三上智恵監督・新作『沖縄、再び戦場(いくさば)へ』(仮題)~スピンオフ作品上映会に行ってきました~(柳田茜)

 マガジン9で連載中の「三上智恵の沖縄撮影日記」でお知らせのあった新作『沖縄、再び戦場へ』(仮題)スピンオフ作品上映会が、4月2日、世田谷区太子堂区民センターで開催されました。そのレポートをお届けします。

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 近年、南西諸島に陸上自衛隊の駐屯地が新設され、ミサイル部隊の配備など、軍事要塞化が急ピッチで進んでいます。ジャーナリストで映画監督の三上智恵さんは現在、このような再び戦場になりかねない沖縄の厳しい状況を伝える新作映画を制作中です。しかし、来年の公開までには間があり、現時点での沖縄の危機感を共有してほしいとの思いから、新作の撮影と同時にマガジン9での連載「三上智恵の沖縄撮影日記」に上げてきた映像を中心に、45分のスピンオフ(番外編)作品を制作。DVDの貸出による自主上映の開催を呼びかけており、「ぜひ見たい」との声をあげたさまざまな市民団体やグループによって、全国各地で上映会が行われています。

 今回、私が参加した上映会を主催したのは、市民連合めぐろ・せたがや。目黒区・世田谷区で、野党各党と市民が連携し、民主主義と立憲主義を尊重する政治の実現をめざす市民団体です。統一地方選挙を前に、野党候補の応援活動にそれぞれが忙しいさなか、38名が集まりました。

 スクリーンに映し出されたのは、ミサイル基地が建設され、自衛隊が家族と共にやってきて、戦車が公道を走るようになった島々の今。のどかな暮らしを脅かされている石垣島、与那国島、宮古島の人々、そして過去最大規模といわれる日米共同軍事演習「キーン・ソード23」の実施に体を張って反対をする人々の叫びが響きます。

 上映後、参加者からは「沖縄の現実が改めてよくわかる作品だった」といった感想が多くあがっていました。また、自らの沖縄とのかかわりや、幼いころのかすかな戦争の記憶を語る方もいました。感想を述べ合う中で、一人の方が「みなさん、この作品を見る前に沖縄がこういう状態になっていることを知っていましたか?」と問うと、ほぼ全員が手をあげました。主催した市民連合めぐろ・せたがやは、普段から国政の動きを追い、地域で活動を続けている団体なので当然ではありますが、大切なのは外に広く伝えていくこと。「今日、この作品を見た私たちが、身近な人たちに『こんな映画を見たよ』と話しましょう」という提案もありました。

 三上さんは、スピンオフ作品上映会の開催にあたり、ステートメントとして「観客として見るのではなく、私たちが必死に渡す情報を受け取って、みなさんも必死に地域に発信するサテライトになってほしい、平和を作る力のある人たちを掘り起こすツールにしてほしい」と記しています。

 沖縄では、過去の戦争で悲惨な地上戦が繰り広げられました。この作品を見れば、美しい島々を軍事要塞化し、再び戦場にしようとすることの罪深さを思わずにいられません。「沖縄で今、こんなことが起きているよ」と人から人へと伝わり、スピンオフ作品上映会が広がっていくことを願っています。

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●三上智恵監督 最新作『沖縄、再び戦場へ』(仮題)
スピンオフ作品(45分)上映の申し込みはこちらから。

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