第138回:党首討論を二週連続で開催してはどうか?(南部義典)

外国人材拡大法案をめぐるトラブル

 この1週間、外国人材拡大法案をめぐって、国会が混乱しました。一応、昨日(20日)の衆議院本会議で葉梨法務委員長の解任決議案を否決し、本日より法務委員会の審議が実質的にスタートすることとなり、外見上の混乱は収まっていますが、政府・与党内の「段取りの拙劣さ」にも起因する法案内容の問題は何もクリアになっておらず、日を追うごとにさらに浮き彫りになっていくでしょう。来週のうちに衆議院を通過させようというのは、あまりにも無理筋な話です。

 法案提出プロセスにおける拙劣な段取りで国会を混乱させた責任は、山下法務大臣でもなく、資料作成でミスを犯した担当職員でもなく、安倍内閣総理大臣が負うべきものです(憲法72条)。ちなみに先週、私が衆議院事務局に確認したところ、外国人材拡大法案は、総理大臣が委員会に出席・答弁する重要法案の扱いには(正式には)なっていないということでしたので、法案審議の中で安倍総理の責任追及をする場がないまま、参議院に送られてしまうおそれも否定できないのが現状です。ふと、このようなことを整理しつつ、現在開かれている臨時国会では、党首討論の実施の予定が固まっていないことから、改めてその運用、活用を考えることが必要と感じました。私の偏見ですが、法務委員会よりも、党首討論の場の方が、追及の場のランクが一段上がります。

20年間、運用が変わらない「党首討論」

 来たる2019年は、国会で党首討論が始まってから20年の節目となります。この連載でも一度、党首討論について詳しく論じたことがありますが(第66回)、その運用はますます低調になるばかりです。ことしは、5月30日に一度だけ、開催が実現しています。しかし、それも決して計画的だったわけではなく、たまたまタイミングよく開催条件が整ったからにすぎません。

 党首討論は、頑なな慣例重視で行われてきました。「45分」という開催時間も、ずっと変わっていません。政治討論のための「45分」は、想像以上に短い時間です。野党第一党でも多くて二十数分の持ち時間しかなく、まして、討論相手の内閣総理大臣が持ち時間の消費のためにダラダラと発言を続ける戦略に対して何の手立てもないことから(党首討論に限りませんが)、単なる消耗戦で、開催の意味がないのではないかという声も強くなってきています。

 思えば、臨時国会が召集される前から、「国会改革」が注目のキーワードでした。小泉進次郎氏(自民)が旗振り役となる中で、党首討論に関しても平日夜間の開催とすることなど提案がありましたが、いざ「改革」の蓋を開けてみると、「紙ゴミ削減」がその中心に落ち着いてしまっています。党首討論の運用見直しどころか、会期中に一度も開催されそうもない現実は変わりそうにありません。

二週続けて開催してはどうか?

 「国会改革」は、その実現可能性のハードルが低いものでないと、与野党双方に受け入れられないという現実があります。この点、党首討論の創設時の原則に立ち返って、「週1回開催の厳守」を主張し続けても、究極の理想論に棚上げされてしまい、受け入れられる可能性はありません。実現可能性だけを考えれば、そのハードルは低ければ低いほど、単純で分かりやすい方がいいという点を踏まえ、党首討論の運用見直しについて改めて、提案を試みたいと思います。

 まず、基本的に二週連続で開催することです。党首討論は慣例上、水曜日が定例となっていますが、例えば、きょう11月21日(前半回)、次週28日(後半回)と続けて開催するのです。討論に立つ野党党首は、前半回と後半回で分けることはしないで、どちらにも立ってもらうこととします。そうすれば、前半回で聞きそびれた論点について、後半回で問い質すことが可能となります。また、元々の持ち時間が少ない野党党首にとっては、後半回において前半回の論点をさらに掘り下げることができます。いずれにせよ、党首討論の終了後にいずれの野党党首も抱く「後味の悪さ」は、相当程度解消されることになるかと思います。

時間の計算は「片道方式」で

 もう一つは、時間の計算を「片道方式」で行うことです。
 現在の運用は、「往復方式」です。例えば、立憲民主党の枝野代表が25分の持ち時間を有していたとしても、この25分は、自身の発言だけに使うことができません。安倍総理が15分発言すれば、実質的には残り10分になってしまうのです。先ほど指摘したとおり、「往復方式」では持ち時間の消費のためにダラダラと発言を続ける戦略が功を奏してしまうのです。

 「往復方式」を「片道方式」に変えれば、このような戦略は意味が無くなります(発言のエネルギーを無駄に消費するだけです)。ちなみに「片道方式」は、参議院の予算審議、重要法案の審議で実際に採用されており、政府答弁の時間は質疑者の1.5倍と想定、計算されています。党首討論(45分)にそのまま当てはめれば、全体の時間は112分と見積もられます。
 よく、党首討論の運用見直しとして、時間そのものを2時間程度に拡大すべきという提案がなされることがありますが、「往復方式」を温存したまま時間枠を拡大してもメリハリが付かないので、「45分、ただし『片道方式』」の方が妥当です。

 会期末までに、国会改革の具体的な成果は得られるでしょうか。今は、与党と野党の両方を経験した議員が多く在職しています。あらゆる因習、悪弊と決別し「機能する国会」へと変わる、いいチャンスだと思います。

昨年に引き続き、「知識・情報&オピニオンimidas」(集英社)に寄稿しました。
→自民党「改憲シフト」のリアリズム ~安倍三選…それでも、やっぱり憲法改正論議は進まない
ぜひ、ご高覧ください。

南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社)、『9条改正論でいま考えておくべきこと(別冊法学セミナー no.255)』(共著、日本評論社)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票とプロパガンダCM』(共著、集英社新書)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会)、などがある。(2018年10月現在)(写真:吉崎貴幸)