もう一度、伝えたい言葉たち──マガ9アーカイブス「戦前への深い反省から出発したものがじわじわと、徐々に浸食されていっている」浜田桂子さんインタビュー(2020年1月22日)

2005年に「マガジン9条」としてスタートしたマガジン9。その17年のアーカイブから、編集部スタッフが「もう一度読んでもらいたい」と思う厳選コンテンツと、そこから選んだ「伝えたい言葉」を、折に触れてご紹介していきます。社会の状況や空気は変わっても変わらないこと、気づかないうちに変わってしまっていること……「このときはそうだったっけ」と思い返したり、「今も全然変わらないな」と驚いたり、立ち止まって振り返ってみることの意味は小さくないと思います。「いいな」「共感できるな」と思う言葉があったら、ぜひ全文を読んでみてください。

 少し前に、広島県広島市で職員向けの研修で戦前の「教育勅語」が引用されていたというニュースが流れました。同市の松井市長は、「(教育勅語の内容には)良い部分もある」「民主主義的な発想の言葉が並んでいる」として、来年度以降の研修でも取り上げていく考えを示したとのことです。
 たしかに、「兄弟仲良く」「親を大事に」など、その部分だけを取り上げれば「良い部分もある」と言えるのかもしれません。ただ、重要なのはその言葉がどういった文脈で、どういった目的で用いられていたかということのはず。「臣民」として、天皇のため、お国のためにすべてを投げ出せ──。教育勅語に基づくそうした教育がどんな結果を生んだかを思えば、「良い部分もある」などと呑気に言うことはできないのではないでしょうか。

 ニュースを読んで思いだしたのが、絵本作家の浜田桂子さんへのインタビューでお聞きした、こんな言葉でした。

今の日本社会には、戦前への深い反省から出発したものってけっこうあって。(中略)そういうものの多くが今、法改正までは行かなくてもじわじわと、徐々に浸食されていっている気がします。

──浜田桂子さん(絵本作家)のインタビューより(2020年1月22日)

 浜田さんが仲間と立ち上げた、3カ国の絵本作家たちがそれぞれ「平和」をテーマにした絵本を制作し、それを各国で同時に出版するという「日中韓平和絵本プロジェクト」。その中で、ある1冊の本だけが当初、日本では出版できなくなるという事件が起こりました。それは何だったのか、その背景には今の日本社会の、どんな状況があったのか──。2020年のインタビューですが、ここで指摘されているような社会の空気は今も続いている、もしくはもっと進行しているようにも思います。
 来年は、この社会をどう変えていけるのか──。一年の終わりに、改めて読み返したいと思います。

 今年の「マガジン9」は、今週が最後の更新。年明け1月3日はお休みをいただいて、10日から通常更新となります。
 今年も一年、ありがとうございました。みなさまの年末年始が、どうぞ穏やかで温かなものでありますように。

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