第489回:大盛り上がりの「れいわ祭り」と、これ以上増やしたくないロスジェネの「手遅れ」。の巻(雨宮処凛)

 「投票に行きましょう。現政権の横暴を止めるために、山本太郎に、れいわ新選組に、あるいは、野党共闘の候補者に一票を投じましょう。
 有権者が無知で無関心でいる限り、悪政は続くでしょう。礼儀正しく、大人しく、他人を攻撃せず空気を読む、そんな人々の沈黙の同意によって不正や陰謀が見逃されるのです。政治には期待しないとか、何を言っても無駄だとか言っている場合ではもはやありません」

 「良識ある議員は、もはや少数派です。太郎とその仲間たちは、最後の頼みの綱なのです。太郎さんは現在の悪政を正し、若者や子どもたちに押し付けられる負債を減らそうと奔走しています。こんなにコスパのいい議員がほかにいますか? こんなお得な男がいますか?」

 「大化の改新ならぬ、『れいわの改新』を実行するのです。それができるのは、山本太郎とその共闘者たちです。私はもう投票を済ませてきました。もちろん山本太郎と書きました。れいわ新選組には、希望的に1500万票獲得してほしい。友人を誘って投票所へ行き、奇跡を起こすことを手伝ってください」

 作家の島田雅彦氏がスピーチを終えると、大きな拍手が沸き起こった。

 7月12日、東京・品川駅港南口。この日開催されたのは、れいわ新選組による「れいわ祭り」。

 午後5時から開催されるこの祭りに参加するため、少し早く品川駅に着いた瞬間から、いつもとは違う光景が広がっていた。駅のホームには、車椅子に乗った人々の姿。しかもその数は続々と増えていく。もしかしてこの人たち、れいわ祭りに参加する人?

 と思いながら会場に着くと、予感は的中していた。客席の最前列には車椅子がずらりと並んでいる。車椅子に乗った重度障害者二人を特定枠の候補者に迎えたれいわ新選組。その決断に、多くの障害者から賞賛の声が上がっているのはネットで見ていた。しかし、こうして多くの当事者が駆けつけてくれている姿を見ると、なんだか熱いものが込み上げてくる。

 さて、この日はれいわ新選組の10人だけでなく、ゲストスピーカーも参加してくれた。前述した島田雅彦さん、茂木健一郎さん、そしてSUGIZOさん!!

 この前日、SUGIZOさんの参加に舞い上がった私は、ALS候補者のふなごさんに興奮しまくったメールを送っていた。SUGIZOさんがどれほど素晴らしい世界的ミュージシャンであるかをはじめとして、自分自身、高校生の頃は「追っかけ」までしていたことを告白。するとれいわ祭り当日、「世界的ギタリスト・SUGI様」と会うからということで、ふなごさんはロックをテーマにしたファッションに身を包んで登場してくれた。しかもGジャンの襟元には、ギターの形のバッヂまでつけている。

ふなごやすひこさんと「れいわ祭り」にて

 こうして世界でたった一人の「全身麻痺ギタリスト」と、LUNA SEA、X JAPANのギタリスト・SUGIZOが奇跡の出会いを果たしたのだった。しかもすぐに意気投合し、今度どこかで「セッションしよう」みたいな話になっている。これは、これは、観たい!!

 そんなSUGIZO様の登壇の際、なんと私めがお話の相手をさせて頂くことに!! 全世界のバンギャを代表し、光栄すぎる大役にまたしても舞い上がりつつ、共に舞台に立たせて頂いたのだった。

 東日本大震災が起きた時の石巻をはじめとして、災害が起きるたび、熊本や岡山の真備町などにおもむき、ボランティアをされてきたSUGIZOさん。「災害弱者」と言われる人々を多く見てきたこともあるのだろう。話はまず、この国の弱い立場の人々に及んだ。

 「太郎さんがずっと言っていることで重要なのは、ただみなさんが生まれてきた、生きている、ただそれだけで祝福されるべきだということです。生きるために、お金を稼がないといけない、エリートでなければいけない、リッチな人でないと幸せになれない、貧乏な人は病院に行けない、貧乏な人はおにぎりを食べることも必死だ。僕が常々思っていることは、すべての命が祝福されて、生きることには心配する必要などないということです。その理念を、太郎さんはずっと掲げている」

 SUGIZOさんの言葉に、大きな拍手が港南口を包んだ。

 そうしてSUGIZOさんは、太郎氏の掲げる政策の話から、消費税や年金、奨学金問題にも触れてくれた。まさか、まさかロックスターであらせられるSUGIZO様の口から「年金」とかの言葉が出るなんて、時空が歪む!!

 と思わず口にすると、「こう見えても一般庶民なので。どちらかと言えば成り上がりというか、エリートではありません」とのお答え。

 そうだ。今は世界的なロックスターだけれど、LUNA SEAもX JAPANも、メンバーたちはアルバイトをしながらバンドを続け、大成功を掴んだという歴史がある。高校生の頃の私は、生まれながらに特権的な立場にいたわけではない人々が、バンドを組んで次々と夢を叶えていく姿を目の当たりにし、いつも胸を震わせていた。彼らの姿は10代の私に「夢は叶うのだ」「自分だって頑張れば何者かになれるかもしれないのだ」という思いを芽生えさせてくれた。

SUGIZOさんと「れいわ祭り」にて。

 この日、SUGIZOさんは太郎さんのことを「これほどブレない人は見たことがない」と表現した。だけど、SUGIZOさんこそ徹底した「ブレない人」だ。世界的ミュージシャンでありながら、3・11以前から脱原発の活動をし、大スターであらせられるのに災害が起こればボランティアに行って泥だらけになって泥かきをし、そして、れいわ新選組の応援スピーチに駆けつけてくれる。断るという選択だってあるのに、そうする著名人だってたくさんいて、それはそれでこちらは納得するのに、そしてスピーチに来たら来たでネットなんかで余計なことを言われるに決まってるのに、ふたつ返事で来てくれたSUGIZOさん。

 トークの最後、感極まって「高校生の頃から追っかけしてたんですけど、見る目あった、高校生の私!」と思わず口にしてしまった。が、本当に見る目あったぞ、高校生の私!! そして今、心から、高校生の頃の私に伝えたい!! あんた、44歳になったら50歳のSUGI様と山本太郎の選挙で年金の話してるぞ!! と。まぁ言っても信じないだろうな…。今の自分だって、こう言葉にすると、ネタとしか思えない。

 ということで、この日の動画は全編こちらで見られるのでぜひ。全候補者のスピーチも素晴らしいのでじっくりと耳を傾けてほしい。

 この日、品川駅の港南口には、「何かが始まる」という予感が満ちていた。ステージから見たみんなの目はキラキラと輝いていて、最前列の車椅子の人たちも、その後ろにずらーっと並んだ人たちも、階段からステージを見ている人たちも、みんながワクワクしているのが手に取るようにわかった。そしてこの日、多くの人から話しかけられているふなごさんの姿も感動的だった。

 「私も難病なんです」と、自身の病気について説明している人もいた。ALSに限らず、多くの難病の人にとって、全身麻痺で呼吸器をつけているふなごさんが立候補するということは、どれほどの勇気を与えているだろう。改めて、思った。

 ALS、脳性麻痺、元東電、女性装と虐待サバイバー、元コンビニ店長、沖縄在住で創価学会、元派遣労働者とシングルマザー、環境問題、経済問題などなど、当事者揃いのれいわ新選組を「アベンジャーズ」にたとえる人もいる。「人類を守るため、最強ヒーローたちが集結した究極のチーム」だ。

 そんなれいわ新選組の「大将」である山本太郎の成果の数々は、4月に出版した『僕にもできた! 国会議員』にまとめたのでぜひそちらも読んでほしい。ただひとつ、今言いたいのは、山本太郎氏は2015年から毎年、年末には都内や横浜の炊き出しを訪れ、手伝いをしているということだ(15年末 / 16年末 / 17年末 / 18年末)。

 夜じゅう歩き回って野宿の人にアルファ米やカイロを配ったり、自分と同世代のホームレス状態の人が無事にシェルターに入るのを見届け、半泣きしたり。国会議員のみならず、この国に住む人の多くがご馳走に舌鼓を打つ大晦日の夜、山本太郎氏は山谷の野宿のおじさんたちと、野外で立ったまま年越しそばを食べている。この4年間、ずっとだ。そして年を越す家もお金もない人たちの「困りごと」に、寒い中、ずっと立ったまま耳を傾けている。

 そんな痛みを知る人に、国会にい続けてほしいと思うのは私だけではないはずだ。

 山本太郎氏を称して、「拙速」「焦りすぎ」という声も聞く。しかし、私は反貧困運動を31歳から13年やってきて、当事者の状況がどれほど悪化しているかを見ている。もちろん、地道に積み上げてきたものたちはあるけれど、それでもこの13年間で多くの人が自殺し、過労やハラスメントで心身を破壊されてきた。また、生活保護を受けながら、この先の展望が見えない人も多い。

 この10年で、都内のネットカフェ難民は2倍に増えたという調査結果もある。非正規雇用率も上がり続けている。有効求人倍率の数字が良くなったと言っても、私たちロスジェネ世代の正規化はほとんど進んではいない。非正規の職歴ばかりが増えたことで「必死で働いてきたのに、社会的信用を落としただけの10年間」と口にする人もいる。「どうせ将来ホームレスですから」と10年前に口にしていた人がホームレスになっているという現実もある。「自殺か餓死かホームレスか刑務所か」。最悪の四択と10年前に言われた言葉が、今、さらに深刻さをもって突き刺さる。

 それでも声を上げれば変わると信じていたけれど、声を上げ続けて10年以上が過ぎ、第三次ベビーブームの担い手として期待されたロスジェネ女性は、出産が難しい年齢にさしかかっている。私もその一人だ。生まれた年が数年違えばあり得たかもしれない人生に思いを馳せ、取り返しのつかなさに歯噛みしても奪われたものは決して取り戻せない。

 もうこれ以上奪われないためにも、私は投票に行く。これを読んでいる人にも行ってほしいと心から思う。

 特に今回の選挙はれいわ新選組だけでなく、本当に魅力的な野党候補が多く出馬している。これまでにないほど多彩な当事者が、自分の言葉で語っている。だからこそ、刺さる。「ロスジェネ」という言葉を掲げている候補者も多くいる。

 21日の投開票日、この国は、どんなふうに変わっているだろう?

 そして山本太郎は比例3位で当選できるのか?

 ドキドキしながら、その瞬間を待っている。

れいわ新選組、7人バージョン!!

雨宮処凛
あまみや・かりん:1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)、『自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために』(七つ森書館)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。