第54回:2018年、ぼくのニュースファイルから その2(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 今年を振り返る主な出来事、その2〔5月~8月編〕です。あまりにひどいニュースが多すぎて、忘れてしまいたいことも多いでしょうけれど、過去は現在へ、そして現在は未来へつながります。
 憶えておかなければならないことも、あるのです。

5月2日
 伊藤忠商事は、日本政府や三菱重工業などとともに進めているトルコでの原発建設計画から撤退を表明。アベノミクスの原発輸出に暗雲。
5月4日
 麻生太郎財務相、福田淳一事務次官のセクハラ問題に関し「セクハラ罪という罪はない」と発言。この男の妄言には、もうウンザリ。
5月7日
 ストックホルム国際平和研究所の発表によると、2017年の世界の軍事費は、前年比1.1%増の1兆7300億ドルで、冷戦終結後で最高となった。

 同日。金正恩委員長が中国を再訪。習近平主席と会談。

5月8日
 米トランプ大統領は、2015年に米英仏独中ロの6ヵ国とイランが結んだ「核合意」からの離脱を表明。トランプ外交が世界中に火種をばら撒く。
5月9日
 大飯原発4号機再稼働。だがすぐに不具合が発生、10日に一旦停止。
5月10日
 柳瀬唯夫元首相秘書官は、国会に参考人招致され、2015年に加計学園関係者と首相官邸で3回にわたり面会したと“自白”。だが「首相には報告せず」と答えた。嘘と隠蔽と捏造にまみれた安倍官邸と加計学園の共謀芝居。
5月11日
 愛媛県の中村時広知事は、県職員が柳瀬秘書官と面会した際に受け取った柳瀬氏の名刺を公開。柳瀬氏のウソがまたバレた。厚顔無恥!

 同日。廃炉が決まった高速増殖炉もんじゅに、これまでに少なくとも1兆1313億円が投じられたことが、会計検査院の調査で判明。さらに、廃炉費用は3750億円の試算だが、それを超える可能性も指摘。どぶに捨てた大金!

5月14日
 米政府は在イスラエル大使館を、テルアビブからエルサレムへ移転。ガザでは抗議デモで60人以上が死亡。血まみれのトランプ!
5月15日
 防衛省は情報公開請求で「ない」と回答後、調査した結果計7件の文書が新たに発見されたと公表。次々に出てくる“お宝文書”。いい加減にしろ!
5月16日
 参院本会議で、選挙での候補者数をできるだけ均等にするよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」が、全会一致で可決成立。だが実際は、道遠しの感。

 同日。経産省がエネルギー基本計画を発表。2030年度の原発比率は20~22%と明記。原発依存を鮮明にした。懲りない原発ムラの面々。

5月17日
 日立製作所が英で計画中の原発新設事業で、英政府が総事業費のうち2兆円を融資するとの譲歩案。原発建設費の異常な高騰。もはや原発は経済合理性を無視しなければ成り立たない。
5月18日
 麻生財務相が「セクハラ罪という罪はない」と発言したことを巡り、政府は「現行法令において『セクハラ罪という罪は存在しない』とする答弁書を、閣議決定した。立憲民主党の逢坂誠二議員の質問主意書に答えた。もうここまでくると、閣議決定で何でも決めちゃうアホ政府というしかない。

 同日。佐川宣寿前国税庁長官の虚偽公文書作成容疑について、大阪地検特捜部は不起訴とする方針を決定。何をやっても許されるのだ。

5月21日
 安倍首相が2015年2月25日に加計孝太郎氏と面会、「新しい獣医学部の考えはいいね」と発言していたと、朝日新聞がスクープ。安倍首相のウソがまたバレた。安倍首相は否定。
5月25日
 働き方改革関連法案(高度プロフェッショナル制度の導入等)を、衆院厚生労働委員会で、自公与党がまたも強行採決。過労死法案とも呼ばれた悪法。

 同日。籠池夫妻が10カ月ぶりに保釈。

5月26日
 韓国文大統領と北朝鮮金委員長が、板門店で再会談

 同日。加計学園側は、安倍首相と加計理事長が面会したとの愛媛県の記録は「実際はなかった面会を、あったかのように愛媛県と今治市へ伝えてしまった誤情報だった」と発表。誰が聞いてもウソ。それでも安倍首相のために…。

5月28日
 安倍首相は予算委で、「森友問題で、もし私や昭恵が関与していたら首相も議員も辞める」との発言を「金品の授受というような文脈においては一切の関与はない」と発言の中身をすり替え。またも安倍話法!
5月31日
 米トランプ政権は、欧州連合(EU)とカナダ、メキシコに6月1日から鉄鋼に25%、アルミ製品に10%の関税を上乗せすると発表。EUも報復表明。

 同日。東芝は、米テキサス州での原発新設計画から撤退を表明。

6月1日
 最高裁は、正社員と非正社員の待遇差が、労働契約法が禁ずる「不合理な格差」に当たるとして、同じ職務の契約社員にも正社員と同じ手当を支給するよう命じる判決を下した。

 同日。イージス・アショアの配備候補地として、防衛省は秋田・山口両県に決めたと通告。地元は強く反発。朝鮮半島和平の兆しの中で、なぜこんなものが必要かの根拠は揺らいでいるのに。

6月7日
 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会」は、1350万人の請願署名を野党6党派の代表に手渡した。

 同日。南海トラフ巨大地震が起きた場合、1410兆円に及ぶ被害が出ると、土木学会が公表。首都直下では778兆円との試算も。

6月10日
 新潟県知事選で、自民公明が推す花角英世氏が野党の推す池田千賀子氏を破って初当選。柏崎刈羽原発の再稼働に大きな影響も。
6月11日
 東京高裁は、1966年の一家4人殺害事件で死刑が確定していた元プロボクサーの袴田巌さん(82)に、再審請求を認めない決定。静岡地裁が14年に下した再審開始を取り消したもの。数々の新証拠を無視。

 同日。米トランプ大統領と北朝鮮金正恩委員長がシンガポールで歴史的会談。金氏は「完全なる非核化」を約束し、トランプ氏は「北朝鮮の体制を保証」とする共同声明を発表。

6月14日
 東電の小早川智明社長が、福島第二原発4基すべての廃炉を表明。これで福島県の全原発は廃炉に。遅かったとはいえ、当然。
6月15日
 九州電力が玄海原発4号機(佐賀)の再稼働。九電にとっては、川内1、2号機、玄海3号機に続いて4基目の再稼働。
6月18日
 大阪直下の震度6弱の大地震。府内では4人死亡。都市機能が完全にマヒ。武器を買うより、災害に強い都市づくりに金を使うべき。
6月19日
 会計検査院は、森友学園への土地売却で「財務省の改竄文書提出は会計検査院法の規定に違反」との中間報告を公表。

 同日。水戸市議会は、東海第二原発再稼働に反対する意見書を賛成多数で採択。周辺自治体への影響も大きい。

 同日。アメリカが国連人権委から脱退。「人権委は反イスラエル」と非難。しかし日本は、トランプ氏に忖度して懸念を表明せず。

6月20日
 沖縄うるま市での、米軍属による女性暴行殺害事件で、日本政府が遺族に見舞金を支払う方針。なぜ米軍ではなく日本政府なのか。植民地!
6月22日
 欧州連合(EU)は、米への報復関税として28億ユーロ(約3600億円)規模の追加関税を発動。
6月23日
 沖縄全戦没者追悼式。翁長県知事は「民意を顧みず、辺野古の工事を進行している」と、強く安倍政権を批判。安倍首相は「基地負担軽減の結果を出す決意」と述べるが、会場からはヤジも。
6月29日
 ついに働き方改革関連法が成立。過労死法案と批判されてきた高度プロフェッショナル制度も来春4月から始まる。労働者のためではなく財界のための法。
7月1日
 メキシコ大統領選で、左派のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏が地滑り的勝利。トランプ政権との間で軋轢も…。
7月4日
 東京地検特捜部は、佐野太文科省科学技術・学術政策局長を、受託収賄容疑で逮捕。自分の息子を東京医大へ入学させる引き換えに、同大への支援事業を優先的に認めた疑い。官僚の腐敗止まらず。

 同日。原子力規制委員会は、東海第二原発(日本原電)が新規制基準に適合したとの審査書を公表。40年超の原発再稼働は「極めて特別な場合」とした審査が、次々と通ってしまう。規制委の姿勢に大きな疑問。

7月6日
 米中が、それぞれ制裁関税と報復関税導入に踏み切った。米が3.8兆円分、中国も同規模。貿易戦争本格化。

 同日。松本智津夫らオウム死刑囚7人を同時執行。前代未聞の大量処刑。

7月7日
 西日本に豪雨。死者行方不明者は最終的に237名に及んだ。なお、この前日の夜、赤坂自民亭なる大宴会が開かれ、大量死刑執行の当事者・上川陽子法相も参加してはしゃいでいた動画を片山さつき議員がツイート。大批判を浴びた。
7月13日
 総務省のまとめによれば、2017年雇用労働者数は6621万人で、前回12年の調査より179万人増加したが、そのうち非正規労働者は90万人増の2133万人で、過去最多。働き方改革はスローガンに過ぎない。
7月14日
 沖縄防衛局が、辺野古のキャンプシュワブ・ゲート前に新たな柵を、深夜に突然設置。いよいよ弾圧の色濃く。
7月18日
 参院選挙制度改革で、定数6増を柱とする自民の公職選挙法改正案が衆院本会議で成立。「身を切る改革」どころか焼け太り改定。

 同日。この日発売の「新潮45」掲載の杉田水脈自民党議員「LGBT支援の度が過ぎる」の中で、「子供を作らない、つまり『生産性』がない」とLGBTの人たちを非難したことへの批判が集中。差別もここまでくれば…。

7月20日
 カジノ法案(統合型リゾート:IR法と言い換え)を、自公与党が参院本会議で採決、成立。アベノミクス、ついにバクチに頼るしかなくなったか。

 同日。沖縄の米軍基地反対運動に対し取材なしで一方的な差別的放送をし、黒幕として辛淑玉さんの名を挙げた「ニュース女子」に対し、東京MXテレビは正式に謝罪した。なお、MXテレビは3月1日から同番組を配信停止しているが、継続中の一部地方局もある。デマを地上波で流すことの害毒。

7月26日
 6日に続いて、オウム死刑囚6人の死刑執行。ひと月足らずのうちに13人の死刑を執行。これでオウム死刑確定囚全員の処刑。世界に衝撃。
7月27日
 沖縄県翁長知事が、辺野古米軍新基地建設を巡り、仲井眞前知事の辺野古の海の埋め立て承認の撤回に向けた手続き開始を表明。翁長氏の最後の闘い。
7月30日
 防衛省は、イージス・アショア2基の配備費用が約4600億円になるとの見通しを公表。最初の1基800億円との発表はウソだったわけだ。
8月2日
 東京医大が入試の際、女子の点数を一律減点していたことが判明。なんとまあ古典的な女性差別。
8月6日
 広島市の平和記念式典出席後に被爆者団体の代表と面談したが、最後まで「核禁条約参加」を言明しなかった。アメリカの意に背く核兵器廃絶など、安倍は望んでいない。トランプの犬。
8月8日
 沖縄県知事の翁長雄志さんが、膵臓がんのため死去。享年67歳。悔しかっただろうなあ…。
8月9日
 防衛省は、2019年度予算概算要求で過去最大の5.4兆円を要求。この中にはイージス・アショアなども含まれる。使い道のない超高額兵器を米から買わされるだけ。
8月14日
 またも普天間飛行場所属のオスプレイが奄美空港に不時着。同空港への不時着は昨年6月以来4回目。また同日、嘉手納基地にもオスプレイ不時着。
8月15日
 戦没者追悼式で、安倍首相は6年連続して、第2次大戦中の日本の加害責任やその反省には触れなかった。
8月16日
 全米の新聞100紙が、トランプ氏の言論封殺に一斉に社説で抗議。アメリカの報道は、まだ生きているか…?
8月22日
 昭和天皇が85歳のころ、「長く生きても戦争責任をいわれる」などと戦争責任の苦悩を漏らしていたことが元侍従故小林忍氏の日記で判明。
8月28日
 障害者雇用の水増しは多くの省庁に拡大。国の27の行政機関で、3460人分を水増ししていた。それでよく民間企業の指導などと…。
8月30日
 東京新聞によれば、経産省は「政治家の発言は記録に残すな」と職員に指示していたことが、複数の証言で分かった。さらに、メールの破棄も指示したという。臭いものには蓋、それでも臭う官庁と官邸。
8月31日
 沖縄県が辺野古の海の埋め立て承認を正式に撤回。とりあえず工事は中断された。翁長知事の遺志と沖縄の民意。
 

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。