第121回:国会は一日も早く、“特別防衛監察結果”の検証を(南部義典)

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案件が、次から次へと…

 国会の閉会中に委員会などを開くことを、衆議院では閉会中審査といい、参議院では継続審査(調査)といいます。
 現在、国会は閉会中ですが、①委員会の閉会中審査、継続調査の日程をテンポよく設定するか、②衆参の野党議員による臨時国会召集要求(6月22日付)に対し、安倍内閣が速やかに応じるか、いずれかの対応が不可欠です。なぜなら、野党が主導して追及・解明をし、以て国民の知る権利に応えなければならない問題案件が「山積み状態」にあるからです。7月23日(日)から29日(土)までの一週間だけでも、政府・与党側で次のような問題案件が出てきました。

  • 24日(月)安倍総理「加計学園の特区申請は、ことし1月20日まで知らなかった」と答弁(衆議院予算委員会の閉会中審査)
  • 25日(火)安倍総理、上と同趣旨の答弁を繰り返し(参議院予算委員会の継続調査)
  • 26日(水)二階・自民党幹事長「自民党はいろいろ言われているが、そんなことに耳を貸さず、正々堂々、自信を持って頑張らなければならない」と発言(二階派の研修会)
  • 27日(木)黒江・防衛事務次官、岡部・陸上幕僚長、辞任意向との報道(翌28日、辞任)
  • 28日(金)「南スーダン日報問題」に関する特別防衛監察の結果公表。稲田防衛相、辞任

 都議会議員選挙に前後して、安倍内閣・自民党に対する不信、怒りが一気に蔓延しています。先週だけでも政府・与党を追及すべき問題案件が増え、野党にとっては、「攻守逆転」に向けて政治の局面を変える、重要な一週間だったはずです。

タイミングが悪かった、蓮舫代表の辞任表明

 しかし、周知のとおりですが、民進党の蓮舫代表が27日、突然の辞任表明会見を行いました。25日には、野田幹事長が両院議員懇談会の場で、辞任表明をしています。あと1カ月ほど、代表、幹事長の2名が「辞任表明中」という、異常な事態が続くことになります。

 様々な評価、受け止めがありますが、蓮舫代表の辞任に関しては、タイミングとしては最悪で、どうにも擁護のしようがない政治的失態であったと、私は思います。政治の世界ではあまりにも当然のことですが、辞任表明の後、民進党はレーム・ダック状態(「死に体」の政党)になり、政府・与党に足元を見られてしまいます。民進党側は、委員会の閉会中審査、継続調査に関する日程交渉で、強気に出ることができなくなってしまいます。閉会中とはいえ、国会を空転させ、結果として問題案件を棚ざらしにしてしまいます。この点は、民進党に責任があります。具体的な問題(政治的弊害)を二点、指摘しておきます。

 第一の問題は、「南スーダン日報隠ぺい問題」に対する特別防衛監察結果(28日公表)について、衆議院、参議院の委員会における事実の解明、内閣の責任追及のタイミングを逸してしまったことです。稲田防衛相は「逃げ得」を狙ったかもしれませんが、もし、民進党がこのような状態になっていなかったら、マスコミ世論を盛り上げながら、31日(月)、8月1日(火)の二日間を使って、衆議院安全保障委員会の閉会中審査、参議院外交防衛委員会の継続調査を開くことができたはずです。

 もっとも、隠ぺい問題の渦中にある稲田防衛相は28日付で辞任し、岸田外相が同日付で兼務することになりました。たった二日間の委員会日程に、隠ぺい問題の経緯を知らない岸田氏を招致することに何の意味があるのかと(しかも、あす3日の内閣改造で少なくとも防衛相の兼務を解かれる)、疑問が湧かないわけではありません。しかし、国会開会中と同様、国務大臣の辞任が生じたときには、総理の任命責任をただちに追及するのが政治の常道です。その責任追及は、監察結果の公表から、あまり日数を置くべきではありません。

 一部報道では、次週、6日(日)の週に、閉会中審査、継続調査を行い、前・防衛相である稲田氏を「参考人」として招致することも含めて与党幹部は検討に入った、と伝えられています。しかし、稲田氏が「参考人」という立場で出席するかどうか、いまだに不確実ですし、委員会出席が仮に叶ったとしても、「知らない」「承知していない」と、防衛相の辞任会見の時と同じセリフを吐かれてしまっては、野党は実効性を持って監督責任を追及することさえできません。まして、新任の防衛相では、まったく埒が明きません。防衛事務次官、陸上幕僚長も辞任してしまっており、すべてが闇の中に入り込んでしまいます。

 第二に、野党議員が行った臨時国会の召集要求が、宙に浮いてしまうことです。要求の声は今後、細くならざるを得ません。
 なぜなら、民進党自身が、「政治空白」を作ることになってしまうからです。きょう、2日(水)午後、両院議員総会において、代表選挙の日程が正式に決定するようですが、少なくとも9月上旬までは、「党の立て直し期間」として、体制を整えて国会審議に臨むことができない状況に陥ってしまいます。政府・与党は元々、臨時国会を召集したくない(できるだけ先送りしたい)わけですから、いまの民進党の混乱ぶりは、政府・与党にとって「助け舟」になっている面があります。

国会で早く、特別防衛監察の結果の検証を

 いま、議会制民主主義がその本来的機能を回復するのは、自民党と民進党次第という状況です。それでも国会は、一日も早く「空転状態」から立ち直り、特別防衛監察結果を徹底的に検証すべきです。特別防衛監察の結果(概要はこちら報告書はこちら)は、全体の頁数も短いので、ぜひご覧いただきたいと思います。

 最大の問題は、結果として示されたのが防衛監察本部による「任意」の調査結果に基づく内容であり(文書の提出、証言などを強制することはできない)、しかも、防衛監察本部の総合判断に基づく「作文」であり、事案の経緯に関する事実の一つひとつが、何も添付されていないことです。この点、文民統制の観点からも看過しえない問題が、陸自側が稲田防衛相に対して行った説明の内容とその場の具体的な発言のやり取りだったわけですが、監察結果は、「防衛大臣に対し、陸自における日報の取扱いなどについて説明がなされたことがあったが、その際のやり取りの中で、陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。また、防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった」という、中途半端さを残しつつ、稲田防衛相に対する一定の忖度(もし、稲田防衛相の責任をわずかでも認めれば、即ち、安倍総理の任命責任に直結してしまいます)を想像させる記述にとどまっています。

 何より、下線部前段「陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できない」と指摘するのであれば、その根拠となる行政文書を示す必要があるでしょう。また、下線部後段に関しては、フジテレビがスクープした防衛省の内部メモによると、2月13日、陸自幹部からの報告を受け、日報は、データも紙も両方残っていることを知った稲田防衛相の発言として「あす(の予算委員会で)、何て答えよう」と発言した記録があり、その矛盾を突く(発言の整合性を問う)必要があります。監察結果に目を通すだけでは、稲田防衛相が2月13日以後、日報の存在を覚知し、その組織的な隠ぺいに関与したのではないかとの疑いは、払しょくされません。

 もう一つは、特別防衛監察結果の内容というより、法制度上の問題(立法論)に当たるかもしれませんが、情報公開法、公文書管理法には罰則規定がなく、運用上の「不適切」を指摘するにとどまらざるを得ないことを、どう考えるべきかという問題があります。少なくとも、今回の件では、「行政文書不存在」という方針に合わせるべく、日報データの廃棄を進めたことは、刑法第258条が定める公用文書等毀棄罪(公務所の用に供する文書または電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する)に該当する可能性があることを、指摘しておかなければなりません(無論、国会は刑事責任を追及する場ではありませんが)。

 陸上自衛隊(陸自)は先月23日(日)から、モンゴルで行われているPKO訓練(米軍ほか26カ国の軍隊、約1千名規模)に参加しています。NHKが報じたところによると、陸自はいま、2年前の新安保法制でも問題となった「文民保護」の訓練に当たっているようです。ことし5月までの南スーダンPKO派遣部隊には、駆け付け警護の任務が付与されていたところ、結果として人を殺めることが無かったのは、ある意味、不幸中の幸いだったといえます。安倍内閣が一方的に変更した憲法解釈は、今すぐに戻せるものではありませんが、自衛隊ないしPKO部隊の運用の適正さは、正確な現地情報を元に、国会が統制する必要があります。
 1992年、PKO法が整備された頃は、「停戦監視」が主要任務でした。現在は当時と比べて、部隊、個々の隊員が抱えるリスクは格段に高まっています。次回の派遣先では、どのような事態が起こり得るかは誰も予測がつきません。今回のような組織的な情報隠ぺいを、二度と繰り返させないよう、国会の常時監視能力を強化すること、そして情報の保全、公開のために必要な法整備を行うことは国会の責務です。

 あすの内閣改造、自民党役員人事はいよいよ、「終わりの始まり」です。最後にどうしても、民進党の話に戻ってしまいますが、代表選挙を通過点として、真正の立憲主義、民主主義を守り抜く「安定政党」「信頼政党」として成長を遂げることを望みます。

【新刊のお知らせ】
 私が共著者として名を連ねる、『子ども白書2017 「子どもを大切にする国」をめざして』(日本子どもを守る会・編)が、本の泉社より、8月15日に発売されます。私は今回、「教育勅語はなぜ使用禁止になったのか -森友学園問題から考える-」と題する小論を寄せました。ぜひ、ご高覧ください。

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南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県岐阜市生まれ、京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院及び参議院の日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。著書に『[図解]超早わかり 国民投票法入門』(C&R研究所)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック』(共著・開発教育協会)、『動態的憲法研究』(共著・PHPパブリッシング)、『Q&A解説・憲法改正国民投票法』(現代人文社)がある。(2017年1月現在) 写真:吉崎貴幸