合には、衆議院議員がいなくても参議院の緊急集会を開けるので、そこで災害対応に必要な措置を定めることができる。しかし、予定されていたのが解散ではなく任期満了に伴う総選挙の場合、この54条2項に当てはまらないので、参議院も緊急集会を開くことができず、緊急措置を取ることができない。その場合に備えて、議員の任期を延ばすことができる規定を書き込むべきだ──。それが、改憲を求める人たちの主張でした(そもそも「任期満了に伴う総選挙」というものが、戦後1回しか行われていないレアケースなのですが)。
 前回の記事ではこの問題について、災害が起こった後、任期満了までの間に形だけ衆議院を解散するか、54条2項を「解散だけではなく任期満了のときも含む」と解釈することで、改憲なしでも十分に対応できる、と指摘しました。ただ、後者については当時はまだ、研究者によるしっかりとした文献が出ておらず、根拠としては弱い部分があったといえます。
 それがこの6年の間に、何人もの研究者が「解釈で対応できる」と明言するようになりました。特に、憲法審査会にも何度も参考人として招致されている長谷部恭男さん(東京大学名誉教授)が、最近の著書の中で、別の研究者の意見を引用しつつ「任期満了によって衆議院議員がいなくなった場合でも、内閣は緊急の必要に応じて参議院の緊急集会を求めることができると考えるべきである」と書かれていることは大きいと思います。
 これを受けて、今春の憲法審査会でも、衆議院、参議院双方で「憲法解釈で対応できるという説がある」という発言が──両方とも、与党である公明党の議員の発言なのですが──ありました。それに対して特に反対意見は出ていませんから、54条2項の問題は、「憲法解釈で対応できる」ということで、すでに決着がついたと言っていいと思います。

「行政監視機能の維持」に任期延長は必要か

 となると、本来なら「国会議員の任期延長」をめぐる議論自体が、もう不要だということになるはずですが、そうはならなかった。改憲をどうしても進めたい人たちは、議論を止めないために、今度は別の理由を持ち出してきました。それが「国会による行政監視機能の維持」です。
 行政監視は、立法と並ぶ国会の重要な機能です。国会で議員が政府に質問をしたり、疑惑を追及したりすることで、行政が民意を無視して好き放題することがないように歯止めをかけるわけです。
 この行政監視機能を、緊急時にも維持しておく必要がある。そして、行政監視を参議院だけに任せることはできず、平時と同じく衆議院と参議院の両方で監視する必要があるから、やはり憲法を改正して任期延長を可能とし、衆参両院で緊急集会を開けるようにしておくべきだ、というのが彼らの主張です。54条2項についてはもう改憲の必要がないということが分かってしまったので、こういうふうに新しい理由付けをしてきたのだと思います。
 「緊急時にも行政監視機能を維持しなくてはならない」と言われれば、「そうだよね」となります。しかし、実はこの議論は、根本的な部分に問題があるのです。
 まず前提として認識しておきたいのは、国会が行政監視機能を果たせるのは、国会の開会中だけだということです。それ以外の期間、つまり閉会中の国会には、何の権限もありません。もちろん、国会議員それぞれが国会外で活動することは自由ですが、行政監視のために政策についての質問をしたり、質問主意書を出したりといった、国会という集合体としての活動はできないのです。
 そして、国会をいつ開くかというのは、基本的に内閣によって決められます(年に1回の通常国会については、毎年1月に召集されることになっていますが)。学校で習う「三権分立」の表によく出てくるように、「国会の召集」については内閣に決定権があるからです。それは、ここまでお話ししてきた「緊急集会」も同じです。先ほど引いた憲法54条2項に「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とあるように、「緊急の必要があるかどうか」を判断するのは内閣です。しかも「求めることができる」という文言なので、開くか開かないかの裁量は、完全に内閣に委ねられています。そのような、言わば内閣が開きたいときにだけ開かれる国会で、行政監視機能を十分に働かせることが果たしてできるでしょうか。
 それだけではありません。国会法の101条には、こうあります。

国会法第101条:参議院の緊急集会においては、議員は、第99条第1項の規定により示された案件に関連のあるものに限り、議案を発議することができる。

 そして国会法の99条第1項は、こうなっています。

国会法第99条:内閣が参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長にこれを請求しなければならない。

 つまり、内閣があらかじめ示した案件に関連する議案しか、緊急集会においては発議することができない。それとは別のテーマについて野党が議論したいと思っても、発議は認められていないのです。
 この点からも分かるように、緊急集会というのは緊急事態においてどうしても必要な措置を定めるためにあるのであって、そこに行政監視機能を期待することがそもそも間違いだといえます。

平時でも守られていない「臨時国会」召集の規定

 もちろん、「緊急時にも国会による行政監視機能を維持し続ける」こと自体はとても大事です。ただ、その目的を果たすために憲法に定められているのは、いま議論されている緊急集会ではなく、憲法53条にある「臨時国会」なのです。

憲法第53条:内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

 臨時国会も、召集を決定するのは内閣です。ただ、重要なのは53条の後段。衆参どちらかの議院の総議員の1/4以上が要求すれば、内閣はその召集を「決定しなければならない」と書いてある。内閣が国会を開きたくないときでも開かざるを得ないようにしてあるわけで、これはまさに、国会が行政監視機能を果たせるように憲法が用意した「歯止め」だといえます。
 ところがその「歯止め」は今、平時ですら機能していない状況にあります。2017年6月、森友学園や加計学園の問題が持ち上がっていたときに、野党が臨時国会の召集を求めましたが、当時の安倍政権は応じず、結局召集をしたのは98日も経ってから。しかも、その臨時国会の冒頭で衆院は解散され、審議は行われないままになってしまいました。今、一部の野党議員が原告になって、「要求があったのに臨時国会を召集しないのは違憲だ」とする訴訟が続いており、私も弁護団の一員に加わっています。
 さらに、一昨年も昨年も、そして今年も、政府は野党の要求を拒否して、なかなか臨時国会を開こうとしませんでした。そのように平時にできないでいることが、緊急時にできるはずがありません。「行政監視機能の維持」を言うのであれば、早急に議論すべきはこちらの問題ではないのでしょうか。それがなぜか、相変わらず54条──行政監視機能とは関係のない緊急集会についての議論をしているという、非常におかしなことになっているわけです。

必要なのは、「解散権」をめぐる議論

 また、もう一つ指摘しておきたいのは、本当に「行政監視機能の維持」を目指すのなら、「解散権」こそが改憲論議のテーマになるはずだということです。
 「参議院だけでは行政監視機能が不十分」「衆議院も必要」だという主張に従うなら、監視機能の強弱は国会議員の人数に影響されるということになります。では、もっとも監視機能が弱まるとき──つまり、国会議員の数がもっとも少なくなるのは、どんなケースでしょうか。
 まず、衆議院が解散、もしくは任期満了となるタイミングで緊急事態が起こった場合は、ここまでお話ししてきたとおり。憲法54条2項に基づいて参議院の緊急集会を開き、参議院議員全員で対応することになります。
 では、参議院が任期満了するタイミングの場合はどうか。それだけなら、参議院は半数改選なので、議員は半数残っている。ですから、衆議院全員と参議院の半数で緊急事態に対応できるということになります。
 問題なのは、参議院の任期満了に合わせて衆議院が解散された場合。いわゆる「ダブル選挙」前に緊急事態が起こったというケースです。衆議院議員は解散でいなくなり、参議院も任期満了で半数がいなくなっていますから、残り半数の参議院議員のみによる緊急集会で対応するしかありません。つまり、このパターンがもっとも国会議員の数が少ない=行政監視機能が弱いということになると考えられます。
 ですから、「緊急事態においても行政監視機能を維持するために改憲すべきだ」という主張に従うなら、まずはダブル選挙、参議院の任期満了に合わせた衆議院の解散を禁止することが検討されてしかるべきだといえます。それなのに、まったくそこの議論は出てきていません。
 さらに言えば、日本ではそもそも「解散」が多すぎるという問題があります。先に少し触れたように、戦後の日本で衆議院が任期満了にまで至ったのはたった1回だけ。あとはすべて解散権が行使されています。その解散権に制限をかけて、解散の回数自体を減らせば、緊急事態においても行政監視機能を維持できる可能性は高まるはずなのに、その議論がまったく行われていないこともおかしいと思います(実は憲法審査会では、事務局から、世界の憲法の多くには緊急時の解散を禁じる解散権の制限が定められているとも報告されています)。
 つまり、「行政監視機能の維持」のために任期延長の規定を設けなくてはならないといいながら、本当に必要なテーマについてはまったく議論されていない。そして、行政監視機能とはまったく関係ない、「欠陥」についてもすでに決着が付いているはずの54条2項の改正が、相も変わらず主張されている。目的と、やっていることがまったくかみ合っていないといえるでしょう。

任期延長は、国民の声を政治に反映する機会が奪われるということ

 最初に、この「国会議員の任期延長」改憲案が国会発議までに至る可能性はそれほど高くないと申し上げました。ここまでご説明してきたように、議論が根本的に誤っているから、だけではありません。国会発議のためには衆議院だけでなく、参議院の憲法審査会でも改憲案を決議する必要がありますが、参議院の憲法審査会は現状、この議論に対して反発しているからです。「緊急時の措置を取るのに、参議院だけで決めるのは頼りない」と言われているようなものですから、当然でしょう(2022年の通常国会でも、参議院憲法審査会では緊急事態条項をメインテーマとした議論は行われませんでした)。
 それでもなお、この議論の無意味さ、おかしさを皆さんに知っておいてほしいと思うのは、こんなくだらないことに無駄な政治コストを消費してほしくないと思うからです。ずっと災害復興支援に携わってきた立場からすれば、「緊急事態」に備えてやるべきことは他にたくさんあります。
 たとえば、前回の記事でもお話ししたように、インターネットや郵便を使って、指定された投票所まで足を運ばなくても投票できる、災害などの影響を受けにくい選挙制度を整えることは、何よりの急務でしょう。そうなれば、「国政選挙が行えない場合」に備える必要性は今よりはるかに低くなります。
 そして、「可能性が高くない」とはいえ、何かの間違いでこの「任期延長」が改憲案として国会で発議され、可決されて国民投票にまで至ることがないとは言い切れません。そして、9条などに比べて「無色透明」に感じられる内容なだけに、国民投票で「賛成」が過半数を占めてしまう可能性も、ゼロではないでしょう。
 しかし、この改憲で解決する問題が果たしてあるでしょうか。行政監視機能には無関係だということはすでにご説明してきたとおりですし、緊急事態への対応についても、大人数で議論したから適切な対応ができるというものではない。むしろ、議論に時間がかかって必要な措置が迅速に取れなくなる懸念のほうが強いと思います。
 しかも、議員の任期を延長するということは、選挙の機会が減ってしまうということでもあります。それはつまり、国民が自分たちの声を政治に反映する機会が減るということ。特に緊急事態においては、それまで直面したことのない状況だからこそ国民の真意を問う必要が大きいはずですが、それができなくなってしまうわけです。たとえば、福島第一原発事故があって間もなくに国政選挙があったとしたら(実際の直近の選挙は翌年12月の衆議院選挙でした)、今頃もっと「脱原発」は進んでいたのではないか? と考えると、その重要性が分かるのではないでしょうか。
 そして何より、議員の任期延長は、ときの政府、与党によって濫用されるおそれがあります。たとえば典型的な濫用パターンとしては、支持率が著しく低下し、来月の任期満了による選挙を迎えたら政権交代になってしまう、そんな世論調査に直面した政府与党が、さほど大きくない災害やミサイルの発射等を理由に「選挙が実施できない恐れがある」として任期延長を行い、緊急時対応を通じて支持率を上げて、都合がよくなったタイミングで選挙を行う──。こうしたことは、容易に想像できると思います。

まずは「先にやるべきこと」を

 ここまで見てきたように、実現しても何の問題解決にもつながらない、一方で、国民が選挙を通じて自分たちの声を政治に届ける機会が奪われてしまう可能性や濫用の恐れだけがある。そんな無意味な「改憲」のために、根本的にずれた議論が続けられ、無駄な時間やコストが浪費されているというのが、今の状況だといえます。
 もちろん、細かいケースを考えていけば、議員任期延長の必要性が全くないとまでは言い切れないかもしれません。しかし、ものには順序というものがあります。すでにご説明してきたように、最低限、下記についての議論が先になされるべきでしょう。

①インターネットや郵便を使い、指定投票所まで足を運ばなくても投票できる、災害に強く、復旧も早い選挙制度に改める。
 我が国は国民主権であるとともに災害大国なのですから、「災害が起きたから選挙は延期」では困ります。国政だけではなく地方自治体の選挙だって、延期は困るのです(東日本大震災の際も、翌月に予定されていた地方統一選挙が、被災地では延期されることになりました)。

②憲法53条後段違反(内閣による臨時国会召集の拒否)が続いていることについての対策を講じる。
 行政監視機能強化は確かに大事で、平時でも機能していない現状は大問題ですから、これについて議論する必要があります。

③「多すぎる解散」を防ぐため、解散権について一定の制限を設ける。
 ②③とも法律で定めることも可能でしょうが、権力者を「縛る」内容だけに、あえて憲法に明記する、法改正ではなく憲法改正で対応するという議論も十分に成り立ちうると思います。

 以上の議論を経た上で、「それでもどうしても国会議員の任期延長が必要な場面がある」という意見──例えば「南海トラフ地震でも電力や通信が概ね復旧するまでには4日~1週間程度かかる見込みだから、1~2週間程度の選挙延期は必要なのではないか、公職選挙法に繰延投票の定めもあるけれど、それも不健全だから憲法でしっかりと定めるべきだ」といった声が出るようなら、改めて任期延長について議論し、本当に必要だということになればそこで初めて改憲発議をすればいいというのが私の考えです(ここまでのステップを踏んだならば、任期延長が必要となるケースは少なく、必要となる延長期間も短くなるので、出てくる改憲案は濫用の恐れも大幅に下がったものになるはずです。結果として、国民の賛同も得やすいでしょう)。しかし、これらのステップを踏まずに、必要な検討もしないまま、議員の任期だけ伸ばせるようにしようという今の議論は絶対にダメだということです。

 現状の議論の問題点と、「それよりも先にやるべきこと」について、一人でも多くの方に知っていただければと思います。

(取材・構成/仲藤里美)

おぐち・ゆきひと 1978年生まれ、東京都町田市出身。中央大学卒業後、会社勤務を経て弁護士を志し、2008年に弁護士登録。東京勤務を経て、司法過疎地である岩手県宮古市の「宮古ひまわり基金法律事務所」三代目所長に就任。同地で東日本大震災に遭い、全国初の弁護士による避難所相談を実施。被災者支援・立法提言活動に奔走する。2016年、沖縄で「南山法律事務所」を開所。日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事、同災害復興支援委員会幹事なども務める。

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