第20回:「災害国家、日本」に強烈な対応策を!(柴田鉄治)

 2018年も間もなく終わるが、今年を振り返って「日本は災害国家だ」とあらためて思った。もともと台風の通路であるうえ、地球を覆うプレートが4つもぶつかり合ったところに所在しているため、世界で最も地震の多いところであることはよく知られているが、今年は異常気象や異常地震に集中的に襲われた『異常な』年だったといえよう。
 なかでもマグニチュードは小さかったのに、山並みが総崩れしたほどの被害が出た北海道の地震は、100日を過ぎたのにいまだに復旧ができないほどの異常地震だった。
 こんな災害国家なのだから、日本は世界一強力な『災害対応策』を取るべきだし、いまからでも遅くないから、政策転換をすべきだろう。
 たとえば、自衛隊を「戦争のための軍隊ではなく、災害救助隊にすること」はどうだろうか。自衛隊が憲法違反の疑いがあるのに、国民の圧倒的な支持があるのは、国民が自衛隊を目にする機会は災害救助のときが多く、その印象から自衛隊に対する国民感情がすこぶるよくなったためだ。
 憲法違反の疑いが濃い『空母』やそれに乗せる戦闘機などは買うのをやめて、そのカネで災害救助用の機器を揃えれば、『世界一の災害救助隊』が生まれよう。そうなれば、日本国内の災害だけでなく、世界中の災害地へすぐに派遣して救助にあたれば、各地から感謝の声が殺到するに違いない。
 経済援助より生身の人間の『必死の努力』のほうが、現地の人々に与える影響力も圧倒的に大きいのではあるまいか。「災害があれば、日本から救助隊が来る」という評判が立つのは、日本にとっても名誉なことではないか。

気象庁のほかに「地震・火山庁」の設立を

 政府も災害対策官庁を新設することを検討しているようだ。それも結構なことだが、災害が起こってからの対策だけでなく、災害予測などの研究も大事だろう。
 異常気象も異常地震も、あるいは火山の噴火も、中央官庁としてはすべて気象庁で扱っているが、気象と地震・火山ではかなり観測対象が違う。そこで、気象庁とは別に「地震・火山庁」を設けてはどうか。津波はもちろんそこが扱う。
 地震予知は、原理的に難しいことだが、災害の予知はいろいろと可能だろう。火山の噴火も、観測網が密になればある程度、可能だ。
 一方、異常気象については、地球の温暖化と密接に絡んでいる。第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(CОP24)が今月、ポーランドで開かれたが、かろうじて分裂を免れ、温暖化対策の次期枠組みとなる「パリ協定」のルールが採択された。
 しかし、産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えることは難しく、課題を残したものとなった。各国が定めた30年までの目標をすべて達成しても2度に抑えられるレベルに達しないからで、今世紀末の気温上昇は約3度になると指摘されている。

地球温暖化、米国の「身勝手」を許すな!

 地球温暖化といえば、米国のわがままというか、身勝手というか、妨害行為には許し難いものがある。1997年のCОP3で、先進国だけの温室効果ガス排出規制が「京都議定書」としてまとまったのに、排出量1位の米国(ブッシュ=子=大統領)が後に脱退を表明。紆余曲折の末、ようやく2016年のCОP21で「パリ協定」がまとまったのに、今度はトランプ大統領が離脱を声明、混乱のもととなった。
 地球温暖化は、異常気象のもとである。地球の大気はつながっているから各国が協力しない限り防げない。排出国1位は中国に譲ったとはいえ、米国の身勝手を許すべきではないだろう。

日産自動車のゴーン会長を逮捕、世界中の話題に

 潰れかかった日産自動車を立て直したカルロス・ゴーン氏が、得ていた報酬を50億円も少なく記載していたとして、東京地検特捜部に逮捕された。日産の株主総会では直ちにゴーン氏を解任したが、フランスのルノー社の最高責任者を兼ねており、ルノー社ではゴーン氏を解任しなかったため、世界的な大ニュースとして、大きな話題を呼んでいる。
 ルノー社の筆頭株主はフランス政府で、また、日産自動車の筆頭株主はルノー社だというのだから、国際的な話題には事欠かない。
 ところで、よく考えてみると、なぜ東京地検特捜部が出てきたのか、よく分からない事件である。ゴーン氏が規定に反して超高額の報酬を得ていたのなら、日産自動車の社内で社長や会長を解任し、処分するほうが先だろう。そのあとで刑事処分を求めて告訴するのが普通である。
 そんな動きを見せたら、最高権力者のゴーン氏に「返り討ち」にされるかもしれないと心配したのか、日産自動車が地検特捜部に「司法取引」を持ちかけたようなのだ。日産自動車の経営陣に、ゴーン氏のクビを斬れる人がいなかったということか。
 地検特捜部が「巨悪は眠らせない」と豪語していた「巨悪」とは、政治家や高級官僚の犯罪で、経済人は別だと思っていた。確かにゴーン氏が悪いことをしていれば「巨悪」かもしれないが、森友学園疑惑で財務省の犯罪をすべて不起訴とした地検特捜部が、こんなところで出てきたのには、ちょっとびっくりした。
 ゴーン氏の逮捕・起訴で、日本の司法制度に国際的な非難の声があがった。取り調べに弁護士の同席が許されないとか、再逮捕を繰り返すことで拘留期間が長くなることとか、だ。確かに日本の司法制度は取り調べ側の意向に添ったもので、そのため「やっていないことまで自供させられる」など、冤罪事件多発の原因だとしばしば批判されてきた。
 ゴーン氏の逮捕で、国際的な批判の矢にさらされたことが、今後の司法改革について良い方向に働くかもしれないと期待しよう。

安倍内閣の支持率、急降下

 読売新聞社は国会が終わったところで12月14~16日、全国世論調査を実施した。前から言っているように、安倍政権を強く支持する読売新聞の世論調査の動向を見るのが、最も間違いが少ないと思うからだ。
 それによると、内閣支持率は前回より6ポイント下がって47%、不支持率は7%上がって43%、逆転こそしなかったものの急降下だといえよう。その原因は、国会審議で外国人の受け入れ業種や賃金水準など詳細は法成立後に示すとした対応が「適切18%」「適切でない65%」。沖縄の辺野古基地の埋め立て工事を進める政府の方針に「賛成36%」「反対47%」。景気回復を「実感している22%」「実感していない70%」など。
 安倍首相が最も力を入れている憲法改正についても、賛成36%、反対47%だった。
 自民党総裁に3選されたとはいえ、国民からここまで「不信任」を突き付けられた以上、そろそろ退任の時期を考えたほうがいいのではなかろうか。

今月のシバテツ事件簿
政府に見捨てられた沖縄は『独立』を!

 沖縄県民の「民意」に反して、政府は12月14日から辺野古の海に土砂の投入を開始した。美しい沖縄の海に土砂を投げ捨てるように、埋め立てを始めた光景をテレビで見つめながら、何とも言えない「いやな気分」を味わった。
 私が現役の記者時代、沖縄へは取材で訪れたり、休暇で旅行したりと何度も行ったが、その印象をひと言でいえば、海水浴を楽しんだ「海が美しい」ということに尽きる。その海を汚されたような気持ちになったのだ。
 辺野古基地の新設に断固、反対していた翁長雄志知事が急逝した後、続く知事選でも辺野古基地反対の玉城デニー氏が大差で当選し、民意ははっきりと示されたのである。
 安倍首相は「民意に寄り添う」と言いながら、その民意を平然と無視して、土砂の投入を始めたのだ。ここまでくれば、もう我慢することはない。日本政府のもとから離れて、沖縄県が独立してはどうか。
 スペインのカタルーニアなど、地方自治体が政府から独立を画策しているところは少なくない。まして沖縄は、かつて琉球王国として栄えた地域である。独特の琉球文化も持っている。
 具体的には、来年2月24日に行われる「県民投票」に、独立の是非を問う項目を設けるのはどうだろうか。その結果をもって、日本政府、米国政府と交渉するのだ。米国だって、全基地を追い出されるより「おカネを払ってもいいから置いてもらおう」と考えるかも知れない。とにかく沖縄は一度「バカにするな」と開き直ったほうがいい。

柴田鉄治
しばた てつじ: 1935年生まれ。東京大学理学部卒業後、59年に朝日新聞に入社し、東京本社社会部長、科学部長、論説委員を経て現在は科学ジャーナリスト。大学では地球物理を専攻し、南極観測にもたびたび同行して、「国境のない、武器のない、パスポートの要らない南極」を理想と掲げ、「南極と平和」をテーマにした講演活動も行っている。著書に『科学事件』(岩波新書)、『新聞記者という仕事』、『世界中を「南極」にしよう!』(集英社新書)ほか多数。