第71回:「子ども脱被ばく裁判」傍聴記「司法が憲法を守り、行政を正す判断をしなければ、日本の未来はありません」(渡辺一枝)

 7月31日は、仙台高裁で「子ども脱被ばく裁判控訴審」第7回口頭弁論期日でした。
 裁判の開廷前に弁護士会館で学習会を持ち、田辺保雄弁護士から「国連特別報告者の訪日調査について」をお聞きしました。その後、光前幸一弁護士が今回の「第7回控訴審の争点について」を話されました。
 仙台高裁前でスタンディングでのアピールをしてから、裁判所に入りました。
 今回の裁判傍聴報告、開廷前の学習会についても、また閉廷後の報告集会についてもきちんとはご報告できませんが、提訴の日からずっと、先頭に立って闘ってきた原告代表の今野寿美雄さんの意見陳述に、思いが溢れています。ぜひお読みください。

※この裁判については、第45回 、第50回 、第53回などをお読みください。

◎原告意見陳述:今野寿美雄

 控訴人を代表しまして、意見陳述をします。

 忌々しい原発事故から12年、国や県の情報隠蔽、避難の権利や選択の問題を取り上げたこの裁判提訴から8年が経ちました。
 しかし、国や県は、自分たちの過ちを認めず、なんの反省もないまま、次の原発事故に向かって突き進んでいるようにしか思えません。
 福島地裁、仙台高裁の判決は、国や県の言い訳を丸呑みし、現状にお墨付きを与えるだけで、「裁判所が子どもたちを護ってやるぞ!」という気概は、どこにも感じることができませんでした。

 昨年、原発避難民の人権状況調査に来られ、福島にも足を延ばして下さった国連人権理事会の特別報告者セシリア・ヒメネスダマリーさんは、この5月に、私たちが問題にしてきた国や県の事故情報の隠蔽等の問題について、次のような勧告を日本の政府にされました。

 「震災当初、SPEEDI放出データ公表の失敗、避難区域を正当化する情報の欠如、事態の深刻さを軽視する試みは、市民が十分な情報を得た上で避難を決定することを妨げ、放射線に関する政府の情報に対する信頼を損なった」

 「政府が放射線に関して住民を安心させるための情報ではなく、中立的な科学的情報を提供するよう勧告をするとともに、空間放射線量のモニタリングと公表を継続し、これを土壌放射線量にも拡大するよう勧告する。国民の信頼を回復するために、当局は市民の懸念に耳を傾け、それに応える努力を拡大し、市民のフィードバックに基づいて情報提供を調整しなければならない」

 外国の人には、日本のおかしさがはっきりと見え、はっきり言ってくれているのです。

 原発事故当時、福島県内に住んでいた18歳以下の子どもから、わかっているだけでも、300人を超える小児甲状腺がんが発症しています。
 しかし、国も県も、放射線とは関係ないと言って、この現実を放置し、加害者は護るが、被害者を護らない政策をとっています。
 追加実効線量年20mSvでの避難区域の指定解除、県外にやむを得ず避難した人に対する住宅支援の打ち切り、被ばくの強要等の重大な人権侵害が堂々と行われています。
 誰が、こんな国にしたのでしょう。

 これまでの判決は、これらの人権侵害を助長していることになります。法の番人である裁判所が憲法を活かそうとしないのでは司法は死んだと言わざるをえません。
 三権分立ならぬ三権連立、寄せ鍋状態です。せめて、国連のセシリア・ヒメネスダマリーさんの認識をもって、はっきり、日本の現状を叱ってください。

 今、司法が憲法を守り、行政を正す判断をしなければ、日本の未来はありません。
 日本でも、「子ども基本法」がようやく成立し、今年の4月から施行されました。しかし、子ども達は子ども達だけでは自分を護れません。
 子ども達を護るのは、私たち大人の責任、義務です。
 子ども達を護りたいと思うのは全ての親が思う当たり前のことです。
 当たり前の日常を子ども達にプレゼントしたいのです。
 裁判所には、私たちの期待する判断をしていただきたいと切に願いまして、意見陳述とします。
 ご清聴ありがとうございました。

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 閉廷後は仙台弁護士会館で報告集会がありましたが、私はこれに参加できずに帰宅しました。
 次回期日12月18日(月)でこの裁判は終了、判決言い渡しとなります。

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渡辺一枝
わたなべ・いちえ:1945年1月、ハルピン生まれ。1987年3月まで東京近郊の保育園で保育士として働き、退職後は旧満洲各地に残留邦人を訪ね、またチベット、モンゴルへの旅を重ね作家活動に入る。2011年8月から毎月福島に通い、被災現地と被災者を訪ねている。著書に『自転車いっぱい花かごにして』『時計のない保育園』『王様の耳はロバの耳』『桜を恋う人』『ハルビン回帰行』『チベットを馬で行く』『私と同じ黒い目のひと』『消されゆくチベット』『聞き書き南相馬』『ふくしま 人のものがたり』他多数。写真集『風の馬』『ツァンパで朝食を』『チベット 祈りの色相、暮らしの色彩』、絵本『こぶたがずんずん』(長新太との共著)など。