第129回:〈森友文書〉書き換え疑惑 内閣総辞職は時間の問題か(南部義典)

逃げ惑う財務省

 3月6日(火)午前8時45分から始まった、参議院予算委員会の理事会。
 渦中の財務省は「調査の状況の報告」と題する、次のような文書を提示してきました。

平成30年3月6日

財務省

調査の状況の報告

○現在、大阪地検において、背任のほか、証拠隠滅や公用文書毀棄について告発を受けて、捜査が行われている状況にあり、財務省としては、この捜査に全面的に協力している段階にある。
○こうした状況の中、捜査に影響を与えないよう、以下の点に留意して、直接の担当である理財局・近畿財務局以外の職員も関与した上で、全省を挙げて、文書の確認、職員への聞き取りなど調査を進めていきたいと考えている。

1.文書の確認
調査にあたっては、多くの文書の確認が必要となるが、これら文書は、告発を受けた捜査の対象となっており、すべての文書を直ちに確認できない状況となっている。
2.職員への聞き取り
調査にあたっては、広く職員への聞き取りを行う必要があるが、決裁文書の作成にかかわった職員への聞き取りにあたっては、捜査に影響を与えないよう、捜査当局による事情聴取との関係に留意し行う必要がある。
3.事実関係の整理
事実関係の確認に当たっては、裏付けをとるなど慎重に行う必要がある。

(以上)

 理事会は非公開のため、その内容は報道に頼るしかありませんが、報道ベースでは、出席した財務省担当者は、「決裁文書の原本は、大阪地検が保有している」と述べたとのことです。朝日新聞が最初に、決裁文書の書き換え疑惑を報じたのは2日の朝刊でしたが、この間の財務省の対応ぶりは「?」だらけです。

  1. 2日の朝日報道から6日朝の文書提出まで丸4日間あり、その間、参議院予算委員会は2日、5日にも行われていました。野党の質疑に対しては、麻生財務大臣、太田理財局長が何度も答弁に立つ機会がみられました。前記回答書の内容にあるように、財務省はすでに、大阪地検の捜査に「全面的に協力している段階」にあったとみられますが、2日、5日の委員会質疑において、全省的調査がどこまで進んでいるのか、適切な答弁が行われなかったのは一体なぜでしょうか。
  2. 理事会に出席した財務省の担当者は、与党・野党の委員会理事を前にして「決裁文書の原本は、大阪地検が保有している」と述べたと報じられています。この事実は、6日になって初めて、明らかになったのでしょうか。そうでなければ、2日、5日の予算委員会質疑の場で、なぜ適切な答弁がなされなかったのでしょうか。さらに、大阪地検が保有しているという事実を、理事会の場で“口頭”で報告する理由は何でしょうか。なぜ、回答書の中に、その旨を明記しないのでしょうか。
  3. 回答書のタイトルは「調査の状況の報告」となっていますが、その実質は「方針の説明」でしかありません。捜査中であることを盾に、省内調査には限界があることを前面に出しながら、主体的な意欲だけは見せようという非常に巧妙な文書です。文書の作成部署名(最終決裁者)を明らかにすべきです。

…など、大小さまざまな疑問が湧いてきます。

 これから、参議院予算委員会においては、佐川・前理財局長、迫田・元理財局長の証人喚問を行い、一気呵成に事実究明に運んでいくことが必要です。予算案の審議状況をみても、与党側もこれ以上庇いきれないという、ギリギリのところまできていることでしょう。
 佐川氏の答弁矛盾はすでに明らかになっており、追及を免れるため、彼はいま必死で逃げている最中です。迫田氏は理財局長当時、2015(平成27)年7月31日、9月3日と続けざまに安倍総理と面会した記録が残っており、その場でどのような報告、協議、指示等がなされたのか、改めて明らかにする必要があります。安倍総理は加計学園問題でも「一点の曇りもない」と発言していますが、事後的に新たな証拠(文書)が見つかるなどして、発言の矛盾は確実に広がっています。

 昨年3月23日、森友学園の籠池理事長の証人喚問が行われて、まもなく一年になります。「学園側は小学校建設のための元手が十分に無かったので、『安倍晋三』の名を勝手に利用し寄附を募った。さらに、大阪府に対しては、補助金受給のため工事費用を誤魔化すなどの詐欺事件を起こした。安倍総理夫妻には、何の責任もない」と、自民党議員は当時、森友問題を矮小化しようと懸命でした。
 あれ以来、籠池氏を除く関係者の証人喚問は誰一人実現していませんが、真実に迫らなければ、与党議員の立場も危うくなっていくばかりでしょう。財務省に対する追及は、与党議員の側こそ、もっと声を上げるべきです。

予算成立を退陣の花道に

 結果として、朝日報道が正しいのであれば、安倍内閣には「憲法の下で、法律その他のルールを決めて、適切に執行・運用する」という法治国家の大原則をないがしろにした責任を厳しく問わなければなりません。私は、2018年度政府予算の成立(3月下旬)を花道に、安倍内閣は総辞職すべきと考えます(予算成立花道論)。政治的に、一定のけじめが必要です。麻生財務大臣ただ一人の責任問題では済みません。
 ちなみに、内閣総辞職は、衆議院の解散・総選挙というプロセスに向かうものではありません。総辞職の後、第4次安倍内閣は「事務処理内閣」となり、新たな内閣総理大臣が任命されるまで、引き続きその職務を行うことになります。国会を2週間程度「自然休会」とし、「自民党総裁選挙」を前倒しで実施し、新総裁を決め、その後直ちに国会で総理指名の議決を行うのです(第90代・安倍総理、第91代・福田総理が自発的辞任を表明した後の対応と同じです)。また、予算が成立する頃には、自民党大会(3月25日)も予定されていることから、タイミング的に不都合はないでしょう。
 6日の参議院予算委員会は案の定、流会となりました。きょう(7日)以降の審議もどうなっていくのか、予断を許さない状況です。審議日程の空転を、円滑な予算審議をお願いする側である財務省がもたらすという、じつに稀な、皮肉な事態です。内閣総辞職以外、正常化の道は残されていないでしょう。

南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院・参議院の日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所、2017年)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社、2007年)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票とプロパガンダCM』(共著、集英社新書、2018年)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店、2018年)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会、2017年)、などがある。(2018年4月現在)(写真:吉崎貴幸)