2005年に「マガジン9条」としてスタートしたマガジン9。その19年のアーカイブから、編集部スタッフが「もう一度読んでもらいたい」と思う厳選コンテンツと、そこから選んだ「伝えたい言葉」を、折に触れてご紹介していきます。社会の状況や空気は変わっても変わらないこと、気づかないうちに変わってしまっていること……「このときはそうだったっけ」と思い返したり、「今も全然変わらないな」と驚いたり、立ち止まって振り返ってみることの意味は小さくないと思います。「いいな」「共感できるな」と思う言葉があったら、ぜひ全文を読んでみてください。
先日の東京新聞に、米軍横田基地で昨年1月に発生したPFAS(有機フッ素化合物)漏出事故について、「日米両政府が非公表とする方針で合意していた」という記事が掲載されていました。日本政府が、事故についての情報を「外部に出さないように」という米軍の要求を受け入れたのだといいます。
PFASについては、こちらの記事にもあるように、横田基地に近い地域での地下水汚染がすでに明らかになっており、健康被害への懸念も広がっています。その情報を、関係自治体にさえ公表しないというおかしさ。自国民の安全や生活を守ろうという姿勢が、そこからはまったく見えてきません。
また先月には、昨年末に米兵による少女性暴力事件が起こっていたこと、日本政府がそれを把握後も沖縄県に伝えていなかったことが明らかになりました。県への「隠蔽」が大きな問題であるのはもちろんですが、日米政府間の通報手続きもまったく機能していなかったとの報道もあります。そもそも、沖縄県内の市民団体がまとめた資料によれば、沖縄での米兵による女性への性犯罪は、沖縄戦で米軍が上陸した1945年から2021年まで、現在把握されているものだけで1000件にものぼるのだそう。
思想家の内田樹さんが鈴木耕さんとの対談(2020年)で「日本は今もアメリカの属国だ」「対等な関係なんていうのは噓だ」と指摘されていたことを思い浮かべずにはいられません。
今の日本の統治機構はその全体が「日本とアメリカは対等である」という嘘の上に構築されている。(中略)
自国益を最優先にして、他国と交渉する。譲るところは譲り、取るべきものは取る。それが主権国間の外交なんです。でも、日米関係ではそれができない。それは日本がアメリカの属国だからです。──マガ9対談(内田樹さん×鈴木耕さん)より(2020年10月21日)
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