「反緊縮」という選択肢──「薔薇マークキャンペーン」が始動(西村リユ)

 財政赤字が膨らみ続ける「借金国家」のニッポン、増大する社会保障費を補うには、さらなる消費増税がどうしても必要……そんな言説が耳慣れたものになってずいぶん経ちます。まるで議論の余地のない大前提のように扱われることも多いけれど、本当にそうなのでしょうか?

 2月1日、こうした「前提」にNOを突きつける「薔薇マークキャンペーン」のキックオフ記者会見が、東京・永田町で開かれました。経済学者らを中心とする22人が呼びかけ人となったこのキャンペーンが掲げるのは、欧米左派の間で広がっている「反緊縮・積極財政」政策。今年4月の統一地方選と夏の参院選において、この趣旨に賛同する立候補予定者を「薔薇マーク」認定して支援していくというキャンペーンです。

 なぜこうしたキャンペーンを立ち上げたのか。記者会見では、キャンペーンのプロモーション動画上映に続き、代表を務める立命館大学経済学部教授の松尾匡さんからお話がありました。

 「近年の日本は、財政規律(歳入と歳出のバランスが保たれていること)、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンの下で、労働者の賃金抑制や社会福祉の削減が進む一方、大企業に対しては大胆な減税を進めてきました。結果、経済停滞による失業が拡大し、将来への不安も広がる一方で、一握りの強者がますます富むという状況にあります」

 政権交代によって誕生した民主党政権も、そうした新自由主義的な政策から抜け出すことはできず、リーマンショックの余波に苦しむ人々の状況を変えるには至りませんでした。そこから抜け出したいという人々の思いが、「アベノミクス」という大胆な経済政策を掲げる第二次安倍政権を生み出した、と松尾教授は指摘します。世界的にも、新自由主義の広がりによる閉塞状況への人々の反発が、トランプ大統領の誕生をはじめとする右派ポピュリズムにつながるという現象が生まれてきており、日本の状況はその「先取り」だったというのです。

 しかし実際には、安倍政権の経済運営は、人々の生活を向上させるものではありませんでした。それどころか、社会福祉はさらに厳しく削られ、個人消費は低迷、デフレからの脱却は成らず、国民の半数以上が「生活が苦しい」と感じているという調査結果もあります。

 その状況で、しかも繰り返される強行採決や森友・加計問題などのスキャンダルがありながら、それでも安倍政権が一定の支持率を保っているのはなぜか。それは、野党が従来の、『財政規律』を重視する従来の経済政策から抜け出せておらず、野党が政権を執ったらさらにひどい不況になるのではないかという疑念を払拭できていないからではないか。松尾教授はそう指摘します。

 「野党が従来の方向性から安倍政権の経済政策を批判するだけで、民衆の暮らしを向上させる政策を提示できないなら支持は得られない。人々の不安や希望に応えられる、新しい選択肢の登場が望まれていると思います」

 その「新しい選択肢」が、ヨーロッパで広がり始めている「反緊縮・積極財政」。大企業や富裕層に応分の負担を課すことで財源を確保し、社会保障や教育など、人々が大きな不安を抱いている分野に大胆に公金を投入する。経済を民衆のコントロールのもとに取り戻し、お金を人々の生活を向上させるために使う。そうした方向性に賛同する候補者を可視化して、「ここに新しい選択肢がある」ことを示すのが薔薇マークキャンペーンの目的だといいます。

 具体的には、(1)消費税増税凍結(2)社会保障・医療・介護・保育・教育・防災への財政出動(3)最低賃金の引き上げ(4)大企業・富裕層への課税強化など、全部で6つの認定基準を満たす立候補予定者を「薔薇マーク」認定(詳細はこちら)。今後、候補者の認定をスタートさせるとともに、キャンペーンの認知度向上にも取り組んでいくとのことでした。

 ちなみに、なぜ「薔薇マーク」かといえば、薔薇が古くからヨーロッパで、労働者や労働運動の象徴とされてきたから。同時に、「Rebuild Our Society and Economy(私たちの社会と経済の再建を)」の頭文字でもあり、お金を「ばらまく」(=積極的に財政出動する)の意味も込めたといいます。

 呼びかけ人の一人で事務局長でもある「安保関連法に反対するママの会」発起人の西郷南海子さんのコメントが印象的でした。

 「若い世代は、日本はもう財政破綻するんだとずっと聞かされて育っています。人口はどんどん減っていくし、賃金は上がらないし、みんなどんどん貧乏になっていく。それはもう『そうなるものだ』という感覚をもって日々を暮らしているので、多少自分の労働環境が悪かったりしても、不満を言わず飲み込んでしまいがち。それに対して、そうじゃないよ、他の選択肢があるんだよと訴えていきたい」

 キャンペーンビデオの中の松尾教授の「人の暮らしのために財政があるのであって、財政のために人がいるのではない」という言葉にも、大きく頷かされました。何よりもまず人の暮らしのためにお金を使う、そんな当たり前の方向性が、ここから新たな選択肢として育っていくことを期待したい。まずは「薔薇マーク」の候補者たちに、しっかりと注目してみようと思います。

(西村リユ)

●薔薇マークキャンペーン ホームページ
https://rosemark.jp/