第127回:“国会に来ない総理大臣” ワーストは、この人!(南部義典)

 新年おめでとうございます。ことしも、当連載をよろしくお願いいたします。

 「平成」も30年を迎え、来年4月30日、ついにその歴史に幕が下ります。そんなわけで、今回は、平成政治の振り返りにかかわるテーマを選んでみました。
 平成期、延べ18名の総理大臣のうち、誰が一番、国会に来ていないのか…この点をハッキリさせたいと思います。

(出典)国会会議録検索システムによるリサーチ結果に従い、筆者が作成

 「この表は何だ?」と思われたかもしれないので、読み方を説明しましょう。一番上に名前のある、竹下登氏で説明します。表を見ながら、読み進めてください。

 竹下総理の在任期間は、昭和62年11月6日から平成元年6月3日までの「576日間」でした。さらに、その在任期間中、第110回臨時国会から第114回通常国会まで5つの会期があり、その日数の合計は「491日」でした。したがって、在任中、国会の会期がどれほど被っていたかを示す割合は、491÷576=0.852(85.2%)と求められます。

 その横に、衆議院(本会議、委員会)、参議院(本会議、委員会)とあり、「回数」「頻度」と分かれています。
 「回数」は、会期中と閉会中の出席回数の合計です。衆参ともに、閉会中に本会議が開かれることはありませんが、委員会は開かれることがあります。委員会に限った話ですが、閉会中の数はとくに「括弧書き」にしてあります。
 「頻度」とは、会期中、何日に一回の割合で本会議、委員会に出席しているかを示しています。当然、その数値が小さければ小さいほど、頻繁に出席していることになります。逆に大きければ大きいほど、出席日に間が空いていることになります。

 表が示すのは、竹下総理がその在任中、衆議院の本会議には31回出席し、その頻度は15.8日に一回であったことです。同様に、衆議院の委員会には55回出席し、その頻度は8.9日に一回であったこと、参議院の本会議には23回出席し、その頻度は21.3日に一回であったこと、参議院の委員会には国会会期中に46回、閉会中に1回出席し、頻度は10.7日に一回であったことが分かります。

 表の一番下をご覧ください。安倍総理の名前があります。平成24年12月26日に第2次安倍内閣が発足し、現在、第4次内閣が継続しています。データ上は、平成29年12月31日現在としてあります。言うまでもなく、第1次内閣(平成18年9月26日から平成19年9月26日)とは別扱いです。

(会期日数/在任日数)が低い総理大臣は?

 在任日数における国会会期日数の割合が低い総理を順に並べると、

1位 宇野宗佑     34.8%
2位 安倍晋三(現職) 36.6%
3位 村山富市     55.3%
4位 海部俊樹     58.2%
5位 森 喜朗     60.2%

 となります。
 安倍総理は現時点でワースト2位です。重要法案の審議、疑惑追及に応じ「丁寧な説明を心がける」と繰り返し述べているわけですが、客観的な日数だけみても36.6%と、3分の1程度しか被っていないわけです。他の総理が、60~70%くらいの数値に落ち着いていることと比べてみてください。安倍総理の数値は異様に低いことがわかります。
 同1位の宇野総理はある意味、特殊な経緯を経た就任と退任をされた方です。安倍総理がワースト1位の座に就くのは時間の問題でしょう。

本会議、委員会には頻繁に出席しているのか?

 それでも、安倍総理が国会会期中、歴代総理よりも頻繁に本会議、委員会に出席しているのであれば、前記の批判は失当です。その回数、頻度を確認し、比較しなければなりません。

 そこで、表に戻りますが、安倍総理の現在の状況は、

衆議院の本会議・・・計71回、10.6日に一回
衆議院の委員会・・・計126回(うち3回は会期外 ※閉会中審査)、18.3日に一回
参議院の本会議・・・計73回、9.2日に一回
参議院の委員会・・・計122回(うち2回は会期外 ※継続調査)、18.2日に一回

 となります。

 衆参の本会議の出席頻度はわりと平均的です。しかし、委員会のそれは違います。

衆議院の委員会への出席頻度が低い総理
 1位 森 喜朗    19.4日に一回
 2位 安倍晋三(現職)18.3日に一回
 3位 宇野宗佑    12.0日に一回

参議院の委員会への出席頻度が低い総理
 1位 森 喜朗    19.4日に一回
 2位 安倍晋三(現職)18.2日に一回
 3位 福田康夫    14.1日に一回

 お分かりいただけたでしょうか。
 安倍総理は国会会期中、委員会に頻繁に出席しているどころか、現時点で衆参どちらもワースト2位です。森喜朗氏を抜いて、ワースト1位になるのは時間の問題です。

なぜ、こんな状況になってしまったのか?

 理由は二つあります。(1)野党会派による、臨時国会の召集要求に応じないこと、(2)国会の会期を延長しない性向が強まっていること、です。

 昨年(平成29年)は、これらの問題が際立ちました。第193回国会(通常国会)は6月18日に閉じましたが、同月22日には、野党会派が「臨時国会召集要求書」を衆参議長に提出しました。皆さんご承知のとおり、第194回国会(臨時国会)が召集されたのは9月28日のことで、3カ月以上も間が空いたのです。しかも、会期は一日だけでした。

 また、直近二つの通常国会(第190回、第193回)は、会期150日間をこなすだけで、延長がないまま閉じています。先の、衆議院議員総選挙の後に召集された第194回国会(特別国会)も当初は、その会期を1週間から10日間程度にするという話があり、「戦後で最も会期日数の少ない年」となるのではないか、と言われていたくらいです。

 ことし9月の自民党総裁選では、「安倍再々選」が有力視されています。総理としての在任日数を稼ぐことに余念がないようですが、実はその反射として、「最も国会に来ない総理大臣」への道を着実に歩んでいるのです。

 一般に「ねじれ国会」になると、議院運営が不安定化します。法案審議が停滞すること等によって、参議院側に総理が呼ばれなくなる現象が生じえます(ひいては、その影響が衆議院側に飛び火することもあります)。しかし、今は、両議院の構成面において、総理出席を遠ざける事情はありません。狡猾な態度で、距離を置いている(毛嫌いしている)にすぎないのです。

 さらに、この連載でも何度も指摘(第66回第126回ほか)していますが、総理在任中の「党首討論」の頻度をみても、安倍総理は最低レベルにあります。

 国民からは見えづらい部分で憲法が形骸化しているという事実を、多くの方に知っていただき、考えていただきたいと思います。

憲法53条【臨時会】
 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

憲法63条【国務大臣の議院出席】
 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。


学習会のお知らせ

「南部義典さんに聞く『いま知りたい!憲法と国民投票のこと』」
日時)2018年2月3日(土)15:00~17:00
場所)阿佐ヶ谷地域区民センター第5集会室
 杉並区阿佐谷南1-47-17/JR阿佐ヶ谷駅南口・歩2分
資料代)300円
主催)杉並・生活者ネットワーク
http://suginami.seikatsusha.me/blog/news/2018/01/01/4828/

ご関心ある方は、ぜひご参加ください。


南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院・参議院の日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所、2017年)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社、2007年)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票とプロパガンダCM』(共著、集英社新書、2018年)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店、2018年)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会、2017年)、などがある。(2018年4月現在)(写真:吉崎貴幸)