新聞、TV、インターネット、書籍など、メディアを問わず、マガジン9スタッフがそれぞれに、最近の「気になるニュース」をピックアップ。今後も注目していきたい内容、なんだか違和感を覚えたもの、ぜひシェアしたいもの……などなど、好き勝手に集めてみました。みなさんは、どのニュースが気になりますか?
→「時代の正体〈515〉朝鮮人追悼文取りやめ問題(上)殺され続ける存在として」(カナロコ/神奈川新聞ニュース 9月3日)
1923(大正12)年9月、関東大震災が発生した直後から、多くの朝鮮人、中国人、日本人などが虐殺された事件。小池百合子都知事は今年から、朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送付しないことを決めました。この記事は、9月1日に墨田区の都立横網町公園でおこなわれた追悼式をめぐるさまざまな動きを追った迫真のレポートです。
記事中にある8月31日の都庁前抗議集会には、私も途中から参加しました。虐殺の実相は、2014年に出版された『九月、東京の路上で』(加藤直樹著/ころから刊)に詳しく書かれていますが、これはこの国に暮らす私たちみんなが語り継いでいかなければならない事件です。政治家からヘイトデモに参加するような一般人まで、負の記憶を「なかったこと」にしようとする勢力に対抗するためにも。(海部京子)
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→〈日航機〉エンジンから火、緊急着陸 バードストライクか(毎日新聞 9月5日11時54分配信)
またもひやっとする航空機トラブル。原因は「バードストライク」とのことですが、だから仕方ないではすまされないのが、飛行機事故。車であろうが列車であろうが、事故のリスクは全ての乗り物につきものでしょう。しかし旅客機が「墜落」した時のリスクは、圧倒的で破滅的に大きい。それを思い知らされたのは、1985年8月12日に起きた日航123便事故でしょう。あのような悲惨な飛行機事故は二度と繰り返してはいけないと、度々検証番組なども放映されていますが、森永卓郞さんがコラムで紹介されたように、今なおその事故原因については諸説あり、ぞっとするような「真事実」が隠されているかもしれません。
そして様々ある飛行機事故の原因やそのリスクを考えた時に、やはりどうしても気になるのは、現在進行中の羽田空港増便に伴う都心上空低空飛行問題です。渋谷や新宿という都心の超密集地域の真上が、離着陸時のコースになることで、日常的に起きるであろう騒音や落下物の問題が注視されていますが、私はやはり「墜落」が心配。万が一、都心の密集地に航空機が墜落したらその被害はどのぐらいになるのか? 「そんなリスクは想定していない」と、管轄の国土航空局担当者は、説明会の時に答えていましたが、最悪の場合を想定して、そのリスクをしっかりと住民に説明するべきではないでしょうか。そして「こんなリスクがありますが、羽田増便で観光客の増加がこのぐらい見込めて、経済効果があります。どちらを選択しますか?」と住民に問うべきではないでしょうか。そんなことを改めて強く思います。(その後のニュースで、エンジントラブルの原因はバードストライクによるものでないことが判明。整備やチェックの合理化による人的ミスであれば、なお深刻です。)
*(都心低空飛行問題については、こちら→「秀島一生さんに聞いた:安全より経済優先!? 羽田増便による都心低空飛行問題」(塚田壽子)
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→「生命尊重の日」条例施行 産まない選択への圧力懸念(朝日新聞 7月5日)
少し前のニュースですが、石川県加賀市で7月13日を「お腹の赤ちゃんを大切にする 加賀市生命尊重の日」と定める条例が施行された、というニュースです(施行は6月)。
「生命尊重」という言葉自体に、異を唱える人はまずいないでしょう。しかし、「お腹の赤ちゃんを大切にする」という言葉、そしてこの7月13日という日が、堕胎罪の例外として妊娠中絶を可能にする規定が設けられた優生保護法(現・母体保護法)が公布された日(1943年)であることを考え合わせると、そこにはまた別の意味が生まれてきます。記事の見出しにもあるように、「産まない」という選択を否定し、圧力をかけるものになりかねません。
もちろん、迷わず「産む」選択をできるのなら、それはそれで幸せなこと。けれど、現実問題としてすべての妊娠がそうであるとは限りません。どうしても産めない事情があったり、性暴力に遭った結果であったりする場合もある。そのときにどんな選択をするかは、あくまで個人(女性とそのパートナー)の自己決定に委ねられるべきでしょう。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)を専門とする法学者・谷口真由美さんへのインタビューもぜひ読んでみてください。(西村リユ)
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→「自主避難者」震災統計から除外 避難継続、疑問の声も(朝日新聞デジタル 8月28日8時23分配信)
福島第一原発事故の影響によって、全国に避難した人たちのうち、避難指示区域外からのいわゆる「自主避難者」への住宅無償提供が打ち切られてから半年がたちました。それによって、避難生活を継続していても「避難者」と見なされない人たちが出てきています。住宅無償提供打ち切り直前の今年3月に、「この人に聞きたい」のコーナーでお話をうかがったフリーランスライターの吉田千亜さんは、これから避難者が「『見えない存在』にされていく」と危惧していましたが、まさにその通りになっているのではないでしょうか。(中村)
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→31%が国外退去、9%がディーゼル車規制、教育は0%(シュピーゲルオンライン 9月4日)
ドイツの週刊誌『シュピーゲル』のウエブサイトは、今月24日に行われるドイツの総選挙を前に、9月3日の夜に放映されたアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟)と対立候補であるマルティン・シュルツ氏(ドイツ社民党)のテレビ討論について報じました。日本のメディアでもこの番組については取り上げられましたが、『シュピーゲル』が強調したのは、討論の31%は移民、難民、国外退去、イスラムの問題だったこと。有権者の37%が社会的公正に関心をもっているというアンケート結果があるにもかかわらず、です。気候変動対策、ケア、保健政策、軍備、極右といったテーマは皆無。教育やデジタル社会についてはメルケルがキーワードとして挙げただけでした。
こうした結果になったのは、年金や失業、社会福祉といった分野でシュルツ氏が対立点を見出せなかったからもしれません。
この番組を見たドイツの知人は、メルケルの人気は、彼女が他の政治家のような論争はしない、党是に必ずしも従わない、という点にあると言っていました。「ドイツと語る」で村瀬さんが指摘した「メルケルはドイツの母」ゆえでしょうか。とはいえ、移民・難民問題が欧州各国で深刻な問題になっていることは間違いないようです。(芳地隆之)