第34回:「桜を見る会」の安倍首相のウソ、ますます乱発!(柴田鉄治)

 国費で開かれる「桜を見る会」に後援者を勝手に招待し、その人数が急速に増えていることが分かっただけでなく、出席者名簿がない、「前夜祭」が開かれたホテルとの契約書がない、領収書がない、と「ない・ない・づくし」の安倍首相の答弁も、そろそろ限界を超え、ウソだらけの感じになってきた。
 前夜祭の会場になったホテルの中でも、ホテルニューオータニは安倍首相の答弁に合わせようと必死だが、ANAインターコンチネンタルホテルのほうは、領収書に関する野党の問い合わせに「(首相の答弁のような)そういうことはない」とはっきり文書で答えているので、安倍首相のウソがはっきり浮かび上がってしまった。自民党の幹部がANAホテルに「もう使わないぞ」と脅しをかけているようだが、もうそろそろ「ウソの強弁」はやめたらどうか。一国の首相が、あまりにも見苦しくて、国民として見ていられない気持ちになる。
 ウソをやめるだけでなく、責任をとって、首相もやめてほしいところだ。

森友学園事件に判決、「巨悪を眠らせ、小悪を裁いた」だけだが……

 安倍首相のウソや強弁は、森友学園事件や加計学園事件から目立つようになったが、その森友学園の前理事長、籠池泰典夫妻が詐欺罪などに問われた事件で2月19日、大阪地裁での判決が下った。その内容のあまりの「不公平さ」に、日本は三権分立の文明国家ではないな、と痛感した。
 まず思い出したのは、かつて検事総長を務めた伊藤栄樹氏が言ったという「特捜部は、巨悪は眠らせない」という言葉である。森友学園事件は、評価額9億円余の国有地を8億円も値引きして売ったり、公文書を書き換えたり国会でウソの答弁をしたりした政治家側の「犯罪」をすべて不起訴にして、買ったほうの詐欺罪などの責任だけを問うたのだから「巨悪を眠らせ、小悪を裁いた」だけと言っても過言ではあるまい。
 籠池被告は「国策捜査だ」と批判しているが、国策捜査というより「安倍捜査」と言ったほうがいいのかもしれない。
 その検察庁の人事にまで、安倍政権は露骨な介入をするのだから驚く。東京高検の黒川弘務検事長の定年を半年延長すると閣議決定したのである。検察庁法によると、検事の定年は63歳、検事総長だけ65歳となっている。黒川氏は2月に誕生日を迎えて63歳となっており、本来なら定年退職である。この閣議決定が、安倍氏に近い黒川氏を検事総長にしようという狙いであることは見え見えだ。こんな露骨な人事までやった政権は、かつてない。
 しかも、公務員の定年延長制度ができるとき、検察庁には適用されないという政府の答弁まであったのに、安倍首相は今回、それを変えたのだと人事院に答弁させたのだから、何といったらいいのか、言葉も出ない。
 日本は、もはや文明国家でもなく、近代国家でもないといえよう。

中国発の新型肺炎が猛威を振るう!

 中国・武漢で発生した新型肺炎が猛威を振るい、テレビもほとんど毎時間、このニュース一色だった。中国も最初の対応に失敗して流行を広げてしまい、日本も豪華客船を「新型肺炎の培養器」にしてしまったようである。
 海外旅行が盛んな時代だから、見る間にウイルスが世界中に広がり、「あそこが危ない」「あそこの国からの旅行客は入国させるな」といった情報が飛び交っている。重要な会合までバタバタと中止になって、日本でも「この際、憲法を改正して緊急事態条項をつくり、非常事態に備える体制をつくれ」という「便乗型」の声も出ている。さらに「東京オリンピックもパラリンピックも中止したらどうか」という意見もあり、英国からは「代わりをやろうか」という提案まで出てきている。
 何しろ、目に見えないウイルスが相手だけに、手に負えない。中国の習近平独裁政権も、ウイルスの制御には、独裁も通じないようである。中国だけでなく、日本も韓国も含めて、「やはり、アジアはダメだ」というウワサが欧米に広がっているようだ。
 いつまで続くのか。もし、本当にオリンピックの開催時まで続くようなら、大変なことになろう。当分、マスクをして見守るほかあるまい。
 4月に中国の習近平主席を国賓として招くことになっている日本政府も気が気でないようだ。

トランプ米大統領も、プーチン露大統領も暴走止まらず

 世界で一、二を争う核兵器の所有国、米国とロシアの両大統領の「暴走」が止まらない。トランプ米大統領は、イスラエル寄りというよりイスラエルべったりともいうべき「新中東和平案」なるものをイスラエル首相と一緒に発表したが、パレスチナのアッバス議長は直ちに拒否しており、中東は、和平より危機のほうが増したと言えよう。
 イスラエルは核保有国で、中東戦争を何回も起こして、そのたびに占領地域を広げてきた国だ。その占領地をそのまま領土として認めるべきだというのだから、和平案なんてものではない。
 トランプ氏のような極端な意見の人が、大統領を続けるのは世界にとって困ったことだが、対抗馬の民主党の候補が、乱立気味で、しかも高齢者が多いところが心配だ。
 一方、ロシアのプーチン大統領は、憲法を改正して、大統領経験者は刑事訴追できないことにしよう、というのだから驚く。「そんなに悪いことをしているのか」という皮肉も言いたくなるというものだ。
 韓国の大統領が、退任後、次々と逮捕・起訴されているのをみると、権力者は、どうしても権力を過剰に行使したくなるものらしい。ただ、憲法に刑事訴追できないと規定するのはどうか。あまりにも恥ずかしくないか。
 もっとも安倍首相のように、人事でやらせないようにするのは、もっと卑怯なのかもしれないが……。

今月のシバテツ事件簿
英国のEU離脱、「世界中を南極に」という私の夢も遠のく!

 英国が2月初めに欧州連合(EU)から離脱した。いまから75年前、第二次世界大戦が終わったとき、「もう戦争はごめんだ」という機運が広がった。国際連合を強化して、地球を一つの国家のようにして、戦争をなくそうという考え方があったように想う。日本の平和憲法も、そこから生まれたものであろう。
 ところが、その後、世界を二分する東西対決の時代が続き、「人類の理想」はどこかへ吹っ飛んでしまった。その中で欧州連合は、僅かな期待を抱かせる存在だったが、それさえ今回の英国の離脱で、逆方向に向かっているようである。
 米国もロシアも中国も、自国主義の独裁的な政権が続き、どっちを向いても「世界は一つ」と言っている人はいない。
 ただ、1961年に発効した南極条約だけは「国境もなければ軍事基地もない、平和の地」という人類の理想が残されているところだけに、私は「世界中を南極にしよう!」と叫び続けているわけだが、英国のEU離脱で「そんなの無理だよ」と言われているような気分だ。
 「世界中から戦争をなくしたい」という私の夢も、遠のくばかりだ。

       

柴田鉄治
しばた てつじ: 1935年生まれ。東京大学理学部卒業後、59年に朝日新聞に入社し、東京本社社会部長、科学部長、論説委員を経て現在は科学ジャーナリスト。大学では地球物理を専攻し、南極観測にもたびたび同行して、「国境のない、武器のない、パスポートの要らない南極」を理想と掲げ、「南極と平和」をテーマにした講演活動も行っている。著書に『科学事件』(岩波新書)、『新聞記者という仕事』、『世界中を「南極」にしよう!』(集英社新書)ほか多数。